藤本大学~徒然なるままに(弁護士ぎーちのブログ)

ぎーち(弁護士藤本一郎:個人としては大阪弁護士会所属)のブログです。弁護士法人創知法律事務所(法人は、第二東京弁護士会所属)の代表社員です。東京・大阪・札幌にオフィスを持っています。また教育にも力を入れています。京都大学客員教授・同志社大学客員教授・神戸大学嘱託講師をやっています。英語・中国語・日本語が使えます。実は上場会社の役員とかもやっていますし、ビジネスロイヤーだと認識していますが、同時に、人権派でもあると思っています。要するに、熱い男のつもりです。

日本相撲協会って。


朝日新聞電子版2010年2月3日付

安治川親方貴乃花親方への投票認める 退職の意向


大相撲の安治川(あじがわ)親方(36、元幕内光法=こうぼう)が2日深夜、東京都内で会見し、日本相撲協会の理事選挙で、所属する立浪一門の候補者ではなく、初当選した貴乃花親方(元横綱)に投票したと公表した。安治川親方は「一門に迷惑をかけた」として、3日に協会に退職届を出す意向を示した。

 安治川親方立浪一門の伊勢ケ浜部屋の現役関取安美錦から年寄株を借りており、宮城野部屋で部屋付き親方として指導していた。事前の会合では立浪一門の現職理事だった大島親方(元大関旭国)に投票する約束だったと見られ、この票が貴乃花親方に流れたことが大島親方の落選につながった。立浪一門からはもう1票が、貴乃花親方に流れた模様だ。


 安治川親方という方は、素直で素朴な方なんですね。
 しかし、この退職は不要だと思いますし、こんなことで退職を事実上強いるのは不当だと思います。


 そもそも日本相撲協会は、法律上「財団法人」という法人で、かつ、昨今の立法(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律)によって「公益」と「一般」の財団法人に分けられることになった中でも、「公益財団法人」として登記しようとしているような、公益性の高い組織です(もっとも本当に相撲協会が公益財団法人としての認定を受けられるか、認定すべきかについては異論もあるようですが)。


 財団法人の場合の最高議決機関は評議員会であり、評議員により構成されます。評議員会では、役員である理事を選任します。評議員は、定款の定めに従って選任されますが、特に法は、「理事又は理事会が評議員を選任し、又は解任する旨の定款の定め」を置いてはならないと定めます(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律153条3項)。また、評議員と財団法人との関係は、委任の関係とされます(同法172条1項)。


 つまり、財団法人における評議員は、理事の下僕でも、特定の協会の個人の代表でもなく、自ら財団法人の利益のために行動することが期待されているのです。


 私は、貴乃花親方に「改革」ができるかどうかという点では疑問を抱いています。しかし、少なくとも安治川親方が、評議員として、貴乃花親方が理事に相応しいと思ったのであれば、それが一門から見た裏切りであったとしても、財団法人日本相撲協会評議員としての義務を果たしている訳で、その結果退職する必要はないどころか、退職してはいけないと思います。むしろ、特定の一門のためのみに行動している評議員がいるとすれば、財団法人日本相撲協会との委任関係の趣旨に照らせば許されない訳です。