藤本大学~徒然なるままに(弁護士ぎーちのブログ)

ぎーち(弁護士藤本一郎:個人としては大阪弁護士会所属)のブログです。弁護士法人創知法律事務所(法人は、第二東京弁護士会所属)の代表社員です。東京・大阪・札幌にオフィスを持っています。また教育にも力を入れています。京都大学客員教授・同志社大学客員教授・神戸大学嘱託講師をやっています。英語・中国語・日本語が使えます。実は上場会社の役員とかもやっていますし、ビジネスロイヤーだと認識していますが、同時に、人権派でもあると思っています。要するに、熱い男のつもりです。

33%は何を示すか?


 昨日、法曹養成法科大学院協力センターという弁護士会の委員会に出席しましたが、そこで第3回新司法試験の結果について詳細な分析データが配布されました。


 最終合格率は対受験生比で32.98%ということで、1回目の約48%、2回目の約40%と比べると、大きく低下しているように見えます。合格者数は2065名で、「目安」とされていた2100〜2500名を下回りました。試験は難化したのでしょうか?


 この第3回目の合格者の中で、第1回目の受験で、かつ、既習者である場合に絞ると、合格率は51.32%となります。そもそも、第1回目の新司法試験は、第1回目の受験で、かつ、既習者しか受験していません(第1回目は、法科大学院を2年間で卒業する人しか受けられなかった)ので、第1回目との難易度を比較するには、母集団の条件を揃えるため、この第3回目のうち、第1回目の受験かつ既習者の方の合格率に絞らないと、比較になりません。それで比較すると、第3回目は、これでも第1回目よりも易化(約48%⇒約51%)したことが分かると思います。


 もう1つ面白いのは、第2回目の新司法試験の際は、既習者と未習者との合格率の差が、約13.7%(既習者合格率46.0%、未習者合格率32.3%)であったのに、今回第3回目は、約21.8%(既習者合格率44.3%、未習者合格率22.5%)と、大きく拡大していることです。つまり、特に未習者を中心として、3年勉強しても司法試験に合格する力のつかない人が増加していると言えます。


 このように、新司法試験は、期待する程合格者を出せない状況にあり、見かけの合格率は低下していますが、1回目と比べても難化した訳ではなく、むしろ易化しており(更に、これは客観的データからは証明できませんが、一般的な感想として、1回目は、新司法試験の最初ということで、特に優秀な学生が新制度にチャレンジしていたという事情もあります)、合格率の低下は、そもそもマトモに勉強することができない人、又はマトモに教育することができない大学の増加によりもたらされているだけであると言うことが言えると思います。


 新司法試験は、旧試験以上に勝ち組と負け組を明確にする試験だなあ、と感じます。
 学校側にマトモに教育する目途もなく、または生徒側にマトモに受かるだけの能力もないにもかかわらず、未習3年に受け入れられてしまう学生が可哀想な気がします。特に第5回新司法試験合格者以降は、司法修習生の給料もなくなり、一層の経済的負担が予想されます。未習全体としての合格率が極端に低下した事実から、ますます法学部卒以外からの人材の受入が難しくなり、旧試験以上に、「多様な人材」を受け入れることが難しくなるなら、何のための法科大学院&新司法試験という制度変更だったのだろうか、ということになりかねません。