藤本大学~徒然なるままに(弁護士ぎーちのブログ)

ぎーち(弁護士藤本一郎:個人としては大阪弁護士会所属)のブログです。弁護士法人創知法律事務所(法人は、第二東京弁護士会所属)の代表社員です。東京・大阪・札幌にオフィスを持っています。また教育にも力を入れています。京都大学客員教授・同志社大学客員教授・神戸大学嘱託講師をやっています。英語・中国語・日本語が使えます。実は上場会社の役員とかもやっていますし、ビジネスロイヤーだと認識していますが、同時に、人権派でもあると思っています。要するに、熱い男のつもりです。

エクスターン生にご理解とご協力を


 私は、比較的積極的に、エクスターンとかサマークラークを受け入れている。


 我が国の法曹界においてエクスターンシップ(エクスターン)とは、法科大学院の授業の一環として、大学院の外で実務研修を受けることを指す。法科大学院が実務家を育成する専門大学院として、従前司法研修所が担っていた機能を十分に発揮するには、このようなエクスターンシップは不可欠だと考えて、私も出来る限り協力させて頂いている。


 他方、我が国の法曹界においてサマークラーク(一種のインターンシップ)とは、事務所が主催する法科大学院の学生又は卒業生をごく短期(例えば夏休みに)雇用して(すなわちクラークとして扱う)、実務に触れさせることを言う。どちらかと言えば、こちらは、その法律事務所の採用活動と密接に結びついているため、単純に実務教育と言い切ることはできないが、しかし、実務を知るという点では、司法研修所の機能が小さくなっている昨今であるので、エクスターンシップ同様に重要である。


 エクスターンシップは授業、サマークラークは雇用という相違はあるが、問題は、どのように実務を見せるか、ということである。司法修習生と異なり、司法試験にいまだ合格しておらず、司法修習生のような法律上の守秘義務や身分が定まっていないため、顧客にもなかなか説明しづらい。見せづらいのである。折角事務所に来て貰っても、記録だけを見せるとなれば、実務教育として機能しない。


 まあ、顧客からすれば、その弁護士に法律業務を依頼しているのであって、間違っても学生に依頼している訳ではないし、大事な企業秘密であるので、弁護士ではなく、その事務所に所属していない学生に知らせるなんて、もっての他だ、と考えるのは理解できないことではない。しかし、仮に司法試験に合格していないとしても、守秘義務について仮にその学生が違反すれば、その後の法曹としての将来がなくなるのであるから、マトモな学生であれば、そのようなことはしない筈である。私も、必ず守秘義務の意義を説明し、書面でこの点の誓約をさせていることは勿論である。


 このような顧客の不安に応えるためか、サマークラークを実施する法律事務所であっても、折角の「生の」事件には殆ど触れさせず、ひたすら「教材」である過去の編集した事件の起案をさせるところもあるようである。しかし、これは法科大学院の授業でもできることであり、敢えて別段の意義を探すとすれば、単なるその事務所の採用活動としての意義しか残らない。


 顧客の立場からすれば、「訳の分からない」サマークラークやエクスターンシップに同席されるのは、色々と不安なことは分かるが、できれば一緒に、人材教育に協力して貰えると幸いです。


 また、学生の側も、担当する弁護士が、一生懸命事前にサマークラークやエクスターンシップの意義を説明し、少しでも「生の」事件に触れさせることができるよう「根回し」をしていることは十分知って欲しい。そんな中で、顧客の理解が得られず、全ての「生の」事件を見せてあげることができないことは、世間の法科大学院の学生に対する評価だと思って、一層の努力をして頂き、自分の後輩は、もっと「生の」事件が触れられるように頑張って欲しい。


 私の元に来る次のエクスターンシップの学生には、どの程度「生の」事件を見せてあげられるか分からないが、暫く根回しの日々が続きそうだ。