倒産申立について
Professor Klee。米国倒産法の教授であり、私の論文のsponsorにもなってくれた先生だ。去年京大でも講演したと彼は言っていた。さて、ふと、論文提出した時の彼とのトークを思い出したので、書いてみたい。
皆さんは個人自己破産の申立の時、弁護士報酬はいくら払う必要があると思います? 弁護士の皆さんはいくらにしていましたか?
ロスでの標準は、だいたい2000ドルで、これでも上がったんだそうです。
というのは、昨年10月の倒産法(Title 11)の改正で個人の自己破産が難しくなり、更に弁護士の責任が加重されたからのようです。以前は1500ドル位で請け負っていた弁護士も多かったとのこと。
いまご承知のように、日本でもっとも弁護士報酬が下がった分野が、個人の自己破産です。弁護士会の報酬規定は20〜30万円だったが、実際は25〜30万という辺りの価格設定だったと思う。それが、司法書士さんが1件10万円でやりだしたものだから、弁護士に依頼する数がかなり減り、報酬額もかなり下がった(私個人は下げなかったが・・・値段だけで司法書士がいいのであれば、どうぞそちらに行って下さい、というのが私のホンネ)。しかしよくよく考えると、米国でももっと安かったのだから、日本でも安くて当たり前、か。
米国の弁護士の競争社会の中での弁護士報酬は、ある意味将来の日本を占うかもしれないと感じる。
そういえば、Kleeはこうも仰った。昔は、ロサンゼルスは、会社更生(正確には米国倒産法第11章、チャプターイレブン)申立のメッカだった。全米の10%はここで申立された、という時代もあった。というのは、例えばBank of Americaのような金融企業の本社がロスにあり、債権者申立での会社更生があったからだ。しかしいまでは、NYやデラウェラに食われて、ロスでの申立は、大型では、ない。
大阪で大型倒産をやるということは、会社更生法の改正で管轄が東京地裁・大阪地裁に広く認められた結果、更に減少するだろう。知財も然り。大阪では私の仕事はもうないかもしれない。
そう、だからKleeにも質問したのだ。
わたし「Ken、あなたのような、倒産法を作った弁護士が、何故ロサンゼルスで仕事をするのですか?NYでもワシントンでもデラウェラでも、貴方のような人であれば、沢山依頼者を抱えられる。ロスにいても、実際の依頼者は東海岸で、いつも貴方は飛行機の中じゃないか」
教授「私はただ、ロサンゼルスが好きなんだよ。仕事のために東海岸に行くことは、時間の無駄でもあるけど、それでもロサンゼルスが好きなんだ。仕事はどこでもできるが、どこでも住めるって訳ではないだろ?」
ちょっと分かる気がする。私も、仕事は東京でしてみたいが、京都に住みたいのだ。