藤本大学~徒然なるままに(弁護士ぎーちのブログ)

ぎーち(弁護士藤本一郎:個人としては大阪弁護士会所属)のブログです。弁護士法人創知法律事務所(法人は、第二東京弁護士会所属)の代表社員です。東京・大阪・札幌にオフィスを持っています。また教育にも力を入れています。京都大学客員教授・同志社大学客員教授・神戸大学嘱託講師をやっています。英語・中国語・日本語が使えます。実は上場会社の役員とかもやっていますし、ビジネスロイヤーだと認識していますが、同時に、人権派でもあると思っています。要するに、熱い男のつもりです。

ガイベン


 今日は、ガイベンについて考える機会が多い日でした。


 ガイベンって何でしょうか?
 外国法事務弁護士の略だというのがもっとも狭義で一般的な理解。
 更に少し広げて、外国弁護士資格保有者を含むという理解も不可能ではありません。


 前者と後者はどう違うのでしょうか。
 後者は、日本以外の裁判所や弁護士会から、日本で言う弁護士と同等の資格を保有している人のことを言います。前者は、そのうち、特に日本弁護士連合会に、外国法事務弁護士として登録している人のことを言います。事務所内の私の席の隣に座っている孫律師は、紛れもない中華人民共和国執業律師ですので、外国弁護士資格保有者ですが、しかし、日弁連に登録をしていないので、外国法事務弁護士ではありません。


 その相違はどのような効果になって現れるのでしょうか。
 まず、日本法上は、弁護士法72条、すなわち、弁護士でない者は業として法律事務をやってはいけないという規制がありますので、例え他国では資格保有者であっても、我が国で法律事務が行えないのが原則です。これは、外国法事務弁護士であれ、外国弁護士資格保有者であれ同じです。しかし、外国法事務弁護士であれば、特則が外弁法の中にあって、渉外に関する特定の業務に関する法律事務に限り、弁護士法72条の例外としてこれを業とすることができるのです。


 これをもう少し具体的にいえば、(i)自分の名前でお客さんを取ってくること、(ii)自分の名前で法律業務を行うことが、外国弁護士資格保有者にはともにできず、外国法事務弁護士であればその特定業務に限ってできる、という相違になります。パートナーであれ、オフカウンセルであれ、New York州弁護士であるだけで、日弁連登録(外国法事務弁護士としての登録)がなければ、(i)日本ではお客さんを取ってこれないし、(ii)自分がNew York州弁護士だということで法律意見書を書くこともできない、ということになります。


 更に、外国法事務弁護士は、自らは法律事務をすることができない日本法業務について、日本弁護士を雇用することにより、又は、日本弁護士と外国法共同事業を行うことでパートナーシップを組むことによって、間接的に受任することが可能となります。外国弁護士資格保有者であれば、自ら顧客獲得することも、その名で法律事務を行うこともできない訳ですから、このような雇用や共同事業も当然にできないということになります。


 よって、例えNew York州弁護士であれ、中国執業律師であれ、外国法事務弁護士ではない者が依頼者の前に「弁護士」として現れるのは、弁護士法72条違反となる訳です。


 勿論、そのような業法規制は、日本弁護士に過度の特権を与えているという批判は可能です。しかし、もともと弁護士法72条の規制趣旨は、三百代言を防ぐことにあり、国民のため、外国において「弁護士」(Attorney-at-law, 律師等)を名乗ることができる者について、一定のクオリティがある者(=外国法事務弁護士)に限って、その例外を認めるという法制は、そう誤っている訳ではないと思います。


 他方、外国法事務弁護士ではない外国弁護士資格保有者についても、意欲を持って働いてもらうことは十分可能だと思います。我が事務所で雇用している中国執業律師についても、私が責任を持って指導し、監督しながらやっています。日本法の規制があるとはいえ、外国では正規のAttorneyであるという点を尊重し、内部的な取り扱いは出来る限り日本弁護士と同じようにする一方で(例えば座席のスペースは、私とその方は全く同じです)、対外的に日本法上の問題を生じさせないよう、法律事務や顧客との接客においては、最大限注意を払っています(ホームページに現状、紹介していないのもこのような配慮です。)。幸い、私のもとにそれなりの中国法案件がありますので、まあ、多少は楽しく仕事をして貰えているのではないかと思っています。