藤本大学~徒然なるままに(弁護士ぎーちのブログ)

ぎーち(弁護士藤本一郎:個人としては大阪弁護士会所属)のブログです。弁護士法人創知法律事務所(法人は、第二東京弁護士会所属)の代表社員です。東京・大阪・札幌にオフィスを持っています。また教育にも力を入れています。京都大学客員教授・同志社大学客員教授・神戸大学嘱託講師をやっています。英語・中国語・日本語が使えます。実は上場会社の役員とかもやっていますし、ビジネスロイヤーだと認識していますが、同時に、人権派でもあると思っています。要するに、熱い男のつもりです。

民進党に前原代表を解任する手はあるか?


 民進党の混迷は、見るに堪えない。国民に対する冒涜である。

 が、そのまま船が沈めばそれで良いという訳ではなかろう。このままだと、野党第一党の支持者だった方で、「希望の党」に希望を見いだせない方は、投票する場所がなくなる。
 
 では、この際、「希望の党」への合流方針を撤回し、民進党が主体的に選挙に出る、分党する党の措置を取るにはどうすれば良いか?前原代表が自らこれを行わない場合は、前原代表を解任する他にないが、これは可能だろうか。本稿では、民進党や前原代表に対する筆者の立場は別として、選挙目前となっている現状においてその可否を法律家として論じたい。


 政党も組織であるから、その代表の解任には手続が必要だ。民進党規約によると、代表の解任は次のような流れと規定されている(12条11項)。

党大会において代議員の2分の1以上の賛同がある場合は、代表解任選挙の実施を発議することができる。発議は代表当該任期中1回に限るものとする。代表解任選挙は、県連を通じて本部に登録された党員及びサポーターで日本国民である者、党籍を有する地方自治体議員、国政選挙の公認候補予定者(内定者を含む。)、並びに所属国会議員による選挙によって行う。代表解任選挙における各有権者投票権の行使方法、その他代表選挙の実施方法等については、代表選挙規則で別に定める。

 この規約を読むと、解任のためには、(i)党大会を招集し、(ii)代議員の2分の1以上の賛同を経て、(iii)代表解任選挙を発議し、(iv)代表解任選挙を実施しなければ、代表は解任されないのである。


 そして、同規約の7条4項では、「党大会は、代表が招集する。」とのみ規定され、代表代行を含む他の党員は、直接党大会を招集することが認められていない。なお、「代表は、両院議員総会が議決によって要請した場合には、45日以内に臨時党大会を招集しなければならない。」(7条7項)と規定されているが、45日を待っていたら、もはや総選挙は終わってしまう。

 つまり、現在の規約を前提とする限り、前原代表以外が党大会を招集することができないという点で、解任は不可能と言わざるを得ない。


 なんと、民主的な政党だと思っていた民進党の代表たる地位は、かくも堅く守られていたのである。これでは、前原代表の「暴挙」があっても、他の議員はついていくしかないようにも思える。


 しかし、次のような規定もある。

両院議員総会は、本規約に定める事項および常任幹事会が特に必要であると決した事項を審議し決定する。特に緊急を要するとして代表又は常任幹事会が提起した事項については、両院議員総会の議決をもって党大会の議決に代えることができる。(8条2項)

党大会は、綱領及び規約の改正、年間活動計画、予算及び決算、その他本規約に定める事項ならびに常任幹事会が特に重要であるとして決した事項を、審議し決定する。(7条2項)

 つまり、両院議員総会を招集し、党大会の決議に代えて、まず規約12条11項を改正し、両院議員総会における緊急の代表解任を認めることとし(明らかに現在「特に緊急を要する」事項であろう。)、次に両院議員総会で代表の解任を決議すれば、前原代表の民主党代表の解任も、論理的に可能、ということになる。もっとも、その提起は、代表が自らしないとなれば、規約上「常任幹事会」が行う必要がある。このメンバーの大半も前原代表が指名した者であり、通常であれば「常任幹事会」による提起はあり得ないが、両院議員総会は「常任幹事」の選出方法を決められるらしいので(9条5項)、より正確には、両院議員総会の招集→(現在の常任幹事がこれに賛成しない場合)常任幹事の入れ替え→常任幹事会の決議による党規約改正の緊急の提起→両院議員総会における党大会の決議に代える党規約改正の決議→改正後の規約に基づく解任決議、といった流れになろうか。


 ちなみに、両院議員総会の招集権者は、両院議員総会長である(8条5項)。8条全体の規定ぶりからして、8条5項(代表の要請)、6項(国会議員3分の1の要請)がなくても、その判断で招集することも可能と解されよう。両院議員総会長は、三重二区選出の中川正春氏とのことである。


 もちろん、少なくともかかる決議には、両院議員総会所属の国会議員(前衆議院議員を含むであろう。)の過半数の賛成が必要であり、民進党の近時の支持率の低下からすれば、やはり「希望の党」に合流するという前原氏の判断を支持するのが体勢のように思われるので、上述のような流れは机上の空論かもしれない。もっとも、本稿はそれが理論的に可能ということを示すものである。