藤本大学~徒然なるままに(弁護士ぎーちのブログ)

ぎーち(弁護士藤本一郎:個人としては大阪弁護士会所属)のブログです。弁護士法人創知法律事務所(法人は、第二東京弁護士会所属)の代表社員です。東京・大阪・札幌にオフィスを持っています。また教育にも力を入れています。京都大学客員教授・同志社大学客員教授・神戸大学嘱託講師をやっています。英語・中国語・日本語が使えます。実は上場会社の役員とかもやっていますし、ビジネスロイヤーだと認識していますが、同時に、人権派でもあると思っています。要するに、熱い男のつもりです。

菊間アナの決断

スポーツニッポン電子版2007年12月7日付
「菊間アナがフジ退社、司法試験に専念」
http://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2007/12/07/01.html

フジテレビの菊間千乃アナウンサー(35)が同局を退社することが6日、分かった。親しい同局関係者や番組で共演したタレントらに報告を始めている。アナウンサー業のかたわらで司法試験の勉強を進めており、今後は勉強に専念するとみられる。
 菊間アナは親しい同局関係者や、かつて番組で共演したタレントらに、これまでの感謝を記したお礼状に記念品を添えて送付。退社についての報告を始めている。

 早大法学部出身で、最近は司法試験の勉強にも力を入れていた。親しい関係者は今後について「新しい人生を切り開きたいという思いが強く、司法試験も勉強に専念して合格を目指したいようだ」とみている。

(関連)
日刊スポーツ電子版2007年12月8日付
「フジ菊間アナ退社へ、法律の勉強に専念」
http://www.asahi.com/culture/nikkan/NIK200712080007.html

朝日新聞電子版2007年12月7日付
「フジの菊間アナが退社へ 大学院での勉強に専念」
http://www.asahi.com/culture/news_entertainment/JJT200712070002.html


 いくつか思う事がありますので、最新のニュースではないですが、ちょっと書いてみたいと思います。


 まず第1。
 フジのアナウンサーの中では結構好きな方でした。この波瀾万丈な人生自体もおもろくて良いです。こういうタイプは私は大好きです。
 ウチの事務所に来てくれませんかね?我が事務所はコネ採用はしませんので同じように選考しますが、取りあえず司法試験の受験が終わったら連絡欲しいなあ。
 ・・・と書いておけば、どっかで本人が見てくれるかも!?という淡い期待をもって、メモメモしておきます。応援していますー。


 第2。
 菊間アナに限らず、弁護士を目指すという人生の決断をするために、何かを捨てるという選択をせざるを得ないという場面は、きっとよくある話だと思います。私なりに、その決断についてちょっと思う事を書いておきたいと思います。

 
 まず、お金で考えたら、絶対後悔すると思う、という点をはっきり書いておきたいと思います。
 似ている他の職業を一生懸命考えたのですが、この点だけに限れば、教師が似ているかも知れません。昔は、教師は尊敬を集める職業の第一だったと思いますが、いまはその点ではそうとは言えないと思います。しかしそれでもなりたい人が沢山いるのは、教師という職業そのもの、給料じゃなくて、その職そのものに憧れ、やりたいと思うからではないでしょうか。
 弁護士は、人間であって機械ではないので、いくらタイムチャージを高くしても、人間の時間は有限ですから、お金稼ぎには向かないです。また、お医者様と異なり、「国民皆保険」といった国による「生活保障」が弁護士の世界にはないので、日本に27万人もいるお医者様の方が、日本に2万数千人しかいない弁護士より絶対に儲かります。


 とはいえ、教師と全く同じではないんですよね。教師は公立学校というのがあって、そこでは、少なくとも営業を意識せずに仕事できます。学校がお給料を「守って」くれます。しかし弁護士は、いわば、塾の先生のように、自分の名前で広い意味の「営業」をしなければいけません。弁護士事務所は、個々の弁護士の雇用を守ってくれはしません。そして、弁護士は人と話すのが仕事ですから、当たり前ですが、いろいろな人とコミュニケーションが取れないといけないわけです。つまりは、ときどき大学生でいる訳ですが、「就職活動とか面倒だし試験通れば仕事できる司法試験⇒弁護士で生きていこう」とかいうのは、まずい訳です。特に、司法制度改革以後、弁護士の生活は益々厳しくなっていますので、そういう方は、司法試験合格後の弁護士事務所探しで大いに苦労されると思います。


 タレントと似ている部分もあるかもしれません。
 そう、万人受けしなくても生きていける訳です。1つギャグが当たればそれで生きていけるようなものです。清純派女優はそんな一発屋系のギャグを言う必要がないのと同じです。深田恭子が江頭二時五十分と同じ事をする必要がないのと同じです。自分の専門、自分に合う顧客をしっかりかかえればやっていけます。でもでも、タレントと同様、どの分野でも当たらなければ、厳しいことになる訳です。時代の流れというのもあります。消費者金融業者への借金に関する利息制限法を超過する「過払い」の返還で、一部の弁護士の懐はえらく潤ったようですが、法改正でこのような需要がまもなくなくなることは目に見えており、これだけで儲かっていた弁護士はえらいことになるかもしれません。


 その辺をよおく考えて、適正があると思える人が、この世界にあつまったら、きっと楽しいと思います。勿論、職人として、ずっと努力をしていかなければならないのは辛いことですが、それは他の業種でも一緒でしょう。人生、ラクというものはないだと思います。まさか日本の司法試験に受かった時に、更に2度司法試験に受からなければならないなんて、私も思いもしませんでしたが、そんなものです。一生勉強、まだまだ色々な関門が私を待っているのだと思います。辛い気持ちもありますが、わくわくする気持ちもあるわけです。


 第3。
 とはいえ、人生の選択って、特に既に立場ある人がなんか捨てるって、大変だと思います。
 菊間アナだって、最初からアナウンサー辞めて弁護士になろうと思った訳ではないと思います。何故なら、彼女は大宮法科大学院という、要するに仕事しながら勉強できる大学院に行っているからです。合理的に、アナウンサーと法曹を「天秤」にかけ、やっぱり法曹が良いと熟考の末決断したのだと思います。


 ところが、人生の選択をするときに、この熟考をせずに法曹を目指してしまう方が時々います。人生には保険、詰まり、ダメだったときの別の選択肢を残しておくという技を使う必要だって、時にはあります。なんちゅうか、合理的選択をせずに全てを捨てて目指す、というようなことは、やらんほうが良いように思います。特に昔と違い、弁護士になっても生活は保障されていませんので。。。


 眠い中だらだらと書きましたが、要するに、菊間さん、頑張って下さい!
 法廷か、事務所でお会いしましょう!