藤本大学~徒然なるままに(弁護士ぎーちのブログ)

ぎーち(弁護士藤本一郎:個人としては大阪弁護士会所属)のブログです。弁護士法人創知法律事務所(法人は、第二東京弁護士会所属)の代表社員です。東京・大阪・札幌にオフィスを持っています。また教育にも力を入れています。京都大学客員教授・同志社大学客員教授・神戸大学嘱託講師をやっています。英語・中国語・日本語が使えます。実は上場会社の役員とかもやっていますし、ビジネスロイヤーだと認識していますが、同時に、人権派でもあると思っています。要するに、熱い男のつもりです。

中国専利法の改正

 知財関係者、中国法関係者はご承知のように、昨年12月27日の全国人民代表大会常務委員会で、改正専利法(我が国の特許法・実用新案法・意匠法に相当)案が可決され、2009年10月より施行されることになりました。


 もう少し時間がかかるかな、と思っていたのですが、意外とあっさりと決まったというのが率直な印象です。


 変更点と条文は、こちらから(中国語)。


http://www.npc.gov.cn/npc/xinwen/lfgz/2008-12/27/content_1465318.htm


 主たる旧法との比較での変更点は、次の通り。


(1)22条の新規性に関する要件。即ち、従前は、海外刊行物に掲載されることによる新規性喪失は認められていたが、その他の手法による海外での新規性喪失は認められていなかったところが、新法では、刊行物に限らず、海外で公知となれば、新規性喪失が認められることになる。


(2)国内出願前置主義の廃止(20条)。即ち、従前は、中国で発明・考案された専利はまず中国で出願しなければならなかったのですが、先に海外出願をすることができるようになりました。但し、先に国務院の専利行政部による秘密審査を受ける必要があるとなっていますので、実態は余り変わらない可能性があります。


(3)いわゆる権利濫用抗弁の部分的実現(62条)。従前、侵害訴訟を提起された被告が、当該専利権を無効であると思料する時であっても、別途行政手続でその有効性を争わなければならなかったのですが、新法では、当該専利権の新規性については、直接侵害訴訟において争うことができるようになりました。


(4)損害賠償計算方法の変更(65条)。旧法(旧60条)では、権利者の逸失利益又は侵害者の得た利益の選択であったのが、我が国同様にまず権利者の逸失利益が原則とされ、これが困難である場合に、侵害者の得た利益により逸失利益と見なす方式に変更された。また、これらの方法等により損害賠償額を確定することが困難である場合、裁判所が裁量的に1〜100万元の損害賠償を命じることができるとされたが、これは旧法の規則との比較(上限は50万元)では、裁量賠償額が増えることとなった。


(5)指定専利代理機構制度の廃止(19条)。旧法(旧19条)では、中国国内に常居所のない外国人・外国法人は、国務院専利行政部門が指定する専利代理機構に委任しての出願しか認められず、国内と国内の専利代理事務所での出願業務の報酬差が生じていたが、新法では、常居所のない外国人・外国法人でも、どの専利代理機構に委任しても良いこととなった。但し、代理人を用いずに出願することは、引き続き外国人・外国法人については認められていない。


 その他、国際条約への対応や、強制実施に関する規定の増加など、様々な変更があり、また、これに伴い、実施細則も制定されるであろうことから、更に細部の変更については、実施細則の制定を待たねばなりません。その公表が待たれます。


 中国では、今後、商標法と、反不正当競争法(我が国の不正競争防止法に相当)の改正も予定されており、中国知財の動向に注目です。