藤本大学~徒然なるままに(弁護士ぎーちのブログ)

ぎーち(弁護士藤本一郎:個人としては大阪弁護士会所属)のブログです。弁護士法人創知法律事務所(法人は、第二東京弁護士会所属)の代表社員です。東京・大阪・札幌にオフィスを持っています。また教育にも力を入れています。京都大学客員教授・同志社大学客員教授・神戸大学嘱託講師をやっています。英語・中国語・日本語が使えます。実は上場会社の役員とかもやっていますし、ビジネスロイヤーだと認識していますが、同時に、人権派でもあると思っています。要するに、熱い男のつもりです。

今更ながら臨時総会の概要


 臨時総会の議事録が日弁連HPに掲載されていたという情報を得まして、リンクを貼っておきます。会員専用ページでなさそうなので、皆さんご覧頂けるようです。

http://www.nichibenren.or.jp/jfba_info/organization/event/soukai/soukai_160311.html

http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/jfba_info/organization/data/160311.pdf

私の修正動議(第三案)については、このPDFの28頁あたりからです。

藤本一郎会員(大阪)
「順番が逆になったが、4番目に第3案を提案する。
 第1号議案に対する修正である。
 修正したいことは2点ある。
 1点目は趣旨説明、第1号議案の第4段落、推進会議決定の引用部分である。執行部案の「当面1,500人程度」と書かれている部分は引用が不正確である。私の修正動議の内容は、カギ括弧の「当面1500人程度」という部分を「直近でも1,800人程度の有為な人材が輩出されてきた現状を踏まえ、当面、これより規模が縮小するとしても、1,500人程度は輩出されるよう、必要な取組を進め、更にはこれにとどまることなく、関係者各々が最善を尽くし、社会の法的需要に応えるために、今後もより多くの質の高い法曹が輩出され、活躍する状況になることを目指すべき」、これを引用してもらいたいというのが1点目である。
 2点目は次の2ページの3点である。一つ目は、司法試験合格者数である。先ほどの推進会議決定を踏まえたならば、「司法試験合格者数が年間1,500人以上輩出されるようにし、かつ、現在の年間1,800 人の水準を十分考慮し、急激な減少をさせない」ということになる。そして二つ目は、法科大学院と予備試験のことである。執行部案はいろいろと書いてあるが、何が一番重要かというのがよく分からない。「法科大学院制度について奨学金をより一層充実させ、予備試験制度については制度趣旨を踏まえた運用とする。」と、この点を変えていただきたい。
 3点目については請求者案と同じである。司法修習については、明確に給費制の復活を求めるという修正をさせていただきたい。

 理由の要旨については皆様に配っているが、一言で言えば、私たちが考えたいのは、現在の我々の法曹、これも大事であるけれども、「将来像、未来」である。執行部案、請求者案、一生懸命考えていると思う。しかし、これがこのまま可決されてしまうと、将来の法曹志願者に、一体合格者がどうなるのかと、不安を与えることは間違いない。
 先ほど執行部は、志願者増のためにパンフレットを作ったと述べた 。パンフレットで志願者が増えるのか。請求者はお金と述べた。確かにお金も大事である。ただ、一番大事なのは何か。我々法曹が、弁護士が、後輩に対して来てほしいという真摯なメッセージを伝えることではないか。是非とも、当職が提案させていただく修正動議について、まず審議をお願いしたい。」

・・・

 議長が、修正動議の成立について議場に諮ったところ、出席会員50名以上の賛成が得られたため、動議が成立した。議長は、修正案及び原案の採決の先後につき説明し、討論を再開する旨宣した

藤本会員

「先ほど動議の内容については説明したとおりであるが、主要な内容だけ確認させていただく。「合格者数について年間1,500人以上輩出されるようにし、かつ、現在の年間1,800人の水準を十分考慮し、急激な減少をさせない」というのが一つ目。
 二つ目が法科大学院の教育の質を向上させるとともに、「法科大学院制度について奨学金をより一層充実させ、予備試験については制度趣旨を踏まえた運用とする。」
 三つ目は第2号議案と同じで、修習費については給費制の復活を求める。

 以下、修正動議提案の理由の要旨を説明する。

 最初に、執行部案について、私は、正直申し上げて、「まず早期に」という言葉が付いていなかったら、こんな動議は出さなかった。「まず早期に」という言葉はどこから出てきたか。執行部案は、政府の法曹養成制度改革推進会議の決定を先ほど申し上げたとおり不適切に引用している。その会議が1,500人というのを、確かに入れたわけだけれども、まるで認めたかのようにしている。
 我々としては世間の要請も十分考慮すべきだし、現に3,000人合格だといって法科大学院に来た人がいっぱいいる。そういう人たちに対して、さらに一体どうなるか分からないという減員策を示すというのは非常に問題がある。少なくとも去年の政府が決めたこと、この範囲では、しっかりやるということを示すことが重要ではないかと考える。

 次に1,500人の在り方であるが、理由要旨の2であるが、司法試験合格者数は法曹志願者にとって、将来自分が司法試験に合格して法曹になれるかどうか。これを示す大事な要素である。私たちは現在の法曹として、法曹志願者に対し、将来の司法試験合格者数がむやみやたらに減少するものではない。ちゃんと頑張れば司法試験を突破できるという安心感を与えてあげる必要があると考えている。私自身54期である。旧司法試験で初めて1,000人合格、丙案と呼ばれていた時代である。私が大学に入学したときに11回生がいて驚いたことがあった。当時、京都大学には4年休学4年留年という制度があり、しかも休学は任意に行ったから、12年京都大学に在籍することが可能であった。何で11回生な
のかと聞いたら、司法試験に受からないと。長期にわたり不合格が続く。そういう先輩、友人を記憶して
いる。そういった、点による勝負はまずいという批判から司法試験制度改革がスタートしたことは皆様の記憶にも新しいところではないかと思う。
 そのため、第2号議案の1,000人合格への削減というのは反対である。
 また第1号議案の執行部案、「まず早期に」という言葉が大変気になる。早期に、まずということであれば、近い将来、更なる削減を予定しているということは明らかである。しかもその削減幅が幾らか分からないというのがこの執行部案のポイントである。1,000人かもしれない、800人かもしれない、1,200人かもしれないという状況の中で、いくらすばらしいパンフレットを作っても、法曹志願者が本当に集まるか。司法試験合格者数はこの9年間、1,800人以上で安定して推移してきた。しかし、
これをまず早期に1,500人とすれば、法曹志願者に対し、将来一体どこまで門戸が狭くなるのか。その予測可能性を奪うことになり、将来に対する悪いメッセージを残すのではないかと危惧している。
 第1号議案はもちろんすばらしい点もあるが、結局のところ、法曹志願者の志願意欲を減退させ、法曹志願者数を更に減少させることになり、優秀な人材が法曹に集まらなくなる。その結果として法曹の質的な低下をもたらす危険な議案ではないかと考える。
 ゆえに私たちは、1,500人というのは上限ではなく、「現在の法曹需要を考慮した下限である」ということを明らかにしたい。これ以上、現在・将来の法科大学院生を含む法曹志願者に対してネガティブキャンペーンをするのはやめにしないか。
 法科大学院の学生は一生懸命勉強している。私も三つの法科大学院で教えている。法曹志願者が減っている中で、あえて苦難の法科大学院にやってきた、あるいはあえて予備試験に挑戦して合格した彼らに、
更に門戸を狭くするような決議、今ですら先ほどあったとおり、法科大学院の入学者数は2,200名、適性試験受験者数もかなり少なくなっている。そんな状況で更に追い打ちをかけるような、門戸を狭くするような決議をする。このことが我々法曹の先輩としてなすべきことなのか。
 
 3点目に移る。法科大学院奨学金と予備試験について、確かに法科大学院にお金が掛かるのは事実である。また法科大学院に通う時間がない方がいる、これも事実かもしれない。ただ現状、これは執行部の説明にもあった、予備試験は実は半数が大学生や法科大学院生の合格者である。単なる就活のツールとなっている。法科大学院の成績が悪い人が一発逆転を狙って、予備試験に合格したらうまく採用してもらえるだろう。こういった制度になっている面が少なくとも一定程度ある。予備試験を何らの制限も付さないというのは、本来、予備試験に合格してほしい人をむしろ予備試験から遠ざけ、法曹の裾野を狭くしている。他方、法科大学院での学業に専念できる環境を整備するためには、在学中の経済的負担をできる限り軽減する制度を構築することが必要不可欠である。特に一層の法科大学院生に対する奨学金の充実、こ
れを質の強化よりも前にまず、うたうべきであると考えて提案する。

 最後に給費制についても触れる。将来の法曹志願者に安心して司法試験を目指してもらうためには、法科大学院のみならず、司法修習の間の経済的負担を軽減させることも非常に重要である。給費制の復活はその基礎となる。給費制の廃止は、もともと年間3,000人合格を想定して人われてきたものである。今の合格者数は、当初であっても1,500人から1,800人、現状も1,800人であり、旧司法試験の末期と比べると大差がない。旧司法試験は1年6か月であった。ということは、1年の修習であれば、その1.5倍入っても同じお金でやれるはずである。そうすると給費制の復活は不可能ではないはずである。
 第1号議案、給費制に代えて新たな給付制度を求めるという現実路線をとったものであると考える。しかし、日弁連の要請として、現時点で初めからそのような妥協路線でいいのか。明確に「給費制の復活」を求めるべきでないか。

 以上、述べたように、法曹人口の問題、あるいは経済的支援の問題、これらは全部、法曹志願者の急減の問題と結び付いている。当職の修正案について、是非議論をよろしくお願いする。」


 河崎健一郎先生の、上記第三案に対する賛成(留保付ですが)討論は、PDFの36〜39頁(恐らくこの日の全ての演説の中でもっとも心を動かす素晴らしいものでした。)、多田猛先生の賛成討論は、PDFの43〜44頁にあります(こちらも勇気づけられるものでした。)。

 あと、総会時に話題となったイノシシ討論をされた尾関先生(請求者案に賛成)のご意見は33〜34頁であり、おなじみの高山先生のご意見(恐らくは請求者案に賛成?)は40〜42頁です。


 ご覧頂ければ分かると思いますが、大幅な司法試験合格者の減少を主として論じた請求者案への賛成討論、執行部案への賛成討論、それぞれ、「色」があると感じるでしょう。会場にいたときは、その「色」をものすごく感じました。そして、僕らほど、未来を明るくしようという観点で意見を述べたものはいなかったと感じました。つまり、多数派ではなかったかもしれないけれども、一番輝いている「色」は僕らだったと自負しています。


 私たちが一石を投じたつもりであった時から、時間ばかりが過ぎてしまい、「次の一手」がうまく打てていない状況にありますが、日々の中で、この法曹の世界をより良く、またより楽しくしていく努力は重ねているつもりです。