当然の判断
朝日新聞電子版7月11日付
「ローマの休日」など53年に公開された映画の格安DVDをめぐり、米国の映画会社が販売差し止めを求めた仮処分申請で、東京地裁(高部眞規子裁判長)は11日、申請を却下する決定をした。映画の著作権保護期間を50年から70年に延長した改正著作権法(04年1月1日施行)が、ヒット作が多い53年公開作品に適用されるかどうかについての初の司法判断で、申請者が根拠とした文化庁著作権課の見解も否定された。
文化庁の「接着」理論は、はっきり言って不可思議で変であり、どこにも法的根拠がないということを前に申しあげ、何故そうであるにもかかわらず、学説の多く?がこれに従っているのか分からないということを申しあげた(但し前にも書いたが、私自身が手元に日本の著作権の学説本を沢山は持っていないのでちゃんとどういう根拠なのか、本を読み直して書いていないので注意)が、同じ感覚を裁判所も持っていることが明らかになった。
但し、これはあくまで仮処分であり、本案(本訴)で同じ判断が出るかどうかは予断を許さない。
仮処分は、仮に権利があっても、保全の必要性がなければ出されないからだ(但し本件では著作権そのものが正面から否定されたように、少なくとも新聞記事からは読めるが・・・原文を読んでみたいなあ。)。
私も仮処分で負けて本案で勝った経験はいくらでもある。逆に仮処分で著作権があるとされて本案で著作権がないとされた(しかし他のcause of actionで勝ったが)経験もあるが・・・よりによってどこかの誰かの知人がその仮処分と本案を題材に勉強会をするというのを聞いたときは、なんとも悔しかったものだ。あれは、少なくとも部分的には、絶対に著作権があったと思うのだがなあ。
しかし、債権者、パラマウントだよねえ?
米国(デラウェラ州)の有名なM&Aの2つの判例(Paramount v. QVC, Paramount v. Time)でも、いずれも敗者なのだが、これも面白くて、先にQVC相手に負けるのだが、同じ理屈だと次のTime相手では勝ちそうに一見思える事案なんだよねえ。お陰で2つの判例を合わせ読みすると、Unocal & Revlon判決の射程が理解できる(と教えられる)んだけれども、ほんと、注目される裁判に運がないなあ。