藤本大学~徒然なるままに(弁護士ぎーちのブログ)

ぎーち(弁護士藤本一郎:個人としては大阪弁護士会所属)のブログです。弁護士法人創知法律事務所(法人は、第二東京弁護士会所属)の代表社員です。東京・大阪・札幌にオフィスを持っています。また教育にも力を入れています。京都大学客員教授・同志社大学客員教授・神戸大学嘱託講師をやっています。英語・中国語・日本語が使えます。実は上場会社の役員とかもやっていますし、ビジネスロイヤーだと認識していますが、同時に、人権派でもあると思っています。要するに、熱い男のつもりです。

不二家の事件から何を感じ取れるか?


 ミルキーはママの味♪の不二家の消費期限切れ牛乳の使用問題で、不二家は存亡の危機に立たされている。


 不二家には、東ハト*1の「キャラメルコーン」のような、誰からも愛される、ロングラン商品が多い。だから、仮に不二家がどうにかなったとしても、きっとヒット商品はそのまま承継されて販売されるだろう。しかし、不二家本体がこのまま存続できるか、については怪しい。何より、法令遵守に思ったよりうるさくなった大手スーパーが、今のままでは販売を許さないだろう。社長の交代だけでは、済まない。


 正直に言えば、消費期限切れ牛乳の使用、まあ「勿体ない」という現場の担当者の気持ちは、理解できないものではない。私もかつて、学生時代、某コンビニで深夜のバイトをしていたことがあるが、深夜の3時、消費期限切れ直前の神田川★★作のちょと高級弁当が売れ残っていると、「ああ頼む売れないでくれー」と祈りながら、働いていた。そう、1日3回やってくる商品との入れ替えの際に、期限切れは撤去するのであるが、「勿体ない」のでおいらが食べてしまうのである。あるいは、持って帰って友達にあげたりしたこともあった。でも、今はそういうコンビニも稀なのだという。バイトがそれで持って帰った商品で食中毒になれば、コンビニの責任が問われかねないからだという*2。今回は「勿体ない」から現場の担当者がその牛乳を飲む、ならいざ知らず、他人に売る商品に使ってしまったのだから、行為単独で見ても10年前の私よりも重罪である。そして今は10年前ではない。


 食品の安全管理についての日本人の意識は、元来は実は高くないと思う。適切な例かどうか分からないが、これをロサンゼルスでも垣間見ることができる。ここロサンゼルス郡では、レストランの衛生管理について、郡(カウンティ)がA〜C、それ以下、と4段階で分類するのであるが、日本のお店はなかなかAを取れていない。今月私が調査した(偉そうに書くが、単に興味があっていつもチェックしているだけ)限りでは、アマンディーヌ*3はAだが、West LAのニジヤの対面の日系レストランの多くやPico沿いの某和食店(東京に本店があるランチが美味しいあそこです。)はBであり、トーランスのミツワの中に入っているフードコートのレストランの中には、Cすら取得できていないところもある。これは、ルールの中には、我々の常識からしたら「そこまでしなくても・・・」というのもあるから、らしい。しかし、米国系の有名店はどこもAを取っているのである。


 しかし、雪印、そして今回の不二家を経て、食品衛生管理への視線は益々厳しくなるだろう。食品だけではない、建築では姉歯問題もあった。ライブドア問題も、もっと前ならば裁判にはならなかった程度の証取法違反だとも言えた*4。「ルールを守る」ということへの重さは、ずしり、ずしりと迫っているのだ。昨年の会社法の改正では、内部統制について言及する改正も行われた訳であるが、「ルールをきちんと守る」ことの優先順位は、ますます高くなっていくのだろう。そして、それが守れなかった時には、従来であれば考えられないような「しっぺ返し」を食らうのである。


 私も、ルールについてアドバイスをする1人として、もっとルールを深く検討し、厳しい視線で検討するように努めたいと思う。

*1:2003年に民事再生の日本流「プレパッケージ」で倒産→再建

*2:もっとも、コンビニの多くはフランチャイズなので、そのあたりを厳格に認識しているオーナーさんがどれだけいるかは、微妙だが

*3:Wilshier通り沿いの美味しい日系のカフェ。ケーキが特に良い。

*4:カネボウ事件の判決結果を見ている者としては、犯罪の性質、企業の経営状態からして、仮に検察側立証の全事情が事実であったとしても、検察の堀江氏への求刑は余りに重いものがあった