藤本大学~徒然なるままに(弁護士ぎーちのブログ)

ぎーち(弁護士藤本一郎:個人としては大阪弁護士会所属)のブログです。弁護士法人創知法律事務所(法人は、第二東京弁護士会所属)の代表社員です。東京・大阪・札幌にオフィスを持っています。また教育にも力を入れています。京都大学客員教授・同志社大学客員教授・神戸大学嘱託講師をやっています。英語・中国語・日本語が使えます。実は上場会社の役員とかもやっていますし、ビジネスロイヤーだと認識していますが、同時に、人権派でもあると思っています。要するに、熱い男のつもりです。

利息制限法と出資法(貸金業法)

 まだどこまで本決まりか分からないが、いわゆるグレーゾーン金利の規制(一本化)について、いよいよ実現しそうである。15〜20%までが利息の上限であるという利息制限法の規制に、例外がなくなるかどうか、注目したい。

 特に、50万円以下の場合には、例外を設けるかも、なんという声が聞こえてくるが、殆どの消費者向け貸金業者は50万円以下で貸付をしているから、それでは骨抜き。

 さて、このグレーゾーン廃止が実現したとき、当然貸金業者は影響を受けるだろうが、次に影響を受けると思われるのは、弁護士と司法書士ではないだろうか。

 弁護士の信条により様々だと思うが、過払返還を求める交渉や訴訟は、比較的確実に「稼げる」分野だからだ。弁護士にもよるだろうが、取り返した金員の2割前後を成功報酬とする場合があると思う。依頼者はもともと「返済」したと思ったお金だから、2割報酬でも「痛く」ない。弁護士や司法書士も、取引履歴の開示交渉では苦労するだろうが、訴訟提起すればほぼオートマティックにことが進むので労は多くない。規制一本化で金利の格差がなくなるから、このような「戻ってくる」という話が債務整理ではなくなるだろう。そうすると、本当に二進も三進もいかなくなった人の債務整理は困難が予想される。今までであれば10社・400〜500万円から借りていたら4社くらい「とんとん」つまり返す必要がなくなり、2社くらい「過払い」が戻り、4社くらい返済の要があるが、利限法引き直しで減額ができて、本人の弁護士介入後の負担は軽くなっていた。そして、弁護士報酬も、その過払い部分から確保できていた。しかし今後弁護士のところに来る依頼者の「減額」は難しくなる。いや、もちろん弁護士のところに来る必要が出てくる、それだけ消費者ローンで困る消費者が減るのだから、社会全体としては良いことなのだが、実際に目の前に来た依頼者に対する防御策(減額策)という点に限れば、破産か民事再生くらいしかなくなるのではないか、と思うのだ。そしてそういう依頼者が弁護士報酬を払う「財源」が狭くなる。まあ、社会全体を考えるとそれで良いのだが、そういう交渉や過払返金訴訟に特化していた弁護士は、業務の再編を迫られるだろうなあ。

 ただ、破産や民事再生は増えるだろうな。米国では年間200万件、日本はまだ20万件(景気回復で減少傾向を示しはじめているが)。米国のようなカード社会ではないとはいえ、今や日本では地下鉄でもクレジットカードで乗れる時代。そして、今回の一連の報道で良かったと思うのは、自己破産等の「武器」が世間により認知されたかな、という点。原則人生で1度キリだが、「再チャレンジ」の機会はちゃんと法律が提供しているんだ、ということを認識して、そう恐れずに自己破産の申立をしてもらいたいものだ。

 社会の流れや法律の流れで、弁護士の仕事が出来たり、なくなったりする。ウチの事務所でいえば、ほんの数年前まであれほど沢山のM&A案件をやることはなかったと思う。法人倒産で培った再編処理能力が生きている訳だが。仕事というものは、どっかでなくなれば別の仕事ができるものではあるが、専門性は勿論なのだが、それとともに何でもできる力も、やはり求められている気もする。