初授業
今日は、今期の同志社での初授業でした。
私の担当する授業は、「アジア法1」でして、内容的には中国法全般です。
試しにシラバスを書いてみます。
<概要>
本講義は,隣国であり,我が国にとって最大の貿易相手国である中華人民共和国の法制度につき,基本的知識から,幅広い知識を習得することを目的とする。
特に本講義では,単なる概念を学習するだけではなく,講師が現実に使っている,“実務で使える中華人民共和国法”を学習することに力を入れたい。
また,中国語ができるならより望ましいが,できなくても良い。これを機会にして勉強するのであれば,指導する。
<到達目標>
中華人民共和国の法制度について,十分な知識を習得すること。
<授業計画>
第1回 中国法入門(1)
第2回 中国法入門(2)
・中国現代史,中国憲法の構成,中国における立法・司法・行政の関係
・中国における共産党の役割
・中国の法令の種類と優劣(立法法)
・中国の律師制度
を中心に,中華人民共和国法の基本的な根源について勉強する。
第3回 中国契約法(1)
中華人民共和国の「契約法」(合同法)について勉強する。
第4回 中国契約法(2),用益物権(物権法)
中華人民共和国の契約法のうち,不動産賃貸借契約など物権に関係する部分と,物権法のうち,用益物権に係る部分について勉強する。
第5回 中国不法行為法
中華人民共和国の不法行為法(侵権責任法)と,その特別法ともいえる製造物責任法(産品質量法)等について,勉強する。
第6回 中国親族・相続法
中華人民共和国の家族の問題を考える上で,親族法(婚姻法)・相続法(継承法)を勉強することは,ビジネスとしての重要性は低いものの,欠くことのできない部分である。そこで,これらの法制度についても勉強する。
第7回 中国会社法(1)
中華人民共和国の会社法(広義)の基本的な仕組み,特に,会社法(狭義)と外商投資企業の三法(中外合資企業経営法,中外合作企業経営法,外資企業法)の相違に着目しながら勉強する。
第8回 中国会社法(2)
中国会社法の基礎を前提として,具体的な事案(日中間のM&A)における中華人民共和国法の課題を勉強する。なお,本講では日本の金商法・会社法の知識及び香港特別行政区・ブリティッシュ・バージン・アイランド会社法等の他国の法知識も若干必要となる。
第9回 中国の外貨管理制度・中国の担保法
中華人民共和国においては,外貨が厳しく管理されており,これに伴って,担保制度も独特のものとなっている。本講では,特に日本企業等外国側から見て,中国の担保制度がどのような状態になっているのかを勉強する。
なお,中華人民共和国の外貨管理制度については,変更の速度が極めて速く,授業直前に法制度が変更される等の事情により,授業の時期を変更する可能性も捨てきれない点留意されたい。
第10回 中国の知的財産権
中華人民共和国においても、特許法(専利法)・商標法・著作権法・不正競争法(反不正当競争法)等の法令が整備されている。しかしながら、模倣品や権利の抜け駆け登録など、実務上外国企業が中国で知財の保護を受けるのは大変である。中国知財法の基本を学習した上で、そのような被害を受けた際にどのような対応が可能かを勉強する。
第11回 中国契約法(3)・技術ライセンス・中国独禁法(反壟断法)
中華人民共和国の発展にとって、技術を外国から導入しやすくすることは長年の課題であったため、技術の契約については、様々な法制度が存在している。
特に、中国契約法の典型契約の1つに「技術契約」なる項が存在し、多数の条文が置かれている。また、外国と中国との技術の輸出入については、「技術輸出入管理条例」(技術進出口管理条例)なる行政規則が別途存在し、その中には一種の独占禁止法的な規定も存在し,実務上大きな意味を持っている。これらを概観し、中国とのライセンス契約において留意すべき点を勉強する。
第12回 中国民事訴訟法(1)
第13回 中国民事訴訟法(2)
日中間の渉外紛争,日本の現地子会社が中国企業と紛争を抱えるケースを念頭に置きながら,中華人民共和国民事訴訟法及び仲裁法を勉強し,訴訟又は仲裁を開始し,最終的に紛争解決するまでの流れを追う。
第14回 中国労働法
中華人民共和国の労働法・労働契約法・労働仲裁法について概説し,中国の労働法制度について勉強する。
第15回 まとめ(日中間の法律実務論)
講師のように、日本と中国との間でのビジネスに携わる弁護士は少なくないが,どのような案件を,どのような流れで取り扱っているのか。また,日本の弁護士として,渉外案件について何ができ,何ができないのかについて,授業のまとめとして講義し,中国法実務に関わるためのノウハウを勉強する。
<予習の内容>
不要。但し,テーマとなる日本法の知識は確認して参加されたい(例えば,中国契約法がテーマであれば,日本法ならどうだったか,を確認されたい)。
なお,授業時に,関連する法令とレジュメを配布する。復習をしっかりして貰いたい。
生徒さんは、単位が楽勝に取れそうだという方から、北京、上海、台湾等への留学経験がある方まで様々でした。学年的にも、純粋未習1回生から、3回生まで幅がありました。そういう意味では、なかなか難しいのですが、40名の生徒の期待に応えられる授業がしたいなあと思います。