藤本大学~徒然なるままに(弁護士ぎーちのブログ)

ぎーち(弁護士藤本一郎:個人としては大阪弁護士会所属)のブログです。弁護士法人創知法律事務所(法人は、第二東京弁護士会所属)の代表社員です。東京・大阪・札幌にオフィスを持っています。また教育にも力を入れています。京都大学客員教授・同志社大学客員教授・神戸大学嘱託講師をやっています。英語・中国語・日本語が使えます。実は上場会社の役員とかもやっていますし、ビジネスロイヤーだと認識していますが、同時に、人権派でもあると思っています。要するに、熱い男のつもりです。

三浦和義氏の逮捕(4)


 前回私自身の勉強不足を若干露呈してしまい、やや慎重になるべきかどうか迷っているぎーちです(苦笑)。しかしここは私のクライアントに対する意見書を書く場ではなく、むしろ若干推敲が足りない意見であっても提供して法的な議論をする場であると思いますので、現時点で分かっていることを更に書いていきたいと思います・・・それより最終帰国の準備しろ、と言われそうですが。。。。


 まず、前回ご指摘のあったCHAPTER 511(A.B. No. 1432)ですが、この改正は、前回取り上げた656条と793条についてのみ行われたもので、656条と793条が改正され、更に656条の5、6,793条の5が新設されています。このうち656条の5と793条の5については、外国判決が「危険」にならない代わりに、外国での刑事拘留期間について、カリフォルニアでの刑期に算入できる、ということになりました。


 これはおそらく、前回「2」で取り上げたPeople v. Lazarevich (95 Cal. App. 4th 416)の影響もあるのではないかと思われます。なんせ、Kidnappingをしておきながら、罰金刑で済んでしまっているのは許せない、きちんとした刑罰がされるべき、という感覚があったのではないかと思います。しかし、三浦氏の事件は、セルビアと一緒にされては困るなあ、というのが私の感覚ですが、「それでもボクはやっていない」しか見ていない外国人であれば、セルビアも日本も差不多だと思ってしまっているかもしれません・・・。


 いずれにせよ、ここでいう拘留期間は、無罪判決の場合であっても、保釈や判決確定前に拘留されていた期間を含む訳で、コメント欄で頂いたFoxNews(http://www.foxnews.com/story/0,2933,332654,00.html)が「三浦氏について13年」と言っているのは、時効の話ではなく、三浦氏が保釈前に拘留されていた期間が13年あるので、これを算入することができる、という旨を述べたものです。


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 中国では報道の詳細がつかみにくいのですが、いずれにせよ、2005年1月1日にこの2004年の改正刑事法が施行されており、かかる一事不再理(二重の危険)という内容の改正であれば、三浦氏の行為は、改正前656条、793条に基づき処理されるべきだというのが私の感覚ですが、そうではないという意見もあり得るのであって(後者だとしても三浦氏は(Foxの計算によれば)懲役13年分は免除されますが、カリフォルニアで第1級殺人に関する共謀の事実が仮に認められれば、13年では済まないような気がします)、実際改正法施行前の行為につきいかに判断すべきか、改正法そのものは直接言及をしていません。


 ちなみに、この点は既にたくさん報道されていますが、米国では一般に「共謀罪」が独立した犯罪です。従って、改正前刑事法に従ったとしても、「殺人罪」でしか起訴されていない三浦氏は、共謀罪について「危険」が生じておらず、起訴できるという見解もあり得る訳です。また、既に「1」「2」で指摘しているとおり、(東京高裁は「氏名不詳人との共謀」について事実の有無につき認定しようとしていることから)共謀罪について「危険」が生じているとしても、米国で起訴される際の共謀行為と日本での共謀行為が異なれば、「危険」が生じたことにならない可能性があることも既に述べたとおりです。


 サイパンやカリフォルニアの裁判所がどのように法的判断を下すのか、本当に見物ですね。