藤本大学~徒然なるままに(弁護士ぎーちのブログ)

ぎーち(弁護士藤本一郎:個人としては大阪弁護士会所属)のブログです。弁護士法人創知法律事務所(法人は、第二東京弁護士会所属)の代表社員です。東京・大阪・札幌にオフィスを持っています。また教育にも力を入れています。京都大学客員教授・同志社大学客員教授・神戸大学嘱託講師をやっています。英語・中国語・日本語が使えます。実は上場会社の役員とかもやっていますし、ビジネスロイヤーだと認識していますが、同時に、人権派でもあると思っています。要するに、熱い男のつもりです。

合格発表

 日本時間21日は2つの国家試験の合格発表でした。

 まず第一に、新司法試験の合格発表。
 1009人もの人が新たに私たち法曹の仲間になることになったわけです。
 まずはおめでとうございます。


 合格率48%が高いという話、低いという話、両方ありますが、結構微妙なバランスだと思います。

 なんといっても、旧司法試験とは異なり、法科大学院を卒業しなければ受験ができません。最低でも2年間、お金と時間をかけて大学院に行かなければいけないわけです。ですから、確かに旧試験は2%の合格率でしたが、母集団の本気度が少し違うと思います。したがって48%だから24倍易しくなったとはいえません。通った方はみな相応の努力をされたことと思います。易しくなりすぎた、ということはないと思います。

 他方、よく比較される米国の司法試験ですが、昨年7月のカリフォルニア州司法試験も合格率は48%*1でした。司法制度改革審議会の最終報告書に出てくる『おおむね7割』という言葉が独り歩きしましたが、なおニューヨーク州の合格率約6割よりは低いものの、すでに米国並みの合格率となったといえるのではないかと思います(来年は合格率では下がるのでしょうが)。


 このように、易化しすぎた訳ではないものの米国の水準が見えてきた新司法試験。だからこそ、もはや弁護士になったから食えるという時代は明らかに終わりました。

 1009人の中で、残念ながら実際には法曹として実質的な仕事ができない人も出てくると思います。多くの法曹が感じていることだと思いますが、司法試験合格は決してゴールではなく、やっとスタート地点に立ったというだけです。これから弁護士として依頼者に信頼され、質の高い仕事をやっていくこと、これは容易なことではなく、かなりの自己鍛錬が必要になってきます。私も五里夢中・暗中模索です。

 そして、法科大学院では、依頼者にいかに信頼されるか、といった実務で大事なことはあまり教えられていないと思います。弁護士は間違いなくホストと同じくらいの営業職であり、営業が苦手な人は、それを補うだけの能力がない限りは食べていけません。これができそうになければ、どの法律事務所もアソシエイトとして採用しないでしょうし(いわゆる超大手のように事務所の名前でお客様がやってきてくれるところは別)、自分で独立しても食べていけないでしょう。

 私も日本に戻れば「新人弁護士」のようなもの。彼らに負けないように、依頼者に信頼してもらえるように、引き続き鍛錬に励みたいと思います。


 ところで、新司法試験合格者向けに、私の日本の所属事務所(弁護士法人淀屋橋・山上合同。事務所は東京と大阪にあります。)も合格者説明会を開催するようです*2。私の知り合いであっても、何の優遇もできませんが、もし詳細が知りたければご一報ください。

・・・・

 ところで、同じ日の午前、弁理士試験の論文式試験の合格発表があったそうです。

 私の敬愛する現在55歳の方が、この試験に昨年脱サラして挑戦し、法律にも特許にも無縁だったにもかかわらず、僅か1年の努力で見事合格されたと聞きました。もちろん優秀な方だったのですが、本当に驚きました。まだこちらは口述試験が残っていますが、旧司法試験同様9割が合格し、不合格でも翌年口述から受験できるとのこと。いやいや、すごいすごい。

 人間、いつからチャレンジしても遅すぎるということはないですね。

 私も、もう1度日本で仕事を始めたら、もうこう長いお休みは取れないでしょうから、その前にチャレンジできること、色々頑張ってみたいと思います。

*1:http://www.calbar.ca.gov/calbar/pdfs/admissions/Statistics/JULY2005STATS.pdf 参照。なお、合格率トップはUCLAの89%(合格者数235名(初受験者))。次いでStanfordの88%(同73名)、Berkeleyの87%(201名)、Hastings College of The Lawの84%(同304名)、USCの82%(同152名)の順。)

*2:http://www.yglpc.com/kyujin/60osakaset.html 参照