藤本大学~徒然なるままに(弁護士ぎーちのブログ)

ぎーち(弁護士藤本一郎:個人としては大阪弁護士会所属)のブログです。弁護士法人創知法律事務所(法人は、第二東京弁護士会所属)の代表社員です。東京・大阪・札幌にオフィスを持っています。また教育にも力を入れています。京都大学客員教授・同志社大学客員教授・神戸大学嘱託講師をやっています。英語・中国語・日本語が使えます。実は上場会社の役員とかもやっていますし、ビジネスロイヤーだと認識していますが、同時に、人権派でもあると思っています。要するに、熱い男のつもりです。

濫用的買収者?


 日本経済新聞平成19年7月9日電子版
 【ブルドック買収防衛策、東京高裁も認める】
 http://www.nikkei.co.jp/news/main/20070709AT3Y0200A09072007.html

投資ファンドスティール・パートナーズブルドックソースの買収防衛策差し止めを求めた仮処分申請の即時抗告審で、東京高裁(藤村啓裁判長)は9日、申し立てを却下した東京地裁決定を支持、スティールの抗告を棄却する決定をした。同高裁はスティールについて「濫用(らんよう)的買収者と認めるのが相当」と認定した。

 んー、ついにこういう決定が出る時が来てしまいましたね。


 法律的な面でも、色々と言いたいことが沢山あるのですが、私が現在日本で会社法実務をしている訳ではないので、若干とんちんかんなことを申しあげるかもしれないので、控えます。まあでも、いままで裁判等で問題になった買収防衛策の内容の中では、一番「適法」と言われる可能性が高い内容だったと思いますので、今更大きな驚きはないですが、でも、色々と考えてしまう点はあります。


 本来、「所有と経営の分離」の理念からすれば、株主が特定の経営方針を示す必要はない訳ですから*1スティール・パートナーズを「濫用的買収者」と認定するに至った経緯については、色々と考えてしまう点があります。また高裁の決定をちゃんと読んでからこの点についてきちんとコメントしようと思いますが。


 スティール・パートナーズは、この決定によっても、ソンはしないそうですね。今回の買収防衛策の内容に従えば、他の株主にはお渡しする新株予約権スティール・パートナーズには渡さずにその価値部分を現金で渡すことになるからですね。濫用的買収者と認定された人が、結果としてソンせず儲けることができることになる結末が、果たして良かったのかどうかも、気になるところです。まあソンするような内容であれば、今度は違法だったかもしれないから、難しいところですが。


 この決定は、日本の株式市場に大きな影響を与えると思います。それが、良い影響だと良いのですが。。。

 外国人株主は、この決定をどう思うんでしょうかね?外国機関投資家=濫用的買収者というレッテルが貼られた、と見るのか、濫用的買収者でもソンはしないという御墨付きが出た、と見るのか・・・・。

*1:米国の各州の会社法の中には、大株主に他の株主に対し配慮すべき一定の義務があるという方向で考える傾向があるものがあります。大株主が誤った決定を行えば、株主といえども他の株主に対し損害賠償責任を負うという考えすらあります。そのような会社法の歴史がある国であれば、今回の決定も分からないでもないのですが、日本はどうなんでしょうかね。上場会社の株主でも何らかの義務があるんですかね。会社法ができたときに、全てが変わったと理解するんでしょうかね。