藤本大学~徒然なるままに(弁護士ぎーちのブログ)

ぎーち(弁護士藤本一郎:個人としては大阪弁護士会所属)のブログです。弁護士法人創知法律事務所(法人は、第二東京弁護士会所属)の代表社員です。東京・大阪・札幌にオフィスを持っています。また教育にも力を入れています。京都大学客員教授・同志社大学客員教授・神戸大学嘱託講師をやっています。英語・中国語・日本語が使えます。実は上場会社の役員とかもやっていますし、ビジネスロイヤーだと認識していますが、同時に、人権派でもあると思っています。要するに、熱い男のつもりです。

甘苦上海・・・


 日経新聞の裏面、高樹のぶ子氏の「甘苦上海」。
 ちょっとエッチな小説ではあるが、私には心の奥底に響く内容となっていることが多い。
 何故なら、私も、上海に居る時、南京西路で働き、久光で日本を求めていたからだ。


 私の職場は静安寺という地下鉄2号線の駅から、南京西路を昇る朝日を追いかけるように5分ほど歩いたところで、銅仁路に近いところだった。小説で出てくる「ポートマン」まで行くと行きすぎであったが、小説に出てくる場所は、大抵私が歩いたり走ったりしていた場所。浦西【外灘より西の旧市街あたりをこう呼ぶ】で、何を求めていたのかよく分からないが、単に懐かしいを越えて、辛かったことや、当時考えていたことが思い出され、今の自分の不甲斐なさに驚くこともある。


 小説というのは、自分の体験と勝手にミックスされると、小説の価値以上になるような気がする。
 森見登美彦氏や万城目学氏が京都や京大を題材として書く小説にも、そんな要素がある。
 かつて、夏目漱石の小説は、東大生でなければその意味が分からない描写(従って私にも分からないのだが、東大卒の人がそう解説してくれた。)をして小説を書いていたりしたが、そのような、小説のパワーと自分自身の経験や体験をミックスさせる手法は、小説独特のものだと思う。これがテレビドラマになってしまっては、想像力をかきたてないのではないだろうか。


 そう考えると、この「甘苦上海」が日経新聞に掲載されている意味を考えてしまう。
 私のように、上海のことを思い浮かべる日本人が、かなり沢山いるということなのだろうか。
 いずれにせよ、私にとって、決して長期ではなかった上海滞在が、私の人生に大きな影響を与えていることだけは、「甘苦上海」を読むと証明されるような気がする。