藤本大学~徒然なるままに(弁護士ぎーちのブログ)

ぎーち(弁護士藤本一郎:個人としては大阪弁護士会所属)のブログです。弁護士法人創知法律事務所(法人は、第二東京弁護士会所属)の代表社員です。東京・大阪・札幌にオフィスを持っています。また教育にも力を入れています。京都大学客員教授・同志社大学客員教授・神戸大学嘱託講師をやっています。英語・中国語・日本語が使えます。実は上場会社の役員とかもやっていますし、ビジネスロイヤーだと認識していますが、同時に、人権派でもあると思っています。要するに、熱い男のつもりです。

夕張市の再建はこれでいいのかなあ。

朝日新聞2006年11月4日付電子版
http://www.asahi.com/politics/update/1104/005.html

 「全国最低の暮らし」の設計――。財政再建団体への転落が決まっている北海道夕張市が、大詰めを迎えた財政再建計画の骨格作りでそんな作業を強いられている。職員の給与や市議の報酬、市民への補助金などを対象に総務省が予想以上の厳しい計画作りを迫っているからだ。初霜が降り、本格的な冬支度に入る夕張で、これから20年余にも及ぶ厳しい再建の試練が始まっている。

 「総務省が言うのは、とにかく全国の最低レベルで行けということ。病院を診療所にするとか、給料を最低にとか、学校を最小にするとか」
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 まあ、詳細は記事を読んで欲しいが、何度も申しあげているとおり、財政規模からしていくら節約しても返せない借金であることは明白なのである。全国最低にしたら「再建」できるなら、すればいい。しかし、そうなのか??

 夕張市の財政規模(一般財政規模)は、せいぜい約45億円である。対する負債は600億円以上と言われる。既に相当に節約をしている財政規模の13倍以上の負債を、簡単に返すことはできない。実際夕張市は、単年度予算で見ると収支はほぼ均衡していた。問題なのは、バブル期の投資(第三セクターなどへの出資)や、人口の急減による、「過去の重荷」が、現在の地方自治体の財政からすれば重すぎる、ということの1点である。自治体の現在の自主努力ではどうにもならない問題なのだ。

 米国倒産法第9章を早急に研究して、自治体が財政規模に見合った再建ができるよう、弁済禁止保全処分や債権放棄などを含めた債務者に「武器」がある再建型倒産法を早急に導入すべきである。

 ここカリフォルニアでも1994年12月、あの「ディズニーランド」が存在するオレンジカウンティが、おそらく世界の自治体でもっとも大きな負債(デリバティブ取引の失敗:これ単独で20億ドルの評価損)を抱えて、米国倒産法第9章の適用を申請した。しかし多くの困難があったものの、たった18ヶ月で再建計画が可決されて債務の整理がされている。多額の負債が発生する原因となった投機の失敗については、それをアドバイスする立場にあったメリルリンチやKPMGほか私人の責任が裁判で問われ、結果的に多額の和解金が自治体に支払われ(メリルリンチは4億ドル(約472億円)、KPMGは7500万ドル(約88億5000万円)など合計8億ドル以上)、再建計画の弁済原資となった。

 私が言いたいのは、債務超過に陥った自治体の早期再建のためには、現在の自治体だけに責任を負わせるのは公平ではないということだ。いまの夕張市が悪いんだろうか??そこに至るまでに、夕張市がああも過激に人口減少し、ああも過大な負債をかかえた、その原因に関与した人も責任を取るべきではないのだろうか。債権のリスケやカットといえば、倒産した自治体が利益を受けるというイメージかもしれないが、貸し手や過去に夕張市を過大評価した人に広く責任を取って貰うというイメージが正しいと思う。

 他方で、債権のリスケだけであれば、今の法制下でも不可能ではない筈である。例えば、あくまで例であるが、将来の倒産法制適用を想定し、債権を500年で弁済するという計画を立てることだって、あり得ないものではないと思う。夕張市は、卑屈にならず、独自に負債の問題を解決するための方策を模索しなければならないし、それこそ夕張市がもっとも頑張るべき点だろう。

 いずれにしろ、自治体の再建型倒産法制の導入、待ったなしである。夕張市を見殺しにしては、いけない。