藤本大学~徒然なるままに(弁護士ぎーちのブログ)

ぎーち(弁護士藤本一郎:個人としては大阪弁護士会所属)のブログです。弁護士法人創知法律事務所(法人は、第二東京弁護士会所属)の代表社員です。東京・大阪・札幌にオフィスを持っています。また教育にも力を入れています。京都大学客員教授・同志社大学客員教授・神戸大学嘱託講師をやっています。英語・中国語・日本語が使えます。実は上場会社の役員とかもやっていますし、ビジネスロイヤーだと認識していますが、同時に、人権派でもあると思っています。要するに、熱い男のつもりです。

独禁法って面白い?


 朝日新聞電子版2009年10月31日付
http://www.asahi.com/business/update/1030/OSK200910300106.html

 パナソニック三洋電機経営統合独占禁止法に触れないかどうかを事前審査していた中国の商務省が30日、統合を認めることを公表した。パナソニックは11月4日に取締役会を開き、5日から三洋株の公開買い付け(TOB)を始めることを決定する。TOB成立は確実で、年内に三洋の子会社化が実現する。

 両社は昨年11月に経営統合を発表したが、充電池分野で合計シェアが高まりすぎることから、各国の独禁法に基づく事前審査が長期化していた。


 最後が、中国だったんですね。。。


 パナも三洋も日本企業ですが、中国でもビジネスをやっています。
 この場合、企業結合(「経営者集中」と中国では言います)が独禁法違反ではないか、中国の独禁法(「反龍断法」と言います)に照らし審査をする必要が生じます。


 中国の独禁法20条 は、「企業結合」を「(1) 企業合併、(2) 株式取得等による支配権の取得、(3) 契約などによる支配権の取得、または決定的影響を与える場合」と、定義しています。これに該当する場合、国務院の独禁執行機関(つまり、商務部ですね)に事前審査請求をしなければ、企業結合を行うことができません(中国独禁法21条)。


 いかなる場合に、「支配権を取得」したとか「決定的影響を与える」かは、はっきりしません。
 1つは、両社の事業規模(中国及び世界における売上・資産の規模等)が問題となるでしょうし、1つは、結合態様(100%取得か、30%か、5%か)が問題となるでしょう。このうち、前者については、一定の基準があります。


 即ち、国務院「経営者集中申告標準に関する規定」第3条によれば、
(1) 全ての事業者の前会計年度における全世界での売上高合計が100億元を超え、かつ少なくとも二事業者の前会計年度における中国国内での売上高が4億元を超える場合、

又は

(2) 全ての事業者の前会計年度における中国国内での売上高合計が20億元を超え、かつ少なくとも二事業者の前会計年度における中国国内での売上高が4億元を超える場合、

は、事前審査請求が必要とされます。


 なお、この規定は、2006年に改正された商務部の「外国投資者が中国国内企業をM&Aすることに関する規定」(关于外国投资者并境内企业的规定)の51条以下と矛盾していましたが、本年6月22日にこの部分が削除されて、両規定間の矛盾はなくなりました。



 さて、上記(1), (2)の審査請求基準は、中国国内売上が4億元≒60億円を両社で超える場合は該当可能性が生じる訳で、特に大手とは言えない場合であっても、中国の「経営者集中」審査を受ける方が安全と言える場合もあるかもしれません。


 独禁法は、契約で準拠法を定めても回避できない法律です。
 世界に進出している企業は、世界の独禁法を知る必要があります。なんせ、当事者の合意で独禁法は排除できませんので・・・。非常に恐ろしい法律ですよねえ・・・・。まあ、弁護士的にはオモロイんですが。