冷静に考えれば驚くべきことではないのだが
滋賀県知事選挙、これも驚きの結果だった。
当選した嘉田由紀子氏、社民党推薦だけの「市民派」候補が現職3党相乗りに勝利、しかも共産候補出馬での票割れあり、である。
確かに滋賀県は、衰退著しい関西地区にあって、人口が中期的に増加傾向がある県であり、そういうベッドタウンの場合、いわゆる無党派が勢いを持つ可能性を秘めるところではある。私の記憶の範囲でしかないが、国政選挙でも、決して自民党は強くなかった。他方で、これといった強い産業がある県ではなく、新幹線の駅も1つだけ、空港はない、「領土」の1/3は湖、ということで、地場の中小の企業が支え合って生きているという印象もある。記憶に新しいのは、文化価値のある某小学校の校舎を建て替えるかどうかで町が揺れた事件。あれは滋賀県内だっただろう。公共事業を止める訳にはいかない町長の事情は、その立場になれば、全く首肯できないものではなかった(個人的評価は別として)。
嘉田氏の主張は、新幹線「栗東駅」(南びわこ駅)(仮称)の建設反対、新たなダム建設の反対、等である。「もったいない」からやめようというものだ。まあ、のぞみの止まらない新幹線の駅があのあたりに増えても250億円が「もったいない」だけというのは、首肯できる(既存の栗東駅からは1km以上?離れているらしく、新たに草津線に新駅を作る計画らしいが、東海道本線(つまりは新快速)から直結でないなら、新快速で京都駅に行っちゃうよなあ。*1)。ただ、既に着工が始まっている、言い換えれば、既に工期のそれなりの部分が建設契約が締結されているわけで、ここで止めて「もったいない」ということになるのかどうか。某東京都知事が都市博を当選後直前で中止し違約金を支払ったことが記憶にあるが、当然こういう契約をここで破棄するのは、債務不履行であるので、考えてしまう。
さて、そういう心配や4年への期待もあるが、何故政治の素人56歳女性がこの選挙で勝ったのだろう。既に滋賀県民の特徴は述べたが、彼女の個人的資質について考えたい。
第1に、やはり専門家というのがあるだろう。琵琶湖の環境問題に長年取り組んできたこと。「松下政経塾出身」という机上の空論の人物よりは、○○という分野で○○年やってきたという軸がある人の方が、少なくともその分野では人脈もあり、経験もあり、能力もあるのだから、政治の世界でも歓迎されて良いと思う。私個人も、政治家というものは、最初から目指すべき職業とは違うと考えていたが、少なくとも滋賀ではその方向性が確認されたといえそうだ。
第2に、政策が分かりやすく、争点がわかりやすかったこともあるだろう。
普段、県政レベルの選挙で、争点はよくわからないことが多い。
具体的な1,2の事例が県民の関心を惹くことは決して多くはないが、うまく自ら争点を作って、対抗軸になれたのだと思う。「教育」とか「福祉」とか誰でも推進みたいな政策を唱えていたら勝てなかっただろう。というか、そういう政策しか言わないなら選挙にも出ていないのだろう。やはり、「これは実現しなければ」という迫力、それが出馬の原動力となり、実際の県民の投票行動にも表れたのだろう。
勿論女性だからとか、色々他にも要因はあるだろうが、こう考えていくと、やはりプロの迫力はジェネラリストに勝るということなのだろうか。プロが自分の土俵に持ち込んだ。やはり専門性は大事ということか。我々の世界にも通じるところがあるかもしらん。