藤本大学~徒然なるままに(弁護士ぎーちのブログ)

ぎーち(弁護士藤本一郎:個人としては大阪弁護士会所属)のブログです。弁護士法人創知法律事務所(法人は、第二東京弁護士会所属)の代表社員です。東京・大阪・札幌にオフィスを持っています。また教育にも力を入れています。京都大学客員教授・同志社大学客員教授・神戸大学嘱託講師をやっています。英語・中国語・日本語が使えます。実は上場会社の役員とかもやっていますし、ビジネスロイヤーだと認識していますが、同時に、人権派でもあると思っています。要するに、熱い男のつもりです。

よりマシを選択しなきゃ

朝日新聞電子版10月28日付
http://www.asahi.com/national/update/1028/OSK201110280076.html

 兵庫県内の女性(43)が米国に住むニカラグア国籍の元夫(39)との離婚訴訟中の4月、長女(9)を日本に連れ帰ったとする親権妨害の疑いで渡航先のハワイで身柄を拘束された。国際結婚での離婚訴訟中に親権をめぐって一方の親が拘束されるのは異例。長女は兵庫県の親族のもとで生活しており、両親と約半年間会えない状態が続いているという。

 女性の代理人弁護士らによると、女性は2002年に元夫と国際結婚し、米・ウィスコンシン州で生活していた。08年2月に元夫が米国で離婚訴訟を起こした後、女性は長女を連れて日本に帰った。その後、米国の裁判所は離婚を認め、男性を長女の親権者とした。

 これに対し、女性は親権者の変更を神戸家裁伊丹支部に申請。伊丹支部は今年3月、米国の裁判所とは逆に女性を親権者と認める判断を示す一方、長女と元夫を定期的に面会させるよう命じた。双方が決定を不服として即時抗告し、大阪高裁で審理が続いている。

 女性は4月、米国の永住権の更新手続きのためにハワイに行ったが、米国の裁判所が親権者と認めた元夫から長女を引き離したとする親権妨害容疑で拘束された。女性は司法当局に「長女を返せば執行猶予判決とする」などという取引を持ちかけられたが拒否し、9月にウィスコンシン州の裁判所で始まった裁判で無罪を訴えているという。


 これは、重要な示唆を含んでいます。
 まず、米国でこのような判決がでるのは当然。離婚訴訟開始時に米国にいて、日本に連れ帰ったら、米国の感覚では、子供をabduction(誘拐)したと同じ、と評価されます。

 次に、米国でこのような判決が出ている以上、ハワイに入国するなんて捕まりに行くようなもの。

 米国永住権と、子供との日本での生活、どちらが大事か、考えたら分かることだったと思いますし、日本の弁護士は、このような渡航に気付いたならば、全力で阻止すべきでした。


 いま、我が国は「国際的な子の奪取の民事面に関する条約」 (Hague Convention on the Civil Aspects of International Child Abduction)を批准すべく準備をしています。仮に日本が批准し効力発生すると、日本に逃げ帰っても、引渡をしなければならなくなる可能性もあります。日本の親権の感覚と、米国の子供の監護の感覚は全く異なるものです。子供は女性親のもの、のような日本の感覚は、必ずしも世界で通用するものではないことについて、十分理解すべきでした。