藤本大学~徒然なるままに(弁護士ぎーちのブログ)

ぎーち(弁護士藤本一郎:個人としては大阪弁護士会所属)のブログです。弁護士法人創知法律事務所(法人は、第二東京弁護士会所属)の代表社員です。東京・大阪・札幌にオフィスを持っています。また教育にも力を入れています。京都大学客員教授・同志社大学客員教授・神戸大学嘱託講師をやっています。英語・中国語・日本語が使えます。実は上場会社の役員とかもやっていますし、ビジネスロイヤーだと認識していますが、同時に、人権派でもあると思っています。要するに、熱い男のつもりです。

司法試験受験生から見た中国の法曹事情


 私、いま住んでいる場所を決めたのには理由がいくつかあるのですが、その1つに、大学2つが近い、というのがあります。教師育成大学で有名な華東師範大学と、法律専門大学で有名な華東政法大学です。前者は輔導学習の先生を見つけるのに便利で、後者は、中国の法曹事情を弁護士以外のルートから知るのに便利だと思ったのです。えー昨日は、政法大学の法学院2回生の学生さん、しかもこの間中国の統一司法試験を受験されたばかりの方とお話する機会がありましたので、ちょっと今まで紹介してきた中国の法曹事情と重複する点もありますが、書いてみたいと思います。


 まず、1つ驚いたのは、華東法政大学の人員構成。大学院(修士課程)でも、1学年700名程度いるんだそうです。うち250名前後が、学部時代に法学部に行っていない方、残りが、学部時代に法学部に行っている方向けの学科だそうです。その方は学部時代法学部だったそうですが、その中でも、70名程度がいる専攻なのだそうですが、なんと、男:女が、20:50だそうです。女性が圧倒的に多い!!


 その方がいうことには、実際、中国の司法試験は女性の方が合格率が高いのだそうです。日本とは逆ですね(これは裏付けがあります。日本は合格者を受験者で男女別でわり算すると、男性の合格率が良いです)。これは、日本と中国の試験制度の差が影響しているかもしれません。日本は、新司法試験も現行司法試験も長丁場で、体力勝負。加えて細かい点を聞くので直前期の詰め込みも重要です。中国は、試験自体2日間で12時間しかなく、試験範囲が広範でまんべんなく勉強している人向きなのでこういう違いがあるのではないかと思います。


 そのように中国では司法試験について女性有利なのだそうですが、就職でいうと、女性はかなり不利なんだそうです。確かに私の中国での勤務先でも女性弁護士は多くはいません。中国の事務所でも、女性弁護士は、営業に向かないと考えられているようです。実は、大学院に女性が多いのも、学部卒で司法試験にすぐ合格しても就職するのがかなり厳しいという事情があるようです。中国の大学院進学率上昇それ自体が、大学生の求める就職先がなかなか見つからないという事情に起因しているところが多分にあると思うのですが、法学院も例外ではないようです。


 ところで、中国の司法試験受験資格要件は、大学卒業だけであって、法学部出身を要求していません。ところが、実際には、この華東法政大学の構成を見ていると、大学院に需要があって、かつ、まるで日本の法科大学院の未習・既修コースの区分のように、法学部経験者と未経験者で分類されています。このことは何を意味するでしょうか。私は、現在の日本の法科大学院のように、教育としては、大学院における法学教育を基本としながらも、司法試験においては、かつての旧司法試験のように、誰でも(大学さえ卒業すれば)受験できるという制度を維持できるのではないか、という気が今日少ししました。