弁護士の不祥事対策


 最近、弁護士の不祥事が後を絶たない。
 特に、金銭的に苦しくなった弁護士が、依頼者から預かったお金を使い込むという事例が相次いでいるように感じる。弁護士の一人として、非常に悲しい。


 こうなると、何らかの形で、弁護士の財産的基礎と、損害賠償能力を確認する必要があると言わざるを得ないだろう。


 ところで、実は、現在、我が国の「弁護士」制度の中に、法務省が、財産的基礎と損害賠償能力があることを確認するという制度がある。それは、「外国法事務弁護士」制度である。

 外国法事務弁護士は、我が国の司法試験に合格した、所謂弁護士ではなく、外国の弁護士資格保有者のうち、一定の要件を満たしたために、我が国において、当該外国法等の法律事務を取り扱っても良いとされる者である。その資格の承認は、外弁法(外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法)上、法務大臣が行うものとされ、その承認に先立ち、日弁連が意見を述べることができることになっている。そして、その資格承認要件の1つが、「誠実に職務を遂行する意思並びに適正かつ確実に職務を遂行するための計画、住居及び財産的基礎を有するとともに、依頼者に与えた損害を賠償する能力を有すること。 」(同法10条1項3号)なのである。

 法務大臣及び日弁連は、かかる資格承認申請がされた場合、財産的基礎を有する資料として、例えば、預金通帳や貸借対照表を確認することがあり、損害賠償能力を有する資料として、所属弁護士事務所の保証書や、保険会社との賠償保険の契約書を確認することがある。


 外国法事務弁護士についてそうであるならば、日本資格弁護士についても、同様に確認すべきではないか・・・そういう議論が起きるのではないだろうか。


 無論、そのまま外国法事務弁護士の制度をトレースする訳にはいかないだろう。第一に、弁護士自治の原則からすれば、たとえ財産的基礎や損害賠償能力の確認の目的とはいえ、法務大臣が関与することはまずいだろう。仮にそのような制度を設けるとすれば、日弁連又は単位弁護士会が担当すべきであろう。しかし、日弁連や単位会が十分な制度構築と運営ができなければ、まさに弁護士自治が取り上げられることにもなりかねない。

 第二に、我が国の新人弁護士についてもこの制度を導入すれば、法科大学院卒業直後の借金で、財産的基礎も損害賠償能力もないということで、資格が得られない可能性があり、この確認制度が若手に対する参入障壁になるなら大問題である。そもそも、現在の不祥事は、競争に敗れ、かつ倫理的にも廃れた比較的ベテランの弁護士で起きているように感じるし、新人弁護士の大半はイソ弁、即ち、雇用される弁護士であって経営者にはならないから、この種の問題が典型的には生じない。新人弁護士の経営者(即独)の場合も、司法修習直後であれば、少なくとも倫理的には廃れていないだろう。そうであるとすれば、仮にそのような財産的基礎や損害賠償能力の確認を行うとすれば、例えば弁護士10年目以後につき、5年毎に行うというのが適当ではないだろうか。

 第三に、仮に日弁連や単位会が確認したとして、その後どうするかという問題がある。外国法事務弁護士については、入口の問題であったが、仮に第二で述べたような制度とするならば、既に弁護士業界に参入している弁護士の財産的基礎や損害賠償能力の確認を行うのであり、要件を充足しないならば弁護士資格を剥奪又は停止させるのか、それとも、剥奪や停止とはしないが、その代わりに一般に開示する形を取るのか。前者も後者も、経済的苦境にあえぐ弁護士にとっては死刑宣告に近い形になる。果たして、いまの弁護士会にそこまでの制度が作れるのか。


 そもそも論であるが、弁護士は法律のプロとしての勉強はしているが、経営のプロとしての勉強はしていない者が多いと思われる。折角法科大学院を創設し、プロセス教育をしているのであるから、根本的には、法科大学院なども含め、業界全体で、経営者をきちんと育てる努力をし、本当にどうしようもない弁護士は排除する制度をつくらなければ、弁護士に対する信用は維持できないように思われる。