京都市による瓦礫受入問題について


 先週土曜日(3月31日)、京都駅前で環境省主催で行われた瓦礫受け入れをアピールする説明会なるものに行ってきました。

 その豪華なメンバー。細野環境大臣、何故か野中広務氏、京都府知事、福山参議院議員等等。しかし、アピールのみで、何故「安全」なのかの説明は十分ではありませんでした。


 これは勿論、京都市議会が、3月27日に、がれき受け入れの議決を行い、京都市ががれきの処理を受け入れる可能性がにわかに高まったために行われたアピールです。


 この日、反対派の怒号もすごかったですが、中には、真面目に政治家や環境省の役人と質疑している人もいました。本来はマイクを通じて行って欲しかったですが、私も多少の質疑に参加し、また今までの知見も多少はありますので、これらを踏まえまして、広域で瓦礫を処理する必要があるのか、これは安全にできるかについて、私が考えることを少し書きたいと思います。


1.広域処理は必要か?

 環境省の説明によると、宮城県岩手県の瓦礫の量は、およそ2000万トン。うち、400万トンを広域処理して欲しいとのことです。この400万トンはどのように計算されたかというと、これも環境省の役人の説明によれば、2年間で現地処理ができるようにすると、こうなるんだそうです。

 しかし、結局全体の2割を「外だし」することで、プラス数年延びるということはないでしょう。また、仮にプラス数年延びるとすれば、2割の「外だし」位では、2年間の現地処理の完了なんて、できやしないでしょう。


 環境省によると、2012年3月8日現在で処分されたがれきは、全体の6%だそうです。そうすると、そもそも400万トンという2割の外だしでは、結局2年の処理は無理ではないかとも思います。2割外だししようが、しまいが、結局環境省の思うような処理はできないのです。仮にそうだとすれば、膨大な輸送コスト、手間をかけて処理するのではなく、第1に、燃やさない処理を検討すること(燃やすことにより大気や水により濃縮された放射性物質が飛散する可能性が高まります)、第2に、動かさない処理をすること(動かすことにより、その過程で流出する可能性が高まります)が重要ではないでしょうか。


 要するに、2割400万トンという数字は、余り根拠なく設定されているのではないか、ということが申しあげたいのです。被災地支援は勿論重要ですが、広域処理必要性の根幹が曖昧なまま、全国に受け入れろというのは、筋違いだと言う気がします。


2.瓦礫は安全か?

 次に、瓦礫は安全でしょうか。
 環境省は、各地の瓦礫の放射線量を測定した資料を公表しています。勿論、広域処理をしたい環境省の測定値ですから、これが中央値又は平均値と考えることは危険ですが、まずは環境省の数字を見てみることとします。

http://kouikishori.env.go.jp/howto/houshanou-noudo.pdf

 ここではっきり分かるのは、モノによっては、焼却処理する前の瓦礫の段階で、数千ベクレルを計測するような、非常に汚染された瓦礫が存在するということです。


 このような瓦礫を、広域で焼却すれば、広域が放射能によって汚染されてしまう、少なくともその危険が高まることは明らかです。


3.焼却は安全にできるのか?

 いちはやく瓦礫の広域処理に賛同した静岡県島田市は、試験焼却を行い、安全性を検証した、焼却した際の大気からは、通常値と異なる放射性物質を検出しなかったと公表しているようです。

 試験溶解の結果はこちらです。
http://www.city.shimada.shizuoka.jp/mpsdata/web/7576/kekkaichiran.pdf


 確かに、この7頁目を見ると、排ガスからは放射性セシウムが検出されていない、つまり安全!と言えそうです。


 しかし、10頁目を見ると、今回受け入れをした瓦礫の総量(10,280kg)と、セシウムの平均値(16Bq/kg)の記載があります。これを乗じると、この瓦礫には、合計で16万4480ベクレルの放射性セシウムが含まれていたことになります。


 そのセシウムは当然消える訳ではないので、もし安全!というのであれば、排ガス以外に全て残っていなければなりません。ところが、この試験溶解の結果では、どこに残っているのか、はっきりとは書かれていないのです。灰にある程度残っていることは分かりますが、灰の総量が明確ではないので、適宜推定して計算するしかありません。


 そうすると、色々な方が仰っていますが、20〜40%程度の放射性セシウムが「行方不明」になってしまったと言わざるを得ない面がある(勿論、推定するしかないので、断言はできないのですが)のです。安全か否かと言えば、とても安全!と断定できる試験溶解ではなかったことは明らかです。


 そもそもセシウムは、融点も沸点も水銀の次に低い金属です。
 セシウムにもよるのだろうと思いますが、ウィキペディア先生によれば、融点摂氏28.4度、沸点摂氏641度だそうです。そうしますと、安全に焼却の際にセシウムを回収するには、非常に低い温度で管理して、液体の状態で漏れ出さないようにしなければならないということになります。バグフィルターの問題ばかり注目されますが、そのような難しい管理が、普通ダイオキシンの発生を抑えるために高温で焼却する焼却施設できちんとできるのでしょうか。また、バグフィルターは、なにもセシウムを回収するための製品ではありません。バグフィルターで99.9%セシウムを回収できるというのも、確証されたものではないのです。


 勿論、技術の進歩により安全に焼却できるかもしれません。
 ただ、現時点で、安全に焼却される保証はないのです。


4.結語
 
 結局、放射性セシウムに汚染された瓦礫は、広域処理するだけの前提がないと言わざるを得ないと思っています。京都市が急遽、この受け入れを決めて、大きく動き始めている点に、危機感を持っています。

 確かに、東北三県が汚染された瓦礫をかぶれと言うのか?もっと広域で分担すべきじゃないか、という声があり得るのは事実でしょう。しかし、もしも東北三県でも、安全に焼却する保証がないとすれば、そもそも東北三県であっても、焼却してはいけない、のではないでしょうか?


 現在多くの瓦礫が、中間保管施設に存在し、そこが一杯で復興が進まないという声もあります。ただ、放射性物質というのは、私に言わせるとロシアンルーレットみたいなもので、濃度が低ければ大きな問題は起こさないけれども、それでも、弱い子供や胎児は、影響を受ける可能性があるのです。そう、ロシアンルーレットみたいに、確率論で言えば、誰かは、放射性物質の被害者になるのです。その確率が、線量が低ければ低くなるだけで、0になる保証はないのです。そうであれば、できるだけ、拡散しない、広げないというのが大事ではないでしょうか。


 そもそも、東北三県で2年以内の処理が復興に必要だ、と言いますが、そのために、広域処理しない8割の瓦礫の放射性物質の被害に東北の方が遭われてしまうのも、いたたまれないです。一日も早い復興、は、健康や安全の上に成り立つもの。たとえ復興が遅れても、その遅れのために、多くの人の健康や安全が救われるのであれば、その方がより良いという考え方に、何故立てないのでしょうか?


 私自身、地震の被害を知り、直ちに弁護士として、また95年の阪神大震災の際に書物を執筆したことがある事務所に所属していたということもあって、仲間と共に、震災関連法の書物の執筆を始めました本は、幸いなことに4月に発売され、一時法律業界でトップの売上を記録し、その印税は全額被災地に寄附されました。私自身でできる被災地救済は、これからもしていくつもりです。しかし、その引換に、自分や地域の生命・身体・安全が脅かされるのはごめんです。東北の人の生命・身体・安全がより脅かされるのもごめんです。


 私はビジネスロイヤーです。沢山の会社に、アドバイスを行っています。会社法のアドバイスでよく問題になる点で、経営判断というものがあります。例えば、会社が経済的に損をする取引(例えば、寄附とか、債権放棄)というのも、より高度な会社の利益のために許されることがあり、その行為に関与した取締役の責任は問わない、というものです。いま我が国の高度な判断として、これ以上放射性物質の被害を広げない、我が国の国民の健康と安全を守る、これこそ、短期的な経済復興と天秤にかけてはいけない、大事な守るべき経営判断ではないでしょうか。一度放射能に汚染されたら、大変なことになるというのは、広島で育った私がよく知っています。これは取り返しのつかないことなのです。


 京都がいま、我が国の経営判断の試金石になろうとしています。
 余り時間はなさそうです。私も、できることをして、なんとか京都の瓦礫受け入れ問題、このまま許すことはできないという声を、大きく、大きくしていきたいと思います。