藤本大学~徒然なるままに(弁護士ぎーちのブログ)

ぎーち(弁護士藤本一郎:個人としては大阪弁護士会所属)のブログです。弁護士法人創知法律事務所(法人は、第二東京弁護士会所属)の代表社員です。東京・大阪・札幌にオフィスを持っています。また教育にも力を入れています。京都大学客員教授・同志社大学客員教授・神戸大学嘱託講師をやっています。英語・中国語・日本語が使えます。実は上場会社の役員とかもやっていますし、ビジネスロイヤーだと認識していますが、同時に、人権派でもあると思っています。要するに、熱い男のつもりです。

3000人時代の法曹養成


 修習生の内定率がまた低下していると聞く。
 6月時点で、6割が内定を貰っていないという話もある。昨年、かなり厳しいと言われながら、4割だと聞いていたので、かなり深刻そうである。


 ただ、法科大学院生や、修習生本人にも大いに問題があると思う。まあ、正しく指導しない法科大学院により大きな責任があるのだが。


 とにかく、法曹は増えるのである。遅かれ早かれ、3000人時代は到来する(1500人になるんじゃないの?という点を論じると長くなるので、今日は触れない)。かつて、合格さえすれば貴重だった時代は既に過ぎ去っている。他の合格者と同じような存在で、どうして勝ち残れると言うのだろうか。


 私は●●大学法科大学院の成績が上位10%だが、××さんは20%だから、私が上だ、と言うかもしれない。私は●●大学で何位だ・・・。そのようなことが意味を持つのは、ごく少数の大事務所(大量採用するが故に、成績上位が使えるであろうという経験則から上から採用すれば足る)のみに当てはまる公式であろう。成績は、考慮はされるが、あくまで一要素だろう。××さんにも、□□さんにもない、自分だけの取り柄とは何か、考えているだろうか。


 履歴書を何百通も読む側の立場になれば、このことは分かるだろう。「企業法務がどうのこうの」という金太郎飴を読まされ続けるだけでは、その人と会おうという気も起こらない。これが司法試験の答案であれば、金太郎飴でも論点で配点を振り分け、上位の点数と下位の点数を付けて、とにかく全部に点数をつけざるを得ないので、その差をつけるべく、真剣に読んで貰えるだろうが、多くの事務所にとって、採用はその年に1人前後である。金太郎飴だと思われた時点で、読まれなくなるのがオチだ(それでも数百通読んでいる私は、アホかもしれない。まあウチは、1人採用という訳ではないし、どうしても良い人材を採用したいから・・・。)。


 もう1つ、中小の法律事務所にとって、採用とは、事業のパートナーを探す行為であり、大げさに言えば合弁相手を探す行為なのである。しかし、当の採用される側は、「就職」という言葉を用い、雇用契約を締結する気でいる。考えている契約類型が合致しないから、採用という結論に至らないのではないだろうか。例えば、よくある質問で、「貴事務所の教育内容は?」というものがあるが、聞くのは全く構わないが、事業家になる気がある前提での質問なのか否か、疑ってしまう場合も少なくない。


 志有る法律家であり、かつ、事業家である者として、将来の世界と我が国の法曹社会をどのように展望し、その中で自らをどういう立ち位置に置き、その入所する法律事務所は、その者の入所と成長を契機として、その世界でどのような地位を占めることになるのか、多少稚拙であっても、自分なりの事業計画と夢・目標を示すことは、事業家であれば、ある意味当然の筈である。その事業計画と、採用する側の事務所の事業計画が合致すれば、そこに合弁が成立するだろう。しかし、採用される側が何ら事業計画を有しない場合、特殊な才能がある場合を除いては、採用する気が起こらないのではなかろうか。


 特殊なアイデアが浮かばない。であれば、アナザーワールドにヒントを求めては如何だろうか。例えば、日本以上に急速に法曹人口が増大している中国はどうだろう。アメリカはどうだろう。統計にヒントを見出すのも手だろう。日本の各種司法統計はネットで簡単に手に入る。近時の法科大学院の学生は、調査能力に長けていると聞くが、年間の婚姻・離婚件数を聞いても、訴訟件数を聞いても、破産の件数を聞いても、日本の弁護士数、中国の弁護士数、アメリカの弁護士数を聞いても、正解を聞くことは少ない。何を調査しているのだろう。


 所詮、まだ法曹として働いていない者のアイデアや言い分である。本気で採用する側の事務所が、事業計画を採用してくれることはないだろう。しかし、こいつの事業計画を育てたいと思わせるようなものを示せば、きっとその合弁はうまくいくような気がする。