藤本大学~徒然なるままに(弁護士ぎーちのブログ)

ぎーち(弁護士藤本一郎:個人としては大阪弁護士会所属)のブログです。弁護士法人創知法律事務所(法人は、第二東京弁護士会所属)の代表社員です。東京・大阪・札幌にオフィスを持っています。また教育にも力を入れています。京都大学客員教授・同志社大学客員教授・神戸大学嘱託講師をやっています。英語・中国語・日本語が使えます。実は上場会社の役員とかもやっていますし、ビジネスロイヤーだと認識していますが、同時に、人権派でもあると思っています。要するに、熱い男のつもりです。

成績の価値


 私の事を「生き急いでいる」と仰る方が今年に入って2人もいたりしましたが、今日はのんびりと勉強したり読書したりさせて頂いています。こんな時間を上海で与えてくださっている多くの人に感謝しなければ、ね。


 さて。

 弁護士の就職難が叫ばれるようになりましたが、米国での経験からちょっと心配する点を1つ。


 私が見た限りの断片的な情報ですので、どこまで正確かという点は問題となりますが、米国カリフォルニア州ロースクールを見ていると、中下位校でGPAが悪いと、まともな就職はないといっても良い状況でした(勿論司法試験に受かっても、という前提です。カリフォルニア州は3300万人の人口(米国人口の9分の1)で全米の州では最大の20万人(米国弁護士の5人に1人)のカリフォルニア州弁護士がいますので、現在全米最難関の試験をやっているのにも理由があるのです)。そのため、GPAの水増しが見られるようになり、成績があまり信用できなくなり、結局中下位校の成績は信用できない、ということになって、成績が良くてもあまり評価されない状況だったと言って良いと思います。


 私はいま法科大学院に携わっていないので何とも言えませんが、密かに心配しているのは、このような成績のインフレ化です。既に学部レベルでは、京都大学ですらインフレ化している・・・つまりもともと成績判定は厳しかったのですが、京大卒でも成績が悪いと法科大学院入試に失敗するので、多少甘く評価する・・・という話を聞いたことがあります。どこまで本当かどうか分かりませんが。


 法科大学院の成績評価がインフレ化してしまえば、採用する弁護士事務所や企業は、大量の候補者の中から益々採用基準を失っていき、結局、大学名と年齢と特殊な経験だけで採用するという傾向が強まっていくのではないか、その結果として、大量採用と大量解雇という傾向が強まっていくのではないか、ちょっと心配しています。


 弁護士は、「匠」としての技術を「師匠」から学ぶことが大事で、それがなく放り出されたら、何よりその弁護士に頼る依頼者にとって非常に不幸なことになります。弁護士というのは、勿論専門知識が大事ですが、何より、専門家としての経験が大事。勉強だけなら、例えば私のように、別に中国の法学部や大学院に行かなくても中国法を学ぶことはできます。しかし実務経験は、まさに経験しないと学べない訳です。法科大学院の在り方が「机上の空論」にならないように、今こそ、もっと抜本的な改革を。