藤本大学~徒然なるままに(弁護士ぎーちのブログ)

ぎーち(弁護士藤本一郎:個人としては大阪弁護士会所属)のブログです。弁護士法人創知法律事務所(法人は、第二東京弁護士会所属)の代表社員です。東京・大阪・札幌にオフィスを持っています。また教育にも力を入れています。京都大学客員教授・同志社大学客員教授・神戸大学嘱託講師をやっています。英語・中国語・日本語が使えます。実は上場会社の役員とかもやっていますし、ビジネスロイヤーだと認識していますが、同時に、人権派でもあると思っています。要するに、熱い男のつもりです。

ややこしいかもしれないけど。

ビートルズの元プロデューサーによる女優殺害裁判がまた延期』(「映画生活」、10月13日)
 http://news.mixi.jp/view_news.pl?id=101859&media_id=24

『ロサンゼルス地方検察局が発表した内容によると、クラークソン殺害の罪に問われているスペクターの弁護士側から、裁判を受ける準備にもう少し時間が欲しいと申請があったとのこと。これをロサンゼルス上位裁判所が受け入れ、裁判開始日が来年1月16日から3月5日に延期された。これで5回目の延期となる。 』


 ん、「上位裁判所」っていう訳はありなんか?
 Superior Court of California, County of Los Angelesの訳なんだけど。


 上位と聞けば、日本の高等裁判所に相当するように思うかもしれないが、カリフォルニアでは、この名前で原則第1審、つまり日本の地裁相当である。因みに日本の高裁相当は、Court of Appeal(カリフォルニアで6箇所)であり、最高裁がSupreme Courtである。

 これだけなら単純だが、日本と異なり、アメリカには2つの司法系統、つまり連邦と州がある。今述べたのはカリフォルニア州の裁判管轄。連邦は別途制度を持っていて、地裁相当がDistrict Court, 高裁相当がCourt of Appeals, 最高裁がSupreme Courtである。

 よしわかった、「アメリカ」では最高裁がSupreme Courtなんだな、というと、実はそうではない。なにせ州はカリフォルニア以外にまだ49もあるのだ。例えばNew York州。通常の第一審を管轄するのがなんとSupreme Courtなのである。高裁相当がAppellate Court、そしてNY州の最高裁がCourt of Appealsになる。ややこしい。


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 このようにややこしいが、しかし各州が独自の権限を一定程度持っていることは良いことだ。つまり司法改革を各州が独自にできるし、州で争えるのである。例えば会社法でいえば、ご承知のように先進的な法制度を次々と素早く取り入れ、また州が会社法について通常の民事裁判とは別の裁判体系で専門的に判断する(その結果多数の会社法判例が蓄積された)デラウェラ州は、本当に小さな、人口も資源もない街であるが、にもかかわらず、多くのアメリカの会社はデラウェラ州会社法を設立準拠法として会社を設立するのである。ディズニーだって、本社はカリフォルニアにあるが、カリフォルニア州会社法ではなく、デラウェラ州会社法に基づき会社を設立している。デラウェラに負けるな、といわんばかりに、NYもCAも、次々と面白い会社法を作って切磋琢磨しているのである。逆に、デラウェラ州会社法が慎重を期して他州で採用された買収防衛策に与しなかったこともある。


 日本の道州制導入議論は、どうも行政権(+限定された立法権)に限って議論している気がしてならない。立法や司法の分野でも、各州が相当程度自由にできる、とすればきっとプラスとなる気がする。例えば実験的な立法・司法制度を1つの州だけでやるってこともし易くなる。


 いま、日本では地方にも国にもお金がない。制度の複雑化はコスト増になるかもしれないが、しかし県レベルの行政組織を大幅に削減するという前提に立ち、州に行政権に留まらない自由を与えれば、お金をかけなくても、新しい司法制度で、もしかしたらかなりの活性化をもたらす発想が生まれるかもしれない。そう、会社法で一旗あげたデラウェラ州のように。


 日本って、良くも悪くも均一だから、別に東京に集まる必要はないんだけど、地方を選ぶ必要もないので、なんとなーく均一に東京に集っているような気もする。道州制、やるなら、是非何でもアメリカ追随の安倍政権に、こういうアメリカの司法二重構造システムについても真似てもらいたいものだ。。。ややこしい方がいいことだって、ある。