藤本大学~徒然なるままに(弁護士ぎーちのブログ)

ぎーち(弁護士藤本一郎:個人としては大阪弁護士会所属)のブログです。弁護士法人創知法律事務所(法人は、第二東京弁護士会所属)の代表社員です。東京・大阪・札幌にオフィスを持っています。また教育にも力を入れています。京都大学客員教授・同志社大学客員教授・神戸大学嘱託講師をやっています。英語・中国語・日本語が使えます。実は上場会社の役員とかもやっていますし、ビジネスロイヤーだと認識していますが、同時に、人権派でもあると思っています。要するに、熱い男のつもりです。

私の人生を大きく変えた契約条項について


朝日新聞2008年4月30日付電子版
http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200804300036.html
「入居時の「定額補修分担金は無効」 貸主に返還命令」

 マンション入居時に補修費名目で一定額の「定額補修分担金」を払わせるのは不当だとして、元借り手の女性が計22万3千円の返還を賃貸マンションの貸主に求めた訴訟の判決が30日、京都地裁であった。中村哲裁判長(辻本利雄裁判長代読)は「借り手の利益を一方的に害し、無効」と述べて16万円の支払いを命じた。

 原告側の京都敷金・保証金弁護団によると、定額補修分担金はほかに群馬、愛知、香川などの各県で支払いを求められるケースが確認されているが、判決で無効とされたのは初めてという。

 貸主側は「分担金は借り手の軽い過失による損傷を補修する費用」などと主張した。しかし、判決は「通常損耗は普通、賃料に含める形で回収されている」とし、分担金について「借り手が負担する必要のない費用の支払いを強いており、金額も貸主が一方的に決めている」と述べて退けた。


 この「定額修補分担金」(定額補修分担金)という条項は、私の人生を大きく変えることになった条項です。
 

 ちなみに、定額修補分担金は、賃貸借契約終了後の修理代金について、一定額につき借主に負担を求める条項でして、「敷金」とは、(1)修理の実額を求めるものではなく定額を求めるものであること、(2)通常損耗についても、かかる分担金を使って修理することが可能となるという点で異なります(敷金であれば、修理の実費で、かつ、通常損耗を超える部分しか引くことができません)。要するに家主に都合良いんですよね。


 私は、大学入学以後、司法修習の時期や弁護士開始以後暫く、京大農学部グランドやら「ひらがな館」の近くのワンルームに住んでおりましたが、弁護士をやって少し経って、出町柳まで徒歩なら15分強、チャリだと駐輪場になかなか置くことができず市に撤去されてしまうということもあり、出町柳駅近くの、もう少しだけ広い賃貸住宅を探しておりました・・・。


 え、出町柳じゃなくて大阪にすればいいじゃないか!?という声もあるでしょうが、私にとっては、第一に京都に住みたいから大阪で仕事を始めたということがあるのと、第二に始発駅というのが重要で、電車で100%座れるというのは得難いんです・・・。


 そんなとき、ある賃貸住宅をみつけたのでした。
 駅からとても近くて、新築で、家賃もお手頃。
 さっそく仲介業者に行ったところ、この「定額修補分担金」のことが。


 業者に、消費者契約法等に違反し、かかる条項は無効ではないか、通常損耗は貸主負担じゃないのか??と言うかどうかでまず数分悩み・・・。後から無効を主張するにしても、消費者契約法の趣旨は、力関係が不均衡で弱い消費者を守るところにあるのに、最初から無効であることを認識認容して契約する弁護士は消費者契約法に基づく無効を主張できるのだろうか・・・云々。


 悩んだ末に口を開いた後・・・。


 その業者は、賃貸物件、貸してくれなくなりました・・・。さすが、貸し手市場・京都!


 当時まだ、そんな判例なかったのでねえ・・・。


 この経験以後、マンションを賃借するというのが、極端に嫌になったのでありました・・・。
 そして、今でもその賃貸マンションと、業者の前を通ると、「いつか見ていろ俺だって」と思うのであります。京都市長とかになった時は覚えていろよ!なーんてね。