監査役の職務の執行に必要な費用とは?


 ある監査役が、自らの解任決議を阻止するために仮処分命令の申立を行い、実質的な勝訴を勝ち取った(当該解任決議を求める議題の取り下げ)という場合に、その弁護士費用等を会社に求償できるでしょうか?また、その場合、全額を求償できるでしょうか?


 会社法388条は次のように定めます。

(費用等の請求)
第三百八十八条  監査役がその職務の執行について監査役設置会社監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社を含む。)に対して次に掲げる請求をしたときは、当該監査役設置会社は、当該請求に係る費用又は債務が当該監査役の職務の執行に必要でないことを証明した場合を除き、これを拒むことができない。
一  費用の前払の請求
二  支出した費用及び支出の日以後におけるその利息の償還の請求
三  負担した債務の債権者に対する弁済(当該債務が弁済期にない場合にあっては、相当の担保の提供)の請求


 ちなみに、当該問題となった事案の・・・

仮処分申立内容については、
http://www.triis.co.jp/pdf/2009/2009_0317.pdf

総会議題の取下げについては、
http://www.triis.co.jp/pdf/2009/2009_0324.pdf

訴訟1(おまけ)については、
http://www.triis.co.jp/pdf/2009/2009_0616.pdf

そして、本論である弁護士費用の請求訴訟については、
http://www.triis.co.jp/pdf/2009/2009_0629.pdf

です。


 解任自体は、株主総会の特別決議でなし得ます(339条1項)。従って、監査役解任の件を総会で論じること自体は問題はありません。但し特別決議となります(309条2項7号)。また、解任により個人的損害が発生すれば、それを個人的に損害賠償請求することも可能です(339条2項)。そうすると、解任を阻止するための仮処分の申立は、専ら個人的な利益であって、「職務の執行」には該当しないのではないかという疑義もあります。他方、一連の経過からすれば、会社が、不適法に、意見陳述権(345条4項、1項)を制約したことが原因で、不適法だとして仮処分の申立をしたとすれば、会社の法令・定款違反の行為を差止めることができる訳で(385条1項)、その弁護士費用だとすれば、会社に求償できると言えそうです。


 因みに、この「おまけ」訴訟は、もしかして、個人的利益だけで仮処分をやった訳じゃないよ、というのを証明しようとせんがために、提起した訴訟かもしれませんね。


 仮に求償できるとして、1500万円が妥当かどうかというのも、知りたいですね。