藤本大学~徒然なるままに(弁護士ぎーちのブログ)

ぎーち(弁護士藤本一郎:個人としては大阪弁護士会所属)のブログです。弁護士法人創知法律事務所(法人は、第二東京弁護士会所属)の代表社員です。東京・大阪・札幌にオフィスを持っています。また教育にも力を入れています。京都大学客員教授・同志社大学客員教授・神戸大学嘱託講師をやっています。英語・中国語・日本語が使えます。実は上場会社の役員とかもやっていますし、ビジネスロイヤーだと認識していますが、同時に、人権派でもあると思っています。要するに、熱い男のつもりです。

2016年オリンピック国内候補地


 2016年のオリンピック候補地に立候補している東京都と福岡市が国内候補地として争う中、JOC(日本オリンピック委員会)は17日、東京都を福岡市よりも評価する報告書をとりまとめたそうです。


 確かに財政難のなか、既存の施設の利用については、東京都の方が有利なのかもしれません。しかし、どういう目的をもっていま東京で再びオリンピックをするのでしょうか。無駄がないという理由で東京でオリンピックをすることは一見もっともに聞こえます。しかしオリンピックは、ただ競技をするというだけではなく、これを契機として、その国(開催国)の将来の発展や、参加国に対する開催国のイメージアップにつながるような目的・効果がある筈です。かかる観点から見た場合、「日本がアジアを向いていること」「日本が地方分権を執り行うこと」ということをイメージするために、福岡市で開催することは意味があると思います。逆に東京で開催すれば、勿論施設面で無駄は少ないようにも思えますが、東京と福岡市では、圧倒的に物価が違うので、人的なサービスの面で、福岡開催よりも余計な費用がかかることも想定しても良いはずです(皆さんも東京と福岡市でのラーメンの価格が倍以上異なることはご存じでしょう)。またこのことは、参加国の選手や、観戦する人たちが実際にお金を払う場面での日本のイメージにもつながる筈です。


 更に、施設面ですら、私は東京が本当に優れているのか、疑問に思う点がいくつかあります。第1に、空港から競技場、ないし主要な宿泊施設等へのアクセス面です。福岡市は、既に「つれづれなるままに」でも触れ、また福岡市を訪れた方なら誰もがご存じのとおり、博多駅から地下鉄で僅か2駅の場所に福岡空港が存在します。成田や関空から国内便に乗り換えて福岡入りする必要は確かに生じますが、市内の交通という、海外の方からすればもっとも戸惑う場面での戸惑いが少ないように思います。他方、東京開催となりますと、成田からのアクセスは、私はとても不安です。例えば新宿や銀座のホテルに宿泊するとしましょう。タクシーなら兎も角、公共交通機関で外国人が簡単にそのホテルに辿りつけるとは思えません。第2に、現在の関東の公共交通機関は、高度に電子化されており(例えばスイカ)、「車掌」「駅員」が公共交通機関で主要な役割をしている他国(これは米国を含みます)からすれば、かなりの戸惑いが生じるように思います。そういうオリンピック対応のためにそれぞれの駅で対策を講じることが可能でしょうか。関東圏の「駅」は、ものすごい数であり、たとえ車掌や駅員が手書きで何らかの切符を発券しても自動改札を通れないとか・・・。とにかく、オリンピック開催という視点に基づく交通アクセスの面では、私は必ずしも、東京が優れているようには思われないのです。


 勿論国際的には、日本の都市で外国に知られていると言えば、せいぜい東京、京都、広島(原爆の関係で)くらいであって、福岡はまだまだというところであり、国内候補に残っても世界で勝てないのではないか、という危険があるかもしれません。しかしこの点で東京には、福岡以上に過酷な面があります。ご承知のように、1964年に東京で夏季オリンピックが実際に開催されている訳です。最後の最後の争いになったとき、夏季オリンピックが開催されている地と、そうでない地の争いになれば、どちらが勝つでしょうか。もちろんIOCの理事の判断ですから、なんとも言えませんが、私なら、まだ開催したことのない都市を選ぶような気がします。もっと言えば、これは細かい話ですが、石原都政下で開催地を決めるとなれば、石原氏の右寄りな発言がアジア諸国の理事の投票行動に影響することがないとはいえないように思います。

 
 このように考えていくと、総合的な日本におけるオリンピック国内候補地としての評価は、むしろ福岡に分があるように思われてならないのです。勿論「もったいない」行為を行うべきではないという視点も、決して無視してはならないですが、いま述べたような広い視点で両者を比較して欲しいように思います。


 国内候補地の最終決定は今月末だそうです。私は福岡市を支持します。