藤本大学~徒然なるままに(弁護士ぎーちのブログ)

ぎーち(弁護士藤本一郎:個人としては大阪弁護士会所属)のブログです。弁護士法人創知法律事務所(法人は、第二東京弁護士会所属)の代表社員です。東京・大阪・札幌にオフィスを持っています。また教育にも力を入れています。京都大学客員教授・同志社大学客員教授・神戸大学嘱託講師をやっています。英語・中国語・日本語が使えます。実は上場会社の役員とかもやっていますし、ビジネスロイヤーだと認識していますが、同時に、人権派でもあると思っています。要するに、熱い男のつもりです。

大阪弁護士会会員へ・・・特定公益活動についての新情報


 大阪弁護士会における特定公益活動についての新情報について、皆様にご報告したいと思います。


 今までの記事については、
http://d.hatena.ne.jp/attorney-at-law/20070512/1178931913
http://d.hatena.ne.jp/attorney-at-law/20070212/1171271404
をご覧下さい。


 我が事務所の弁護士、特にパートナー弁護士(経営者弁護士)は、(東京の事務所と比較してどの程度か、というのはよく分からないのですが、)本当に忙しく仕事しています。しかし、私の疑問について、某パートナー弁護士自らが、日本にいない私に代わり調べて下さいました。勿論私にチャージされることはないと思いますが(苦笑)、私宛に意見書を2通起案して下さっています。マトモな対応を余り期待していなかったのですが、正直、嬉しいです。


 さて、前回までに私が述べてきたことについて、簡単にここでおさらいします。


(1) 大阪弁護士会では、今年度より、法律相談・国選弁護・委員会活動などの「特定公益活動」のうち1つを履行することを会員に義務づけることとなり、これを怠った場合は、罰則(6万円の負担金)が課せられることになりました。


(2) これらの「特定公益活動」は、いずれも、日本または大阪にいなければ履行不可能な内容ばかりです。


(3) これらの「特定公益活動」には、「みなし履行」(特定の地位にあることによって、公益義務を果たさなくても良いとするもの)や「義務免除」の規定があるのですが、海外留学者については、何ら免除規定がありません。つまり、私が今年度1年間留学し続けた場合、履行可能性がないのに、債務不履行として、罰則が課せられることになります。


(4) なお、留学前の2001年度から2005年度(2001年度は10月以後、2005年度は4〜6月のみ大阪で弁護士活動を行った)について、この「特定公益活動」義務を仮にあてはめてみると、いずれの年度においても、私は特定公益活動義務を履行したといえるだけの公益活動を、十分過ぎるほど行っています(無罪事件を含む国選弁護活動、弁護士会委員会活動、弁護士会等における法律相談、等)。しかし、これはだから誇れるというレベルではなく、ここで定められている「特定公益活動」の内容が大阪にいさえすれば困難な内容ではありませんので、当然の結果だと思っています。


(5) 私は、規定に留学者について、代替措置も免除規定もともにないのは問題だと考えて、何らかの行動を起こそうと考えており、現時点において、大阪弁護士会の担当部署宛に、「義務免除申請」を行っていますが、担当役員からは、免除される可能性がないとして、取り下げるよう勧められている状態です。


・・・


 さて、今回、某パートナー経由で取得した情報をもとに、皆様にお届けしたい情報は、(1)他の日本の弁護士会はどうなっているか、(2)何故大阪弁護士会が海外留学者について、何ら代替措置も免除規定も設けていないのか、(3)それに対する私の私見です。


 まず、(1)他の日本の弁護士会ですが、同様の「特定公益活動の義務化」については、東京弁護士会・第1東京弁護士会、第2東京弁護士会が規定しており、いずれの会においても、海外留学を、かかる「特定公益活動」義務の免除事由と明確に規定していることが判明しました。


 この点は、前回の記載に対し東京の弁護士の方からも指摘頂いた次第ですが、大阪弁護士会でも、このことを認識しながら、敢えて大阪弁護士会では、海外留学を義務免除事由から外したことが分かっています。


 じゃあ、(2) 何故、大阪弁護士会では、海外留学者について、特定公益活動義務を免除しなかったのでしょうか。


 この点については、平成18年7月31日付「弁護士会の指定公益活動への参加義務強化に関する答申書」(大阪弁護士会、同会公益活動検討特別委員会)の14〜15頁に記載があります。


 『やむを得ない事情から、その年度に、弁護士会の公益的活動を分担することが難しく、また、その代替負担を求めることも適切ではない場合は、義務を免除することが必要である。
 東京3会で定められている義務免除規定なども参考にしながら、①義務履行を一律に強制することが相当でないこと、②義務履行が困難であること、③その職務に公益性があることなどを基準にして、当会では、つぎのとおりとすべきである』

 という原則論を展開し、5つの場合について義務免除とすべき、としています。5つとは、
(1)満65歳以上の会員、
(2)疾病・出産・育児・介護等により指定公益活動に従事することが困難と認められる者、
(3)司法研修所教官
(4)任期付き公務員
(5)国会議員
です。なお、この(2)の部分において、留学者は該当しないことについて次のような説明があります。


『なお、海外留学や海外勤務その他の理由により国内に居住しない者について、第二東京弁護士会東京弁護士会では、義務免除事由としている。しかし、海外留学や海外勤務は、会員の意思にもとづいて選択した活動形態で特に公益性があるといえず、多忙ゆえに公益活動を履行できず公益活動協力金を支払うこととなる会員と比較して、義務免除する理由に乏しいので、義務が履行できないときは代替負担としての公益活動協力金の納入を求めることとした』


・・・

 んんん・・・、海外留学者等は、日本にいながら、「多忙ゆえに公益活動を履行できず公益活動協力金を支払うこととなる会員」と同じレベルですか・・・。全くもって、無意味な比較ですね。だって、3要件(①強制が不適当、②義務履行が困難、③公益性)でこの2者を比較してみても、多忙だというのと、海外留学というのは、仮に③の点で全く同一に評価されるとしても、①と②では、レベルが異なると思いませんか??多忙でも日本、特に大阪で実務を行っているのであれば、前々から述べているとおり、この「特定公益活動」の履行は決して困難ではありません。海外留学者は、これらの「特定公益活動」が日本または大阪に存在していることを前提に義務化されているから履行が困難なのであって、これと、多忙だが大阪で仕事している人が、②困難性において同一である筈がありません。また、①不適当かどうかという点でも、留学や海外での勤務の場合は、大阪で弁護士活動をしていない訳ですから、多忙だが大阪で仕事している人と比べて、より強制が不適当といえるといえると思うのですが・・・。


 更に、大阪弁護士会が自ら3要件を指摘しながらも、今回免除となった5類型のうち、(1)65歳以上、(2)出産等の場合は、③特段の公益性がないことは明らかです。つまり、海外留学者について、「会員の意思にもとづいて選択した活動形態で特に公益性があるといえず」という理由付けではねられてしまうことについて、65歳以上や出産等の場合と比べ、均衡がとれているとはいえないと思うのですが・・・・。


 また、海外留学者について、「義務が履行できないときは代替負担としての公益活動協力金の納入を求めることとした」としている点も、大いに不満です。要するに、代替措置はお金でしか考えられていないのです。一般的な弁護士の留学は1〜3年で終わる訳です。留学前後に何らかの汗をかかせることや、海外で一定の報告書を求めることなど、他にいくらでも代替措置は可能だと思うのに、お金で済ませろと弁護士会に言われるのは、屈辱でしかありません。また、前も述べましたが、弁護士である地位に対し、留学中であっても、「多忙ゆえに公益活動を履行できない」大阪在住の弁護士と同じだけ、通常の弁護士会費(月額4万5000円前後)を支払っている訳です。この金銭負担の中には、既に特定の公益活動に対する支援金も含まれている訳で、殆ど大阪で経済活動を行っていない留学中の弁護士に対しても、同様に「負担金」で解決させてしまおうというのは、いかにも弁護士の留学に配慮がない対応だと言わざるを得ないと思います。


 報告書を読む限り、大阪弁護士会の対応は、留学者を「多忙ゆえに公益活動を履行できない」弁護士と同じレベルと「見下している」としか言えないと感じました。そんな風に考える弁護士会は、本当になんというか、心が狭いと感じます。弁護士の多様性が求められる中で、大阪弁護士会は、「あるべき弁護士像」について、非常に狭い視野でしか、考えていないことが明白です。


 この「特定公益活動」が高いレベルの義務を定めているなら、分かるのですが、「特定公益活動」義務自体、何度もいうように、日本または大阪にいさえすれば、そんなに難しいことじゃないのです。弁護士会の法律相談1回すれば履行したことになるそうです。弁護士会の委員会も年間3回出席すれば履行したことになるそうです。そんな適当な義務を定め、留学以外は広範なみなし履行や義務免除を定め、留学者には、金銭納付という罰金以外の「代替措置」を認めないのが、公平な取扱いなのでしょうか。「弁護士も公益活動やっています」という「表面」だけ繕うために、留学者が犠牲になっていいのでしょうか。この報告書を読んでも、全く納得できませんでした。


 ・・・ということで、新たに何らかのアクションを起こすつもりです。


 現在・将来において留学する大阪弁護士会会員のみなさん、あるいは、そうではないが、この「特定公益活動」義務の規定の仕方に疑問を頂くみなさん、大阪弁護士会を、diversityに溢れた、開かれたものにするためにも、引き続きご支援の程、宜しくお願いします。特に留学中・留学予定の方は、一緒に行動する方が良いと思いますので、よろしくです。