藤本大学~徒然なるままに(弁護士ぎーちのブログ)

ぎーち(弁護士藤本一郎:個人としては大阪弁護士会所属)のブログです。弁護士法人創知法律事務所(法人は、第二東京弁護士会所属)の代表社員です。東京・大阪・札幌にオフィスを持っています。また教育にも力を入れています。京都大学客員教授・同志社大学客員教授・神戸大学嘱託講師をやっています。英語・中国語・日本語が使えます。実は上場会社の役員とかもやっていますし、ビジネスロイヤーだと認識していますが、同時に、人権派でもあると思っています。要するに、熱い男のつもりです。

司法試験合格者の5人に1人は就職できないそうです。


 毎日新聞の記事によれば、新旧60期司法修習生約2500名の5人に1人は就職できないそうです(私個人は、弁護士が「就職」という表現には違和感がありますが、今般の記事ではそういう言い方を使います)。また、私の周囲・後輩を聞いても、東大ローや京大ローに行っている人(彼らは逆に従前の東大・京大卒合格者より人数が少ない為か、かなりもてはやされているようです。内定複数持ちは当たり前のようですね。)を除けば、かなり厳しい状況にあるようです。

 私が弁護士になった2001年当時、最初から独立したかった人を除けば、誰もが法律事務所に入れました。勿論、希望の事務所に入れない人はいっぱいいましたが、それでも食いっぱぐれるということはありませんでした。たった6年で、時代は大きく変わりました。


 ただ、考えてみれば、司法試験突破したらまず間違いなく働けていたことの方がおかしい訳です。


 司法試験の合格率はかつて2%でした。そして、司法試験合格者が研修を行う「司法修習」の最後に待っている「2回試験」という卒業試験の合格率は、99.9%程度(合格留保者が数人から十数人いる程度)でした。そのような司法試験のみに頼る選抜スタイルは、1点突破主義で駄目だという批判が強かったのです。それが、

 ロースクール入試
 ロースクールの授業と定期試験
 司法試験(昨年の第1回新司法試験では48%の合格率。カリフォルニア州とほぼ同じ)
 2回試験(最近は合格留保率(追試)が7%程度になり、完全な不合格も1%以上出始めました)
 弁護士事務所への採用


 と、複数の選抜を経ていくことになった訳で、まさに、当初から予定されていた「点から線へ」移行したに過ぎません。


 例えば他の職業を考えてみて下さい。俳優や女優のオーディションに合格したとしても、その職業で売り込めるだけの容姿や魅力がなければ、すぐ駄目になってしまうわけです。弁護士だけ、司法試験に合格したら後は安泰というのでは、おかしくなります。


 今働いている事務所で話を聞くと、学歴社会の色彩がより強いアメリカでは、中堅ロースクール以下に通う学生は、基本的にかなり就職が厳しいそうです。アメリカでは、普通は1回生終了後の夏に行われるサマージョブで就職口を見つけるのですが、私が聞いた中堅ロースクールでは、そのサマージョブにそもそもいけない人が多数いるとか。従って、そもそも司法試験を受験せずに別の世界に行く人もいれば、合格しても弁護士事務所に行かない人も多数います。全米の統計で見ても(詳しくは私のWebsiteの「大胆予測、2025年の日本の法曹界」をご覧下さい)、実はロースクールに3年通った人の半分以下なのです、法律事務所に就職する人は。日本でも、合格率2%という制度はやめた訳ですから、その反動として、合格=少なくとも弁護士として働ける、というのは崩壊して当然なのです。


 厳しい言い方ですが、司法試験合格だけでは弁護士として活躍できない世の中になった訳ですから、この点も踏まえて、ロースクールを選び、また自己を鍛えていく他にないと思います。また、何故弁護士になりたいのか、弁護士として何がしたいのかが、厳しく問われるのでしょう。


 ・・・勿論、厳しく問われるのは新人弁護士だけではありません。もはや「弁護士」というだけでは「優秀」な証拠にはならない訳ですから、既存の弁護士も、この競争に勝ち残った新人弁護士に負けないよう、厳しい鍛錬を続けて行かねばならない訳です。私もがんばろー。