藤本大学~徒然なるままに(弁護士ぎーちのブログ)

ぎーち(弁護士藤本一郎:個人としては大阪弁護士会所属)のブログです。弁護士法人創知法律事務所(法人は、第二東京弁護士会所属)の代表社員です。東京・大阪・札幌にオフィスを持っています。また教育にも力を入れています。京都大学客員教授・同志社大学客員教授・神戸大学嘱託講師をやっています。英語・中国語・日本語が使えます。実は上場会社の役員とかもやっていますし、ビジネスロイヤーだと認識していますが、同時に、人権派でもあると思っています。要するに、熱い男のつもりです。

大阪弁護士会会員で留学を考える方・留学中の方へ


 果たして、どれくらいの方が私のウェブサイトを見て下さっているか分かりませんが、事務所等とも十分議論した上で、今般、今年4月から開始された「特定公益活動」の免除申請を行うに当たり、私と同様に、平成19年度に留学中であって、「特定公益活動」義務を履行できない、という仲間の弁護士を求めています。同時に、この種の免除申請には、常議員会の決議が必要ですので、支援して下さる会員がいれば、是非ご一報ください。


1 「特定公益活動」とは何か?何故留学中の者が悩むのか?何故私だけ?悩むのか?


 「特定公益活動」義務とは、今年4月から、大阪弁護士会で始まった義務のことです。一定の活動を大阪弁護士会の会員であれば、しなければいけない、という義務です。しなければいけない活動とは、例えば、(1)弁護士会の委員会活動に参加する、(2)弁護士会が実施する法律相談に参加する、(3)国選弁護を担当する、(4)当番弁護を担当する、等のいずれか1つです。


 大阪弁護士会の普通の若手弁護士であれば、これらの活動のうち1つだけ、ということであれば、殆ど全ての会員が履行していると思います。「特定公益活動」とは、公益活動の「最低基準」を画策するに過ぎないと考えます。


 私は、自分を「ビジネスローヤー」だと思っていて、公益活動は自分のメーンではないと考えてはいますが、しかし当然ながら、私も、こういった「特定公益活動」は、「最低基準」を大きく超える水準で留学前にずっとやっていました。しかし、正直それは誇れるものというよりは、当たり前のことをしていただけ、という感じです。


 ところが、これらの活動は、大阪(活動内容によっては日本)に在住していなければ、履行不可能なものばかりです。留学中の人間は、いかに留学前・留学後に公益活動をやっていようが、この義務を履行できない、という問題があるのです。

 詳細な内容については、こちら(弁護士会からのレターの写し)をご覧下さい。


 私は、もともとは2年の留学予定でしたが、アメリカだけでは勿体ないということもあり、中国にも行くことを決断し、秋前後からは上海の現地法律事務所で勤務することを考えています。従って、平成19年度からスタートした新制度の「特定公益活動」義務を履行できない見込みなのですが、同時期に留学した仲間の多くは、平成19年度中に復帰できるか、あるいは、大阪弁護士会会員のうち、実は留学した者の多くが、戻った後、東京の弁護士会に移籍する予定で(事務所を変えるか、同じ事務所の東京事務所に移る)、同じ悩みを抱えている会員を余り知りません。


2 特定公益活動の「みなし履行」「免除事由」


 一般論として「特定公益活動」の履行義務を弁護士会の会員に課すこと自体、私にも異論はありません。しかし、義務の内容が、属地的な、大阪にいなければ履行できない義務を定めている以上、留学中の者には、適切な代替的義務を定めるか、またはそれが定められていないのであれば、免除を認めるか、いずれかであるべきだと考えるだけです。


 そして、そういった免除規定は幅広く定められているのに、留学中というのは、免除事由として規定がないのが、問題なのです。


 今回の新しいルールの免除事項の規定は、次のとおりです。
 まず第1は、特定の地位に就いていれば、当然に履行したとみなされる「みなし履行」規定です(規定4条)。
(1) 本会、日弁連、近弁連の役員
(2) 常議員
(3) 司法修習生の指導弁護士
(4) 公設事務所の設置会員又は勤務弁護士
(5) 日本司法支援センターの理事、事務局長、地方事務所長、副所長、事務局長
(6) 日本司法支援センターの常勤スタッフ弁護士
(7) 民事調停委員、家事調停委員
(8) 司法委員
(9) 非常勤裁判官
(10) その他会長が常議員会の決議に基づいて定める職務
(※法規室及び企画調査室の各室長及び嘱託が、これに定められる予定です。)


 第2は、申請により期間を定めて((1)以外)免除されるものです(規定5条)。
(1) 満65歳以上の会員(当該年度に満65歳に達する会員を含む)
(2) 傷病、出産、育児、介護のため参加が困難と認められるとき
(3) 司法研修所教官の職にあるとき
(4) 任期付き公務員の職にあるとき
(5) 国会議員の職にあるとき
(6) その他会長が常議員会の決議に基づいて定める事由があるとき


 どこにも「留学」に関して触れられていないので、私は規定5条(6)に基づき、会長に常議員会の決議を求めることとなると思います。結構ハードな手続を必要とするので、可能であれば、1人でも多くの申請する仲間がいた方が良い訳です。今回再度、ここに掲載した理由は、そういう仲間はいないものか、ということです。


3 義務不履行の場合の制裁


 不履行の場合、6万円の負担金を支払うことになります。


 6万円なら良いじゃないの、と思う方もいるかも知れませんが、2つの意味で私はこれは容認できません。1つは、既に私は、毎月毎月、大阪にいないのに、マトモな収入がないのに、約4万5000円もの弁護士会費を、自腹で払い続けています。この4万5000円は、勿論公益活動の維持のために使われている訳で、何故更に6万円払う必要があるのか、納得できないのです。もう1つは、この負担金が、名目はどうであれ、罰金に他ならないものであり、この程度の「特定公益活動」義務すら履行できなかったという不名誉な歴史が残ることに、耐えられないということです。


4 不均衡


 再度同じことを言いますが、「特定公益活動」義務を会員に課すること自体は、私にも異論はありませんが、何故留学中が義務免除ないし代替的義務の対象にならないのかが、分からないのです。

 既に2で述べたとおり、義務の免除ないしみなし履行は、かなり幅広く定められています。
 例えば、出産は勿論、育児や介護など、他の物理的な参加困難については、幅広く定められています。更に「みなし履行」を見ますと、常議員の職にある場合など、一定の地位にあれば、無条件で履行されたことになるようにも定められています。要するに、留学中以外は、かなり手厚く、義務の免除が定められているのです。


 この「特定公益活動」は、大阪に居る会員であれば、そんなに義務履行が難しいものではありません。繰り返しになりますが、大阪で弁護士活動をしていた3年半、この義務水準であれば、私は常に基準を大きくクリアしてきました。

 そして、免除も、留学以外には幅広く認められているのです。


 この「特定公益活動」義務は、結果として、留学する者だけを困らせる規定になっています。


 ところで、「特定公益活動」義務とは種類が異なりますが、弁護士会は別途、「継続研修」義務というものを定めています。これは、弁護士の質的な維持のために、一定の年次になれば、研修を受ける義務を課するものです。実は私は、この4月からの1年が、弁護士登録5年目が終わった後の1年なので、この義務の対象でもあるのです。ところが、この「継続研修」義務については、なんと、留学中というだけで、義務免除が認められているのです。

 「弁護士継続研修のしおり」12〜13頁を見ると,「継続研修は原則として是非とも履修していただくべきものですので,免除がなされる場合とは,継続研修の履修が「著しく困難」である場合に限られることをご理解ください。」という説明が記載された後,その「著しく困難」である「やむを得ない場合」の説明として,「妊娠・育児」等と並んで,「留学」も,そのような事由であって,継続研修の履修義務が免除される,との説明が記載されています。。。。


 同じように弁護士会が定める「義務」で、「継続研修」義務の履行は、「著しく困難」であることを認めてくれているのに、何故、「特定公益活動」義務は、果たさなければいけないのでしょう?なんか不均衡・不整合を感じませんか???



 大阪弁護士会で留学する者は確かに多くありません。私の同期(54期)で同時期に米国留学をした者が5人、それ以外に中国が1名でした。そして、5人中、少なくとも2人程度は、東京に移ります。大阪弁護士会は、一般には留学する者に配慮してあげる必要がないのかもしれません。


 しかし、それで良いのでしょうか。ただでさえ経済が停滞し、弁護士の需要も、既に頭打ちになったとささやかれる大阪で、大阪弁護士会が、あろうことか、留学したいという弁護士にだけ、制裁を課するような義務を定めておいて。


5 現状


 実は、私は既にこの免除申請を一旦提出しているのですが、既に弁護士会の方から、「取り下げる」ように圧力を受けています。免除になる見込みがないから、だそうです。常議員会での決議ですが、常議員の方は全て「特定公益活動」の「みなし履行」がなされているから、でしょうか。

 ただ、私が1人「変な弁護士」で片づけられるよりは、もしも仲間がいそうなら、まずそれを探すのが筋だし、同種の仲間がいないとしても、まず先に、私の主張をもっと広げてから正規議論のテーブルに載せた方が良いかも知れない、と思い、一旦はこれに従って取り下げ、数ヶ月後に再度申請しようかと考えています。


6 まとめ


 私は、弁護士として、欲張りです。
 アメリカも知りたい、中国も知りたい。知財でやっていきたいけど、知財だけでは嫌。
 ビジネスローヤーでありたいけど、ビジネスローヤーだけでは嫌。ちゃんと、自分なりの公益活動を果たしていきたい。自分のやり方で、世の中に貢献し、少しでも、リーガルな面で、世の中を良くしていきたいと考えています。


 そんな中で、「特定公益活動」を果たさなかったということで、不名誉な負担金が課せられてしまうのが、本当に辛いのです。私が大阪での弁護士を選んだのも、色々な理由がありますが、そういう地味な活動もしていきたいということだったのに、あろうことか弁護士会から「お前みたいな弁護士はいらない」と言われているようで、とても辛いです。


 お仲間がいれば、是非連絡下さい。

 私の意見が間違っているかも知れない。それはあり得る話です。
 弁護士の方でも、そうではない方でも、忌憚のない御意見を頂戴できますと幸いです。


 ではでは。