藤本大学~徒然なるままに(弁護士ぎーちのブログ)

ぎーち(弁護士藤本一郎:個人としては大阪弁護士会所属)のブログです。弁護士法人創知法律事務所(法人は、第二東京弁護士会所属)の代表社員です。東京・大阪・札幌にオフィスを持っています。また教育にも力を入れています。京都大学客員教授・同志社大学客員教授・神戸大学嘱託講師をやっています。英語・中国語・日本語が使えます。実は上場会社の役員とかもやっていますし、ビジネスロイヤーだと認識していますが、同時に、人権派でもあると思っています。要するに、熱い男のつもりです。

知っておこう!命の値段!もしあなたが中国で鉄道事故に巻き込まれたら・・・


 昨日、今日、私とお会いした皆様に話した内容に一部私の誤解がありました(※後述)ので、訂正の意味を込めましてここに書かせてもらいます。

[設例]

 あなたの乗車している中国国内の鉄道が鉄道事故に巻き込まれ、死んでしまいました。

 損害賠償はいくらできるでしょうか?


 ちょっと前に飛行機事故についてお話ししましたが、今度は鉄道事故で、しかも中国国内事故を想定しています。


 中国の民法通則に従えば、死亡により生じた家族の生活扶助費用等について、損害賠償ができる筈です(民法通則119条、なお117条)。また、中国の鉄道の基本法である、中華人民共和国鉄路法によれば、鉄道列車事故、その他鉄道営業上のの事故で鉄道旅客の生命身体に損害が生じた場合は、鉄道運営業者は損害賠償しなければならない(不可抗力等の場合免責)と規定されています(鉄路法58条)。しかし、以前の解釈基準によれば、この損害賠償額は、最大でなんと4万元(たったの60万円)に制限されていたのです!!!


 この点、2007年7月11日に公布され、同年9月1日に施行された「中華人民共和国鉄路交通事故応急救護と調査処理についての条例」(国務院令第501号)第33条1項によれば、この4万元の制限が、15万元まで引き上げられたとのこと。しかし、それでもたった230〜240万円です。。。ちなみに、同条2項では、書面合意する場合はこの制限を超えて賠償しても良いとの記載がありますので、逆に言えば、合意がなければやっぱりこれがマックス、ということに解釈される訳です。。。


 国慶節の時期、各地に旅行される日本人も多いと思いますが、全体に中国における損害賠償額は低めですし、鉄道事故には上述のような損害賠償限度額の設定がありますので、ちゃーんと保険に入って列車に乗りましょう・・・。


 なお、鉄道事故により周辺住民が巻き込まれた場合の損害賠償は、上述の条例によっては解釈されないので、一般原則に戻るのですが、これが果たして有利になるかどうかは、よく分かりません・・・。それくらい中国での損害賠償額は低いということは、念頭に置いておいて頂いた方が良いかも知れません。まあ、ちょっとずつ変わりつつあるんですけどね。。。



※お会いした人には、12万元に制限される、って言ってしまったんですが、15万元だった、という話です。