藤本大学~徒然なるままに(弁護士ぎーちのブログ)

ぎーち(弁護士藤本一郎:個人としては大阪弁護士会所属)のブログです。弁護士法人創知法律事務所(法人は、第二東京弁護士会所属)の代表社員です。東京・大阪・札幌にオフィスを持っています。また教育にも力を入れています。京都大学客員教授・同志社大学客員教授・神戸大学嘱託講師をやっています。英語・中国語・日本語が使えます。実は上場会社の役員とかもやっていますし、ビジネスロイヤーだと認識していますが、同時に、人権派でもあると思っています。要するに、熱い男のつもりです。

企業が生き残るか否かを見分ける方法


 風邪気味ぎーちです。


 さて、年末ですが、どうも世界的に景気はイマイチですね。
 先月行った上海ですら、不況の足音を感じました。


 景気が悪くなると気になるのは、「あの会社」が潰れるかどうかです。
 大丈夫、仮に資金繰りが悪くなっても、民事再生や会社更生という手段もあります。
 GMとかは、Chapter 11の方が組合の牙城を切り崩してリストラがし易くなるから、むしろ法的再建手続を使った方が良いような気もします。どうせ、Chapter 11しなくたって売上は落ちまくる訳ですから、有利子負債を思い切りカットする方が良いような。


 ただ、法的な再建手続を常に使える訳ではないし、使ったとしても、再建できる企業とできない企業がある。その境目は何でしょうか。


 まあ、相談があったときにこれを判断するのが私たち弁護士の仕事でもあるんですけどねえ・・・。


 色々な判断要素がありますが、特に大きい要素の1つに、「人」があります。
 結局は、その企業を率いていく優秀な人材が残れば、だいたい何とかなるように思います。
 逆に、優秀な人が逃げて、そうでない人だけが残ると、えらいことになります。


 法的な整理というのは、企業を極限状態にします。
 お金回りの仕事量が、ざっくり言って倍になると言っても過言ではありません。何故か。申立直後の混乱だけではありません。慣れない裁判関係の書類作成もあります(最後は弁護士が責任を持ちますが、実務担当者が基礎資料を作らなければ弁護士も数字を固められません。)。混乱終結後も、当面は取引条件が変わります。締日の変更や現金取引の導入等、取引先によって条件もばらばらになります。優秀な人が残らなかったら、単に事務手続きだけで企業が回らなくなります。


 優秀な人が残ると、それが連鎖反応になって他の優秀な人も残ってくれます。
 その逆の連鎖反応もありますから、怖いものです。


 だから、優秀でない経営者が再建手続をやるときは注意が必要です。自分が優秀か否かは、経営者なら分かるでしょう。そういうときは、優秀な人がその事業を承継できるような仕掛けを予め作っておかないとダメでしょう。


 リーダーが冷静であれば、そもそも法的倒産をドラスティックに行わずに債務を整理するやり方もあります。特にスポンサーが見つかり、株主全員がスキームに賛成するなら、会社分割⇒株式譲渡を先行させて、後から旧会社を特別清算or破産とするスキームがスムーズでしょう。これだって法的倒産ではありますが、倒産する時は既に新設会社によって事業が軌道に乗っているのですから、うまくいくことが多いです。


 法的倒産は,その事業の性質によっては、申立をしたという事実だけで売上が半分以下にならざるを得ない業種もあります。倒産申立により、得意先が機械的に逃げてしまうような業種があります。逆に法的倒産でも、需要者が全くこれを知る余地がないと判断できる業態であれば、売上が殆ど落ちないこともあります。


 法的倒産で売上が落ちなくても、負債の内容によっては、法的倒産による債務カットのメリットを享受しづらい場合もあります。そんなときは、やっぱり法的倒産をしない再建を考える方がいいですよね。


 いずれにせよ、経営者は、倒産の危険性を感じれば、早期に、どのような手法があり得るのかについて、専門家に聞いた方がトクであることだけは間違いないでしょう。一番悲しいのは、「あと1ヶ月早く相談に来て貰っていたら・・・」という話をするような時です。


 あんまり早く行くと「計画倒産」だといってかえってマズイのでは?と思う方もいるかもしれませんが、倒産後に、倒産直前の様々な行為が「否認」されるよりは、「否認」されるリスクを極小化して倒産する方がリスクが小さいのです。


 うまくやれば事業はより良くなりますので、経営者の方が、法的手段を選択肢の中でいくつか持っておくことは、とても大事だと思います。