藤本大学~徒然なるままに(弁護士ぎーちのブログ)

ぎーち(弁護士藤本一郎:個人としては大阪弁護士会所属)のブログです。弁護士法人創知法律事務所(法人は、第二東京弁護士会所属)の代表社員です。東京・大阪・札幌にオフィスを持っています。また教育にも力を入れています。京都大学客員教授・同志社大学客員教授・神戸大学嘱託講師をやっています。英語・中国語・日本語が使えます。実は上場会社の役員とかもやっていますし、ビジネスロイヤーだと認識していますが、同時に、人権派でもあると思っています。要するに、熱い男のつもりです。

大統領を決めるまでの道のり


 いよいよアメリカ大統領選挙も、先週のアイオワ州、今週のニューハンプシャー州の民主・共和党の予備選によって、本格的にスタートしたということができます。


 さて、こんなこと知っているわい!という人が沢山いるでしょうが、ここでアメリカ大統領が決まるまでの道のりを遡ってみたいと思います。


 大統領選挙には沢山の登場人物が出てくるわけですが、最終的な決定は、来年1月6日の上下院議員が揃う前で上院議長が、各州の選挙人(Electors)が提出する証書(Certificate)を開封して、結果を集計し、そこで選挙人の過半数(538票中の270票以上)を獲得すれば大統領に選任されるわけです(US Constitution Amendment XII)。


 じゃあ、各州の選挙人はいつ決めるのか。これが11月の第1月曜日の次の火曜日、つまり11月2日から8日までのうちの火曜日に行われる「一般選挙」(General Election)です。これは、ニュースなどでは、有権者が大統領候補を選ぶかのように報道されますが、形式的には、選挙人候補名簿の中から選挙人を選ぶのです。これが米国の大統領選挙が間接選挙有権者→選挙人→大統領)と言われる所以です。


 では、選挙人しか選ばないのに、何故11月の一般選挙で大統領の当選が確定するのでしょうか。
 一般選挙では、選挙人候補者は、各政党(候補者)が指名した人が一括して名簿に記載されています。例えば、ワシントンDCは選挙人3名を選出することができるのですが、民主党の選挙人候補者名簿に3名の選挙人候補者が連名で掲載され、共和党選挙人候補者名簿にも3名の選挙人候補者が連名で掲載され(第三の候補者・政党も同様)、有権者は、一括してそのどれかの名簿1つに記載されている選挙人候補者に投票しなければならないわけです。つまり、共和党の名簿から2名、民主党の名簿から1名を選ぶということができないわけです。そうしますと、選挙人の当選によって、その選挙人が誰にその後投票するかが極めて明確に予測できますので、11月の選挙の時点で、誰が次期大統領になるのかが分かる訳です。


 当選した選挙人は、12月の第2水曜日の後の月曜日、つまり、12月13日から19日にかけての月曜日に、各州での選挙人会議を開催し、前述の証書を作成して投票するわけです。既にこの選挙人は、11月の選挙で選出された特定候補のシンパですので、その結果を受けて投票します。ただ、連邦法上は、この選挙人が11月の結果に従わずに別の候補に投票することは可能であり、実際合衆国の歴史上、過去に9度そのようなことがあったそうです。多くの州ではそのような行為を禁止していますが、この選挙人による投票は、州法の規制すべきところと考えられているので、合衆国憲法で明確な規定を設けない限り(連邦法で規制するとおそらく憲法違反になる)は、「裏切り」をまったくなくすことはできないかもしれません。


 ちなみに、各州の選挙人の人数は、各州の合衆国の上院議員と下院議員の数の和であると憲法上決まっています。そして下院は人口比率で決まりますので、各州の選挙人の数はほぼ人口に比例するといえますが、上院は州の人口に関わりなく各州2名選出できますので、実は大統領選挙は小さい州ほど相対的には多くの選挙人を選出できるということになります。


 話は前後しましたが、このように11月に選ばれた選挙人が12月に大統領候補に投票し1月6日にその結果が上院議長により開封されるわけです。


 では、大統領候補はどのように決まるのでしょうか。
 勿論、憲法上の要件を満たす者(35歳以上云々)であれば立候補できるのですが、有力2大政党である民主党共和党は、それぞれ1名の大統領・副大統領候補者を党大会で選出します。これは、2名以上が立候補することによる共倒れを防ぐためです。その党大会で投票できる者を「代議員」(Delegate)と呼びますが、本選挙の選挙人同様、この代議員が誰に投票するかも、各州で決まるわけです。例えば2008年最初のアイオワ州民主党大会では、オバマ氏が16名、ヒラリークリントンが15名、エドワード氏が14名分の「代議員」の票を獲得しましたが、このように州ごとにそれぞれの政党の党大会で誰に投票するのかを今少しずつ決めているところなのです。


 そうそう、本選挙では、2つの州を除き、その州で選ばれた選挙人は全て同じ候補者の選挙人、つまり、3名なら3名とも同じ候補者に投票することになるのですが、この予備選挙はちょっと違います。第1に、各州の党大会の投票とは関係なく党大会で投票する権利がある"Superdelegates"と呼ばれる人たちがいます。民主党の代議員は全米で4049名いるのですが、うち796名はこのような"Superdelegates"です。彼らは州の党大会の投票結果とは関係なしに特定候補を支持することができます。第2に、民主党の場合は、本選挙の州の票「総取り」"winner-takes-all"とコトなり、既にアイオア州の結果で示唆したとおり、2番手、3番手候補も代議員を獲得することができます。具体的には、各州の選挙で15%以上の票を獲得した候補者が投票に比例して代議員を獲得できるのが原則です。勿論、州により若干ルールが異なる場合があり、アイオワの場合、総投票数では3位だったヒラリークリントンが何故か代議員の数では2位だったエドワード氏よりも1名多くなっていて、これは私にもよくわかりません。


 ちなみに、共和党の代議員は全米で2380名いますが、うち463名が州の結果に従う必要のない"Unpleadged delegates"です。ちょっと言い方が違いますね。共和党の場合は、一般の代議員の場合は、州の票「総取り」になることが多いそうですが、違う州もあるようで、実際アイオア州の結果を見ますと、代議員は「総取り」になっていません。


 いずれにしましても、各州での投票はどんどん進んでいきますので、その投票が集中する「スーパーチューズデー」と呼ばれる2月5日頃には、各政党の大統領候補者が決まるのでしょう。


 ちなみに、みんな感じていることだとは思いますが、民主党でヒラリーが選ばれる可能性は高いが、カノジョが選ばれると共和党候補者に11月は負けそうな気がします。もしオバマが選ばれたら11月に共和党候補者に勝ちそうな気がします。2004年は、民主党候補者が勝つのではないかと思いつつも、民主党が何を血迷ったのかケリーを候補者にしてしまったせいでブッシュに負けるという結果になりました。今年は、民主党が「全国で勝てる」候補を推すのか、それとも民主党が好きな候補を選ぶのか・・・。これは楽しみなところですね。


 他方共和党ですが、個人的には保守本流であるマケイン氏が大統領になると、なんちゅうか、日米関係には良い影響があるかもなあ・・・とは思うのですが、世界全体から見てどっちがいいのかは分かりません。それより、日本の政治家のみなさんは、早くアメリカの民主党のみなさんと交流しておくべきだなあと思うんですけどねえ。どうも民主党の候補者は、アジアでは中国を強く重視しているように、私には感じられます。