藤本大学~徒然なるままに(弁護士ぎーちのブログ)

ぎーち(弁護士藤本一郎:個人としては大阪弁護士会所属)のブログです。弁護士法人創知法律事務所(法人は、第二東京弁護士会所属)の代表社員です。東京・大阪・札幌にオフィスを持っています。また教育にも力を入れています。京都大学客員教授・同志社大学客員教授・神戸大学嘱託講師をやっています。英語・中国語・日本語が使えます。実は上場会社の役員とかもやっていますし、ビジネスロイヤーだと認識していますが、同時に、人権派でもあると思っています。要するに、熱い男のつもりです。

新司法試験合格発表


 いくつか述べたいことがあります。


1 合格者数について


 新司法試験の合格発表がありました。
 本来、今年は3000人合格の年になる筈でした。でも、2074名しか合格しませんでした。


 平成14年に平成22年は3000人合格、を閣議決定して、新しい司法試験制度を始めた筈でした。「給費制」のことで日弁連は頑張っているようですが、誰も、真面目に3000人未達のことについて、騒いでいないように思います。


 しかし、個々の学生にとっては、大金ではあるけれども280万円が貸与になるか(貸与だとしても、最初5年は返済不要で無利子、かつ10年かけて返して良いんです)、給費になるか、よりも、合格できるできない、が第一に問題になるのです。勿論、採用されて法曹として活躍できるか否かの関門もありますが、とにかく合格できなければ、法科大学院に行ったことそれ自体も、意味があったと言えるか怪しくなります。


 3000人合格の重要性は、ことあるごとに、私なりに公にしてきました。しかし、昔ながらの「ムラ社会」がお好きな方には理解されなかったように思います。非常に辛いです。


 再度述べます。3000人は閣議決定です。内閣が決めたんです。そしてこれを修正する閣議決定はまだありません。3年連続2000名で留め、これにより1500人前後の人生を変えてしまったのです。国家による詐欺と言わずして何でしょうか。


 いつも言いますが、隣国中国では、昨年およそ10万人が司法試験に合格しています。司法の質ばかりを問題にする方は「小さい司法」をイメージし過ぎです。司法には、色々と活躍の場があるのです。そして、中国でこれだけ多数の人が合格していれば、日本の司法は浸食されないでしょうか。例えば企業が、日本語も堪能で京大の修士をとっている中国司法試験合格者と、京大の法務博士だが、日本の司法試験に合格していない日本人と、どちらを採用するでしょうか。いや、後者でしょうと言うかもしれない。しかし、多くの日本企業が、日本・中国両法の法律を分かっている人を採りたがっている。日本の弁護士が供給されないなら、日本法が分かる中国の律師を採用することは、十分あり得るのです。


 法律事務所で裁判をする、これだけを司法に限らず、積極的に多くの人を合格させて欲しいです。私なりに、引き続きこの点のアピールを続け、まずは、合格者数を増やすことで、優秀な人が集まりやすくしたいと思います。


 給費制を復活して法曹増員を「ペースダウン」するのでは、決して日本の司法を良くすることにはならないと思います。


2 合格者へ


 そんな厳しい司法試験に合格された皆さん、おめでとうございます。


 しかし、法曹という社会は、勉強ができればそれで良い社会ではありません。近時の合格者さんは、試験の成績を気にしすぎて、自分をどのようにオンリーワンの存在にするのか、あまり考えておられない方が目立つように感じます。


 是非、あなたにしかできない法曹というのを実現して欲しいです。他の人じゃなく、あなたにしかできない法曹を目指して欲しいです。そうしないと、日本の法曹全体が、縮小再生産しかねないです。合格に安住せず、採用内定に安住せず、それぞれが自分のフィールドで、法曹の世界がより広く、大きくなるように頑張って欲しいです。


3 不合格者へ


 今日、合格、不合格を伝えるメールや電話を受け取りながら、1つ気付いたことがあります。それは、昨年、きちんと不合格を私に報告してくれた方は、全員今年合格した、ということです。


 法科大学院は、皆が2・3年間一緒に勉強する、高校のような、和気藹々とした場になっていることが多いようです。ところが卒業、司法試験により、不合格者が戻る場がなく、孤独化する傾向が、確かに存在します。現役の学生に混じったりして、切磋琢磨して勉強することは、難しいのかもしれません。しかし、それを乗り越えて、孤独化せずに頑張った方が、皆合格したように思います。


 1回くらい不合格になったから、全てが終わり、という訳ではありません。大阪弁護士会のアンケートでも、司法試験の受験回数を重視して採用するという事務所は、東京・大阪の108事務所のうち、3事務所だけでした。


4 おわりに

 私にまつわる方々、まだ殆どの方にメールお返しできていません。すみません。でも、本当に合格者には心からおめでとうと言いたい。不合格者には、反省することは反省して、しっかり頑張ってと言いたい。そして、もしも私で良ければ、いつでも相手します。但し、時間はめちゃくちゃ遅いかもしれませんが。