藤本大学~徒然なるままに(弁護士ぎーちのブログ)

ぎーち(弁護士藤本一郎:個人としては大阪弁護士会所属)のブログです。弁護士法人創知法律事務所(法人は、第二東京弁護士会所属)の代表社員です。東京・大阪・札幌にオフィスを持っています。また教育にも力を入れています。京都大学客員教授・同志社大学客員教授・神戸大学嘱託講師をやっています。英語・中国語・日本語が使えます。実は上場会社の役員とかもやっていますし、ビジネスロイヤーだと認識していますが、同時に、人権派でもあると思っています。要するに、熱い男のつもりです。

チャイナリスクの一端。


 昨年12月20日、中国の国家広播電影電視総局(国家ラジオ映画テレビ総局)が「互联网视听节目服务管理规定」(インターネット上の視聴番組サービス管理規定)という行政法規を公布し、これが今年1月31日より施行されたことが、大きな波紋を呼んでいます。


 この第7条によれば、いかなる組織も個人も、「インターネット上の視聴番組サービスに従事する」場合は、「情報ネットワーク視聴番組送信許可証(信息网络传播视听节目许可证)」を取得しなければ、そのサービスを行うことができないと規定され、更に、この第8条によれば、その許可証を取得するためには、国有企業または、国が過半数株式を握る等により支配している企業でなければならない旨が明確に規定されているのです。既に、中国では2億人以上の人がネットに接続していると言われ、また、ネット上で動画などのサービスを提供している民間会社も数多くあり、その影響は図り知れません。


 更に、この行政法規について国家ラジオ映画テレビ総局がインタビューに答えた回答が、まるで行政法規公布前の企業であれば、特に違法行為がなければそのままやってもいい、とも解釈し得るようなものだったため、波紋を複雑化させているようにも感じます。


 その部分を(適当に)訳しますと(原文はhttp://www.sarft.gov.cn/articles/2008/02/03/20080205162110880324.htmlをご覧下さい)


(質問)
六、「規定」実施後、どのような基準によりインターネット上の視聴番組サービス市場への参入を管理するのですか?

(回答)
 インターネット視聴番組サービスを提供する組織は重要なネット文化を構築する源であり、中国の特色あるネット文化を構築し、ネット文化の情報の安全を維持する重要な責任を負っており、憲法、法律および行政法規の遵守を自覚せねばならず、インターネット視聴番組サービス行政主管部門とインターネット行政主管部門の管理を受けなければならない。「規定」公布の前に法に基づき開設され、法律・行政規則違反がない場合は、更新登録をし継続して事業に従事して良い。淫乱で情欲に訴える番組や暴力を宣伝擁護する番組を送信するといった重大な違法行為をしている場合は、法に基づき厳粛に処理がされなければならない。軽微な違反の場合は、期限を設けて是正されなければならない。「規定」の公布の後にインターネット視聴番組サービスに従事する場合は、必ず「規定」第8条に列挙する全ての条件に符合しなければならない。


 ・・・つまり、公布前であれば「必ず「規定」第8条に列挙する全ての条件に符合しなければならない」訳ではなく、今まで「法律・行政法規違反」がなければ、引き続き事業ができるのではないか、という期待を持たせるような回答内容にも、読めなくはない訳です。しかし第10条第3款(日本流に言えば「第3項」)を読みますと、やっぱり更新でも第8条の条件を満たさなければいけないと書いてあるので、この規則そのものは国有企業・国支配企業に限って許可を認めたと解釈すべきであろうと思います。


 今回の行政法規の目的は、「淫乱で情欲に訴える番組」「暴力を宣伝擁護する番組」を排除することにある筈で、日本流に言えば、仮にこの行政法規に沿う立法があるとしても、過度に広範な規制であることは明白です。中国でも、これはやりすぎという声が広がっていますが、いまのところは、公式の対応は上述の「回答」以外になく、今後が注目されます。


 しっかし、そんなことしたら、中国でYouTubeに勝てるサイトは一切生まれなくなるよねえ。。。たとえ中国政府がこういう行政規則を出しても、中国国外で送信することは禁止できないですからねえ。。。

 中国のアニメが日本に勝てないのも、国産産業を保護しようとして、外国アニメ等の放送を一部制限したりしているからなんですけどねえ・・・。ドラえもんとか、中国で人気絶大でも、ゴールデンタイムの放映が禁止されているのも、国産産業保護の一環なんですよねえ。。。。


 いずれにしても、既に大きな産業になっているネット上の動画サービスが、いきなりできなくなるという結果が生じてしまっていることは、チャイナリスクの一端を示したものといえるでしょう。