プライバシーってなんだろう。ネット上での判決掲載から考える。
法曹関係者なら誰でもチェックしている「ボツネタ」を読んでいて、最近最高裁が、当事者からのクレームによって掲載していた判例を掲載しないことにした、ということを知りました。
しかし、判決とは、そもそも公開法廷で読まれるものです。そして、日本でも、知財関係の判例については、基本的に全件(少なくとも東京・大阪地裁・知財高裁係属のものは)ネット上で公開されています。ただ、他の案件では、どういう判例がネット公開されているか、よく分からない。基準が不明確なのだ。
ネット公開される場合、日本では当事者のうち自然人は匿名化されて公開されます。プライバシーへの配慮である。従って我が国で論文などで判例を引用するときは、当事者名を書けないことが多い。単に「最判平成18年2月1日」としか書かないし書けない。
ところが米国では、様子が違う。
例えばニューヨーク州の第1Departmentの判決結果、見ますか?
http://www.courts.state.ny.us/reporter/slipidx/aidxtable_1.htm
もっと見やすい(と思う)カリフォルニア州の判決結果、見ますか?
http://www.courtinfo.ca.gov/opinions/
(UnpublishedとPublishedで頁が違います。注意して下さい)
日本の「常識」で見てしまったら、びっくりです。そうです。今やアメリカでは、裁判は確かに法廷で行われますが、別に「霞っ子倶楽部」化しなくても、ネットでほぼ追えるのです。連邦はまた別ですが、無料です。いわゆる判例集掲載されない裁判例であっても、一定の条件のもとで公開されているのです。そして、当事者名も匿名ではありません。判例を引用する際、日時よりもまず、"Roe v. Wada"と当事者名を挙げるのが普通です。
裁判で提出された書面を全部公開してしまう、といった行き過ぎは良くないでしょう*1。しかし判決結果というものは、その後の紛争解決にとって有益なヒントが詰まっているもの。日本でも、原則全件公開、としてはどうでしょうか。そして、日本では自然人の当事者名は匿名化される。それで十分じゃない??>プライバシーへの配慮も。それを超える利益が、あるような気がします。