藤本大学~徒然なるままに(弁護士ぎーちのブログ)

ぎーち(弁護士藤本一郎:個人としては大阪弁護士会所属)のブログです。弁護士法人創知法律事務所(法人は、第二東京弁護士会所属)の代表社員です。東京・大阪・札幌にオフィスを持っています。また教育にも力を入れています。京都大学客員教授・同志社大学客員教授・神戸大学嘱託講師をやっています。英語・中国語・日本語が使えます。実は上場会社の役員とかもやっていますし、ビジネスロイヤーだと認識していますが、同時に、人権派でもあると思っています。要するに、熱い男のつもりです。

法曹養成制度シンポジウム


 今日は、大阪弁護士会が主催し、近畿弁護士連合会、日弁連が共催する「法曹養成制度シンポジウム〜法曹養成の課題−その現状と民事法教育のあり方‐」が大阪弁護士会で開催されました。


 どうも、昨晩の証人尋問で力尽きたのか、今朝起きた時は体調が最悪で、シンポジウムの直前打ち合わせには間に合わず遅刻してしまったのですが、シンポが始まると徐々に体調が良くなってきて、時間の制約からあんまり喋れませんでしたが、なかなか楽しいシンポができたのではないかと自負しています。


 第1部は、「法曹養成制度の現状の諸問題」と題し、法科大学院、司法試験、司法修習、採用の4つの法曹養成の段階における、現状の最新情報のご報告を各先生方にお願いしました。因みに私が司会させて頂いています。


 トップバッターは、同志社大学の森田章研究科長でして、主催者側からすれば時間オーバーは辛かったですが、非常に率直な法科大学院の研究科長としての、ざっくばらんとしたお悩みが聞けて、非常に面白かったです。特に、第2部につながる内容ですが、一連の慶應大学事件以後、「受験指導」はしてはいけないという制約の中で、どうやって文書作成教育をするのか悩んでいるという点、その他、法科大学院の置かれている様々な制約について、非常に具体的な悩みが吐露されて、場の雰囲気が和んだ感じがしました。


 その次に司法試験についてご発表頂いた榎本弁護士は、愛知県弁護士会からお越し頂いて、たくさんの資料をもとに司法試験の現状を明らかにして頂きました。確かに、新司法試験は、各科目別々に作成され、受験する学生を無視して、それぞれが高いレベルを求めすぎているきらいがあると思います。利用者である市民・会社に役に立つ法曹を育てる、という見地からすれば、あまりに過度な負担を受験生に与える結果として、結局、努力とは無関係に、初見でも対応できる、賢い人だけが通る試験になっているのではないか?と、考えさせられる発表でした。


 3番目に司法修習の現状についてご発表頂いた泉薫弁護士は、当会の司法修習委員会の副委員長という立場から、様々な点を御指摘頂きました。修習委員会が企画する自主参加勉強会への参加率が、ここ数年極端に下がっている等、いわゆる就職・採用問題がただでさえ短い修習へ悪影響が出ているとの私的は考えさせられました。


 最後に、採用の現状については、神戸大学法科大学院の中川丈久教授と、弁護士会側から、就職問題委員会の和田秀治委員長代行から発表を頂きました。神戸大学の中川教授の発表からは、弁護士事務所側が採用問題に対し、何らの基準も示さずに、戦略もなく対処しているのではないかという厳しい指摘がありました。これは、私共が行った法律事務所アンケートの結果からも一部裏付けられる点で、法律事務所がもっと、戦略的に採用問題に取り組む必要性を示唆されたような気がしました。
 弁護士会側から発表頂いた和田先生からは、毎年司法試験合格者が増えているのに、一向に裁判所・検察庁の採用が増えず、結果として弁護士会が合格者を受け入れざるを得ない状況、その結果、毎年毎年、登録すらできない人が増加している状況が、具体的な資料に基づき報告されました。


 私はこの後、本日配布した大量の資料の中で3点だけ説明をさせて頂きました。
 まず、当委員会(法曹養成・法科大学院協力センター)の行っている活動内容の概要をご紹介しました。法科大学院に対し、当委員会が行っている事前研修、エクスターン支援活動、ロールーム等を知って頂き、法科大学院弁護士会をもっと活用して頂きたいという思いからです。
 次に、その事前研修で行われているアンケート結果の分析結果を発表させて頂きました。アンケートの回答者は司法試験に合格したばかりの方ですが、法科大学院教育が司法試験に役に立ったか、という回答では、大学によって激しい格差があることが明らかになり、法科大学院の二極化がより明らかになったと思われます。
 最後に、弁護士事務所に送付して行った採用に関するアンケートでは、法律事務所が何を重視して採用しているかが明らかになり、その結果だけでも参考になったと思います。例えば、20名以上の弁護士を擁する事務所では、64.7%の事務所が法科大学院の成績を重視すると回答したのに、それ未満の規模の事務所では13.2%しか重視するとは回答していないことが明らかになっただけでも、このアンケートには大きな意味があったと思います。


 本当は質疑応答を充実させたかったのですが、発表時間が予定より長すぎて結果的に質疑の時間を余り取れませんでした。司会としては非常に申し訳ない気持ちで一杯となりましたが、シンポ終了後の2次会では、皆さんざっくばらんにお話をして頂き、私も多少なりに言いたいことが言えて良かったです。


 第2部の状況やら、第1部の詳細は、法学セミナーで掲載される予定です。何月号かな?楽しみにして下さい。また、NHKの9時のニュースで紹介されたそうで、私も映ったそうです。私は見られませんでしたが。