藤本大学~徒然なるままに(弁護士ぎーちのブログ)

ぎーち(弁護士藤本一郎:個人としては大阪弁護士会所属)のブログです。弁護士法人創知法律事務所(法人は、第二東京弁護士会所属)の代表社員です。東京・大阪・札幌にオフィスを持っています。また教育にも力を入れています。京都大学客員教授・同志社大学客員教授・神戸大学嘱託講師をやっています。英語・中国語・日本語が使えます。実は上場会社の役員とかもやっていますし、ビジネスロイヤーだと認識していますが、同時に、人権派でもあると思っています。要するに、熱い男のつもりです。

California Probate Code


 マイケル・ジャクソンさんの遺言の内容がニュースになっているようで、昨日も事務所に、カリフォルニア州の遺言に関する法律がどうなっているのか、問い合わせの取材が某テレビ局からありました。


 正直マトモにお答えする時間がなかったのですが(答えていればテレビ出演だったのかな?)、簡単にご説明します。


 カリフォルニア州の遺言は、Attested will(認証のある遺言)と、そうではないholographic will(自筆遺言)があります。今般のマイケル・ジャクソン氏の遺言がどうだったかは分かりませんが、日本との比較でいえば、公正証書遺言ではなくても、証人がちゃんといる遺言であればAttested willであると認めてもらえますし、要式を満たしていないがために無効となる確率は低いように思われます。


 日本の遺言であれば、公正証書遺言の場合は、「検認」と呼ばれる家庭裁判所における確認手続きが必要ありません。他方、その他の遺言であれば検認が必要です。カリフォルニア州の遺言の場合は、上記いずれの方式の遺言であっても、原則としてProbateという一種の検認手続が必要です。おそらくいまその手続きがなされていることと思います。


 某テレビ局からのご質問によると、父親や元妻は遺言において遺産を取得するような条項がないようですが。カリフォルニア州の相続で、子供がいる場合に父が法定相続する権利はなく、まして遺言が有って子供が相続するような場合に、父親や元妻に遺留分的な権利はありません。但し、その子供のGuardian(監護者)として実際の子供の遺産を管理することができる可能性があります。


 また、元妻は、離婚時に、Community Property(夫婦共有財産)の半分を既に取得していますので、今般の遺産で何も取得しなくても、既に十分な財産を手にしている筈です。


 日本の遺言を処理する際に、遺言執行者の指定がなされていれば、早期に、全相続人の同意がなくても、遺言執行者の権限によって、遺産を換価し、相続人に遺言に従って分配することが可能です。カリフォルニア州法においても、遺言によって、Executor(遺言執行者)を指定することができます。また、米国の遺言の場合、遺言によって信託されることがあり、その場合は、Trustee(受託者)がBeneficiaryのために資産を管理・運用します。なお、Executorが指定されていなくても、Administrator(遺産管理人)が遺産を換価し、相続人に分配することもできます。この選任手続は、Probate Courtにおいて行われます。ここでProbateという言葉が使われることからも分かるとおり、少なくともカリフォルニア州におけるProbateという単語の意味は、単なる「検認」という意味を越えて、遺産処理手続全般を意味すると言っても過言ではありません。実際、これら相続に関するルール全般を定めるカリフォルニア州の法律の名前が、"CALIFORNIA PROBATE CODE"と題されています。


 ちなみに、カリフォルニア州の司法試験において、Will(遺言)は必須科目であり、かつ、カリフォルニア州法が問われます(他の科目では、コモンローが問われるだけで、州法が問われないことがあります)。これは、Willという科目は、既に少し触れたCommunity Property(夫婦共有財産)という、米国でもカリフォルニア州ほか10州程度しか採用していない財産制度とある程度結びついているので、州法独自の考え方を問う必要があると、Bar Examinerが判断しているのではないかと推察します。