藤本大学~徒然なるままに(弁護士ぎーちのブログ)

ぎーち(弁護士藤本一郎:個人としては大阪弁護士会所属)のブログです。弁護士法人創知法律事務所(法人は、第二東京弁護士会所属)の代表社員です。東京・大阪・札幌にオフィスを持っています。また教育にも力を入れています。京都大学客員教授・同志社大学客員教授・神戸大学嘱託講師をやっています。英語・中国語・日本語が使えます。実は上場会社の役員とかもやっていますし、ビジネスロイヤーだと認識していますが、同時に、人権派でもあると思っています。要するに、熱い男のつもりです。

労働契約法実施条例


 今年1月より中国では「労働契約法」(中国語では「労働合同法」)が施行されていますが、その実施条例が国務院より今月18日に公布され、同日施行されました。


 条文はこちら(中国語です)
http://www.gov.cn/jrzg/2008-09/18/content_1098995.htm

 予め発表されていた草案は全45条でしたが、正式に施行された実施条例は38条です。普通なら、無期限労働契約の解除要件14種類を示した19条(草案28条に相当)を解説するのでしょうが(6号だけちょっと変わりましたね)、そのあたりをお聞きになりたければ直接お聞き頂くとして、今日ここで紹介したいのは、我々日本の弁護士にも示唆のある第3条です。


(原文)
 第三条 依法成立的会计师事务所、律师事务所等合伙组织和基金会,属于劳动合同法规定的用人单位。


(藤本訳)
 第三条 法に依り設立された会計士事務所、弁護士事務所等の組合組織及び財団法人は、労働契約法の規定する使用者に属する。


 弁護士事務所のアソシエイト(勤務弁護士)は、色々な理屈で、労働者ではなく、請負契約の請負人であるという主張が、時としてパートナーからされることがあります。
 全く同じ状況ではありませんが、中国の新人弁護士の場合、そもそも既存のどこかの弁護士事務所に所属しなければ「執業律師」と呼ばれる正式な弁護士になるための1年間の研修を行うこともできませんし、独立開業には様々な制約もあるので、とにかくどこかの法律事務所に所属しなければならない、という点で、日本の新人弁護士よりも厳しい面があります。そうであっても、弁護士事務所は「使用者」であると労働契約法実施条例が正式に規定したことは、中国のみならず日本にも一定のインパクトがあるのではないでしょうか。