藤本大学~徒然なるままに(弁護士ぎーちのブログ)

ぎーち(弁護士藤本一郎:個人としては大阪弁護士会所属)のブログです。弁護士法人創知法律事務所(法人は、第二東京弁護士会所属)の代表社員です。東京・大阪・札幌にオフィスを持っています。また教育にも力を入れています。京都大学客員教授・同志社大学客員教授・神戸大学嘱託講師をやっています。英語・中国語・日本語が使えます。実は上場会社の役員とかもやっていますし、ビジネスロイヤーだと認識していますが、同時に、人権派でもあると思っています。要するに、熱い男のつもりです。

中華人民共和国測絵法


 さて、そろそろ中国ネタでも、法律関係にたまには触れてみることにしましょうか。

 普通の法律ばかり触ってもおもろくないでしょうから、あんまりなじみのない法律から触れていきましょう。


 新華社通信平成19年7月9日付
 【国家測絵局が渉外測絵違法案件の処理状況を公表】
http://news.xinhuanet.com/legal/2007-07/09/content_6350006.htm
(※リンク先は中国語(簡体字)です)

 このニュースで問題となっている3件の違法案件が全部日本人だったので、少しだけ測絵法について触れてみます。


 そもそも中国語で「測絵」とは何でしょうか。


「測絵」Ce4Hui4
測量と製図の総称


 と辞書に書いてあります。


 測絵法2条には定義がありまして、

『本法律でいう「測絵」とは、自然地理または地表の人工施設の形状・大小・空間位置及びその属性などを測定・採取・記述すること、及び、入手したデータ・情報・成果を処理・提供する活動を行うことをいう。』(※訳は適当に私が作っていますので、あまり信じないで下さい)

 とありますので、測量よりもかなり広い意味になると思われます。


 じゃあ、この測絵法の目的は何でしょうか。第1条にヒントがありまして、

『測絵管理を強化するために、測絵事業の発展を促し、国家経済の建設・国防建設・社会発展の事業のために、測絵事業を保障するべく、本法を制定する』


 あら、軍事的な目的もあるのですね。日本とは偉い違い。


 中国では、国土の正確な情報は、軍事的に意義があると言うことで、一種の国家秘密と扱われます。従って、中国国内で市販されている地図は、微妙に国土の正確な測量結果からはズレたものになっているという噂があります。


 そこで、第7条です。

『外国の組織や人間が中華人民共和国の領土及び管理等する海域で測絵活動に従事する場合は、必ず国務院測絵行政主管部門会同軍隊測絵主観部門の承認を得るものとし、中華人民共和国の関係法律、行政法規規定を遵守するものとする』

 おっと、承認なしに測量やら地図作製したらいかんのですな!!


 ここまで読めば分かりますね?
 今回、日本人が3件とも絡んでいる訳ですが、いずれも、この第7条の承認(原文では「批准」)を得ることなく、測量等を行ってしまったという事案でした。


 いずれも2万元(約33万円)の罰金と、測量器具等の没収処分となっています。


 行政処罰を受けた人を見てみますと、日本でも論文を書いておられるような考古学や地理学の先生のようです。中国を了解したいというお気持ちは分かりますが、異国の法律も是非了解して頂きたいものです。