藤本大学~徒然なるままに(弁護士ぎーちのブログ)

ぎーち(弁護士藤本一郎:個人としては大阪弁護士会所属)のブログです。弁護士法人創知法律事務所(法人は、第二東京弁護士会所属)の代表社員です。東京・大阪・札幌にオフィスを持っています。また教育にも力を入れています。京都大学客員教授・同志社大学客員教授・神戸大学嘱託講師をやっています。英語・中国語・日本語が使えます。実は上場会社の役員とかもやっていますし、ビジネスロイヤーだと認識していますが、同時に、人権派でもあると思っています。要するに、熱い男のつもりです。

侵権責任法


 いよいよ、中国の「不法行為法」(中文:侵権責任法)が、成立しました!!!
 http://www.chinacourt.org/flwk/show.php?file_id=140333


 民法通則117条以下にごく僅かの規定しかなかった不法行為法が、全92条というボリュームで成立です。施行は2010年の7月となっています。


 見どころですが、6条1項は、過失責任主義を明確にしています。但し、6条2項は、別段の定めによる過失推定規定を、7条は、別段の定めによる無過失責任を容認しています。


 議論のあった「公平責任原則」ですが、中国の方はドイツ法の概念を持ち出すのですが、不明確なまま、第3次草案のまま規定されました(24条)。即ち、行為者にも被害者にも損害発生に対し何ら過失がない場合、発生した実際の状況に応じて双方が損害を分担するというものです。しかし、法的な基準としては曖昧で、「弱者救済」の名の下に、「お金のある」外国人や外資企業に過度の負担を強いることになるのではないか、心配があります。


 47条には、「懲罰的損害賠償」との文言が規定されています。これは、商品に欠陥があることを知っていてなお生産・販売し、他人を死亡させ、又は健康に重大な損害を与えた場合に、被害者に認められる権利として規定されています。


 なお、今般成立した法律については、既に多数の特別法が存在しており、それとの関係が気になるところです。施行までには整備してくれたら良いのですが。例えば一般不法行為に関する「最高人民法院关于审理人身损害赔偿案件适用法律若干问题的解释」の28・29条(例えば、労働能力喪失・死亡時の逸失利益は、当該裁判所所在の市民の年収の20倍を基本とする)と、「国务院关于医疗事故处理条例」の50条(例えば、後遺症が残った場合は30倍が最長)等とは相違があるのですが、どうなるんでしょうかね。計算方法は具体的には何も法律に書かれていないですが。