藤本大学~徒然なるままに(弁護士ぎーちのブログ)

ぎーち(弁護士藤本一郎:個人としては大阪弁護士会所属)のブログです。弁護士法人創知法律事務所(法人は、第二東京弁護士会所属)の代表社員です。東京・大阪・札幌にオフィスを持っています。また教育にも力を入れています。京都大学客員教授・同志社大学客員教授・神戸大学嘱託講師をやっています。英語・中国語・日本語が使えます。実は上場会社の役員とかもやっていますし、ビジネスロイヤーだと認識していますが、同時に、人権派でもあると思っています。要するに、熱い男のつもりです。

あなたはもしかして・・・

 New York州司法試験を通った後あたりから、ときどき、「あなたはもしかして、国際弁護士ですか?」と聞かれることがあります。


 なんですか?国際弁護士?そんな資格ありますか????


 調べてみると、私の母校UCLA, School of LawでおなじくLLM programを修了された先輩である湯浅卓というNew York州弁護士の方が使い始めた言葉のようです。テレビにも出ておられるみたいで(私は見たことがありませんが)。


 しかし、これは私には違和感のある言葉です。

 
 医者も国別で医師資格が定まっていますが、しかし活用する知識そのものは、全世界でほぼ共通です。肝臓や腎臓の位置が日本とアメリカで違ったりしません。でも、弁護士の場合、資格が国(または州)で定まっているという点では一緒ですが、内容も国(または州)で異なるので、全世界に共通の資格があるかのような「国際弁護士」という表現は、なんとも個人的には気持ち悪いのです。


 例えば、日本では当たり前の「遺留分」という権利、相続の時にはいっつも出てきますよねえ。被相続人の配偶者、子、その他兄弟姉妹以外の相続人であれば、たとえ遺言で1円も貰えなかったとしても、一定割合の財産を主張できる権利ですね。でも、Community Propertyという制度*1を採用しているカリフォルニア州には、遺留分ないしそれに相当する制度はありません(配偶者はCommunity Propertyの半分は確保されますけど)。同じアメリカでも、Community Propertyという制度を採用していないニューヨーク州には、遺留分に似た"elective share statute"という制度があります(しかしこれは配偶者しか認められていません)。こんな感じで地域によって全然仕組みが違うってことは、よくあることです。


 国際的に活躍する弁護士、という意味で「国際弁護士」という言葉を使うのでしょうが、でも、「国際医師」って言葉は聞いたことないですよねえ。

 弁護士よりは知識の「国際共通」度が高い医師で使わないんだから、「国際弁護士」っていう言葉、やめた方が良いと思いませんか??


・・・


 私の現状は、国際的に活躍する弁護士、ではないですが、そうなれるように頑張りたいですねえ。でも、ホンマはどろどろした事件が大好きなんですけどね。ただ、どろどろ系が好きだというのとは別の脳の部分が求める知的好奇心というものもあります。



 

*1:主に西海岸の9州が採用している夫婦共有を原則とする財産制度。採用している州はカリフォルニア州ワシントン州アイダホ州ネバダ州、アリゾナ州ニューメキシコ州テキサス州ルイジアナ州ウィスコンシン州。なお、これらに囲まれる西海岸のオレゴン州は採用していない。