藤本大学~徒然なるままに(弁護士ぎーちのブログ)

ぎーち(弁護士藤本一郎:個人としては大阪弁護士会所属)のブログです。弁護士法人創知法律事務所(法人は、第二東京弁護士会所属)の代表社員です。東京・大阪・札幌にオフィスを持っています。また教育にも力を入れています。京都大学客員教授・同志社大学客員教授・神戸大学嘱託講師をやっています。英語・中国語・日本語が使えます。実は上場会社の役員とかもやっていますし、ビジネスロイヤーだと認識していますが、同時に、人権派でもあると思っています。要するに、熱い男のつもりです。

法科大学院生・卒業生等向け座談会「アジアで弁護士として活躍する」

 近時,日本企業による中国,アセアン諸国などのアジア諸国への進出,または,アジア諸国現地法人とのクロスボーダーの取引は,一層加速しています。弁護士として,これらの国際的な渉外法務に関わる機会は年々増加していると言えます。

 しかし,法科大学院の学生や,卒業生にとって,訴訟を中心とした国内弁護士業務を理解することは比較的容易であるとしても,渉外法務に関与する弁護士がどのように仕事をし,どんなことを考え,またどのようなキャリアプランを持っているのか,知ることは必ずしも容易ではありません。

 また,かつて我が国の渉外弁護士と言えば,アメリカのロースクールに1年留学し,ニューヨーク州弁護士資格を取得してアメリカのロー・ファームで1年勤務して帰国するというスタイルが主流でした。しかし,今日のアジアを中心とする経済圏の発展に伴い,弁護士の日本国外の留学や勤務先としても,アメリカからアジアに軸足が移りつつあります。


 そこで,今回,シンガポールで最も古い歴史を有する大手法律事務所のRodyk & Davidson LLPの渉外法務を担当する弁護士と,我が国で50年を超える歴史を有し,日本最初の弁護士法人となった法律事務所である弁護士法人淀屋橋・山上合同の渉外法務を担当する弁護士が,このような渉外法務,特にアジアで活躍する渉外弁護士に興味を持つ学生向けに,どう働き,どうキャリアプランを考えているのか,自分達の経験・体験をもとに座談会を行うことにしました。

 シンガポールと日本を中心に第一線で活躍する複数の弁護士が,京都で講演する非常に貴重な機会ですので,多数の皆様のご参加をお待ちしております。なお,Rodyk & Davidson LLPのシンガポール人弁護士の講演は英語となりますが,通訳を準備させて頂きます(英語での質問も歓迎します)。

 なお,座談会後に京都市内にて懇親会を計画しております。併せてお申し込み頂けますと幸いです。

【主 催】弁護士法人 淀屋橋・山上合同・Rodyk & Davidson LLP
【協 賛】同志社大学法科大学院
【日 時】2014年10月18日(土)16:30〜18:30
【場 所】同志社大学法科大学院「寒梅館」203号教室
       (〒602-0023京都市上京区烏丸通上立売下ル )※地下鉄烏丸線今出川」駅より徒歩2分
       (詳細はhttp://www.doshisha.ac.jp/information/campus/access/muromachi.html をご覧下さい。)

【参加者】法科大学院生,卒業生等,法曹を目指す方(同志社大学法科大学院関係者以外でも歓迎します)

【参加費】無料(懇親会については参加希望人数に応じて若干の費用を要します。)

【定 員】100名(先着順)
【お申込】下記URL記載のPDFをご覧下さい。
http://www.yglpc.com/news/pdf/141018DULS%20Seminar_v6%28cl%29.pdf

〜 アジア法セミナーのご案内 〜『アジア諸国への進出・国際仲裁の実務』

【主 催】弁護士法人 淀屋橋・山上合同,Lodyk & Davidson LLP(シンガポール現地法律事務所)
【日 時】大阪会場:2014年10月16日(木)14:00〜17:00(13:30受付開始)
     東京会場:2014年10月24日(金)14:00〜17:00(13:30受付開始)
【場 所】大阪会場:梅田センタービル 
     東京会場:TKP大手町カンファレンスセンター

詳しくは、http://www.yglpc.com/news/pdf/asiaseminar.pdf をご覧下さい。

1991年と2014年


 1991(平成3)年9月、当時広島に住んでいた私にとって、大きな出来事といえば、台風19号であった。

 台風19号は、9月末に日本にやってきた台風であるが、私の人生史上最強の「風」台風だった。実家のある広島市安佐北区三入東の周囲の家のカーポートは軒並み倒れ、我が家の2階のガラスも割れた。台風が広島の北側を通過したため、南(瀬戸内海)から強い風が吹いたためだろう、広島市の沿岸は塩害で停電や断水。海から遠く20kmも離れた我が家は停電はしなかったが、民放のテレビが暫く映らなくなったのを記憶している。広島全体に、甚大な被害をもたらした。


 ところでこの年、広島カープが6度目のリーグ優勝を果たしているが、私の頭の中では、それほど強い印象がない。何故なら、1975年の初優勝=私の生誕から16年で6回目の優勝、当時の広島カープは、優勝しないとしても毎年優勝争いには加わることのできるチームだったこともあるし、私自身が広島に住んでいて、あまりに広島カープが身近だったからか、この年のカープの印象は、正直上記台風19号と比べると、薄い。


 まさか、これから23年間優勝しないとは思わなかった。。。


 2014年8月、広島はご承知のように、土砂災害で甚大な被害が発生した。上述した私の実家は、1時間あたりの降水量が121ミリと、この日最大の降水量を記録。実は団地の上の地盤が比較的安定していて、実家の町内で目に見える土砂災害は発生しなかったそうであるが、その周辺では(一番被害の大きかった八木地区ほど報道されないが)土砂災害が発生し、亡くなった方もいた。


 巨人戦に3連敗し、昨日は勝ったとはいえ、残り24試合で3ゲーム差は小さくなく、優勝の可能性は決して高いとはいえない。ただ、1991年と違い、いまの広島はカープの優勝に飢えている。地域の人は勿論だが、広島を離れた私にとっても、郷土愛のシンボルのようなものでもある。決して、それで全てが解決するとは思わないけれど、1991年の優勝より、今の優勝の方が困難なだけに、価値はより大きいように思う。甚大な被害が発生した災害がそれで片付く訳ではないけれど、カープ優勝で、広島を襲った暗い災害を吹っ飛ばす、それだけインパクトのあるイベントになり得るのではないかと思う。


 そもそも今回の巨人戦三連敗は、巨人主催で、かつ慣れない地方球場の開催だった。今回の三連戦のターニングポイント、マエケンが5回に「討ち取った」筈の井端の打球だって、雨の中の地方球場。もしかしてズムスタで同じ打球だったら、なんて思う。残り4試合の巨人戦は、全てズムスタで開催される。また、雨天中止等により予定変更がない場合、24試合のうち最後の6試合は全てズムスタで開催される。そして、その最後の10月5日の試合が、ズムスタでの巨人戦である。


 こういう他球団主催ゲームをなんとかしのいで、ズムスタに戻ってきて、勝ち続けて、逆転で・・・。そんなストーリーが待ってたりしないかな。

広島の大雨災害に関する法律Q&A


 私をはじめとした弁護士法人淀屋橋・山上合同の有志で、東日本大震災の発生後ただちに「震災の法律相談Q&A」(民事法研究会)を出版し、かつ、この出版内容をそのまま事務所HPに掲載しています。

http://www.yglpc.com/contents/qa/topics/earthquake/index.html


 よく考えると、広島の大雨(以下「本災害」といいます。)に関する各種の公的支援や法律問題について、このQ&Aの全部ではないですが、そのまま、または概ねそのままあてはまる問題が沢山あることに気付きました。

 私ができる支援といえば、弁護士ですし、やはりこういう法的情報の提供ですよね・・・。


 事務所HPの読み替え(あくまで東日本大震災を想定して記載)が必要ですが、以下、本災害にあてはめた場合にどうなるかについて、少し記載したいと思います。

(免責事項)
 なお、迅速性と全体についてコメントをすることを重視し、思いつきでざっと調べて記載していますので、間違いの可能性があると思います。この点はご容赦下さい。情報提供等お願いします!


【第1章 災害に関する法律】

Q11〜17 災害救助法 本災害においても適用
⇒避難所の設置等は本法に基づき行われました。今後、仮設住宅の設置等が行われる可能性があります。

Q18〜30 被災者生活再建支援法 本災害においても適用
http://www.bousai.go.jp/kohou/oshirase/pdf/20140821-4kisya.pdf
http://www.city.hiroshima.lg.jp/www/contents/0000000000000/1201565014314/index.html
⇒住宅の被害が生じた場合に公的な支援金が受けられます。

Q31〜33 災害弔慰金の支給等に関する法律 本災害における適用は未確認
⇒死者の遺族に対し災害弔慰金の支給が受けられるのですが、私のニュースの確認が悪いのか、現時点では支給は決まっていないと思います(過去の例からすれば可能性があると思います)。


【第2章 不動産(1)】

Q1〜16 借家
※本災害に対し適用するに際しては次の点に留意されたい。
(1) 罹災都市借地借家臨時処理法の適用はいまのところない(例えばQ2は本災害無関係)。
(2) Q10にあるような「指針」は本災害に関し出されていないが、「指針」は本来法的拘束力はないため、具体的行動において、参考にすることはできる可能性はある(具体的対応については原則を踏まえよくお考え頂きたい。)

Q17〜33 借地
※本災害に対し適用するに際しては上述のとおり罹災都市借地借家臨時処理法の適用はいまのところないという点に留意されたい。


【第2章 不動産(2)】
Q34〜38 マンション
※本災害に対し適用するに際しては、被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法の適用はいまのところないという点に留意されたい。

Q39〜48 土地建物所有権 おおむね本災害にもあてはまる。


【第3章 不動産以外の財産権】
おおむね本災害にもあてはまる。ただし、本災害においてはQ2に記載したような「預金証書、通帳等を紛失した場合でも預金者であることを確認して払戻しに応ずること」等の措置や、Q3で記載したような被災者の預金公表制度等は公表されていない。また、Q5Q6記載の手形小切手に対する措置も公表されていない。


【第4章 取引】
おおむね本災害にもあてはまる。ただし、本災害においては、Q24記載のような「総量規制」の緩和や、Q29、30等に記載した「東日本大震災復興緊急保証という信用保証制度」等の特別措置は公表されていない。


【第5章 不法行為
Q1〜7 一般不法行為
おおむね本災害にもあてはまる(地震を土石流等に読み替える)。なお、Q6記載の「指針」又はこれに類似するものは本災害では公表されていないが、「指針」は本来法的拘束力はないため、具体的行動において、参考にすることはできる可能性はある(具体的対応については原則を踏まえよくお考え頂きたい。

Q8 基本的に本災害にあてはまらない。

Q9〜10 国家賠償責任
本災害にあてはまる可能性がある(緊急の対策ではないと思われるので、その適用については慎重に検討する必要があろう)。

Q11〜22(原子力損害) 本災害にあてはまらない。


【第6章 会社法金融商品取引法】 
おおむね本災害にもあてはまる。但し、Q4記載の「特定非常災害特別措置法2条1項、平成23年東北地方太平洋沖地震による災害についての特定非常災害およびこれに対して適用すべき措置の指定に関する政令」又はこれに類似する政令は出ていないので、有価証券報告書等の提出遅延については、原則通り対処する必要がある。


【第7章 労働(1)】
Q1〜5 震災被害と労災・通勤災害
Q6〜13 従業員が出勤できない場合
Q14〜20 休業手当
Q21〜22 復旧作業・支援活動
Q23 給与の支払義務
おおむね本災害にもあてはまる(Q11・Q19記載の計画停電は予定されていない、Q14記載の「東日本大震災に伴う雇用保険失業給付の特例措置」の適用はない、各種の特別立法・政令はない等の読み替えは必要である)。


【第7章 労働(2)】
Q24〜27 雇用調整助成金
Q25・26はあてはまらない。Q24とQ27の(1)(地震⇒大雨・土石流等に読み替え)は本災害にもあてはまると思われるが、ウェブサイト記事の執筆日以後に制度変更があるため、最新の情報を確認されたい(http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07.html)。

Q28〜32 解雇・内定取消
おおむね本災害にもあてはまる。但し、Q29記載の「東日本大震災に対処するための特別の財政援助および助成に関する法律(平成23年法律40号)」第82条による、雇用保険の基本手当の給付日数の特例はない。その他、震災の際の特例等はない。

Q33〜35 その他 Q33、34は本災害につき適用なし。Q35は本災害にもあてはまる。


【第8章 人】
Q1〜12 親族相続
おおむね本災害にもあてはまる。なお、以下の点に留意されたい。
(1) Q6記載の相続放棄の熟慮期間の延長措置そのものはない。
(2 )Q9記載の「東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律」に基づく死亡推定制度の適用はない。法務省の特例による死亡届提出制度もない。

Q13〜21 外国人
残念ながら、おおむね本災害にはあてはまらない。


【第9章 倒産】

おおむね本災害にもあてはまるが、個別のQにつき、若干の留意点を記載する。

Q5 
(1) 「災害弔慰金」の支給は、第1章に関するコメントでも記載したとおり、現時点では決定されていないが、仮に支給が決定された場合に、この災害弔慰金はこの第9章Q5記載の立法により、差押禁止財産となっているので、差押はされない。
(2) 被災者生活再建支援法に基づく「支援金」 の支給は、第1章に関するコメントでも記載したとおり、現時点で決定されている。この支援金は、この第9章Q5記載の立法により、差押禁止財産となっているので、差押はされない。
(3) しかし、東日本大震災の際には差押禁止財産となった、「東日本大震災関連義援金」は、「東日本大震災」に関する「義援金」に関して「のみ」差押禁止財産となっているため、本災害における義援金等については、差押禁止財産にはならないものと思われる。

つまり、Q5記載のうち、法に基づく「災害弔慰金」「支援金」は差押禁止財産だと言えるが、民間や公的な義援金の支給が決まっても、これは差押を受ける可能性があるため、この機会により一般的な立法があっても良いのではないか(例えば、何らかの立法に基づく災害として認定されれば、その災害に関する義援金については差押禁止とするような立法があっても良いのではないか)とは思います・・・。

(4) 原子力発電所の事故に基づく損害賠償金は無関係。


Q10
本災害は、特定非常災害特別措置法に基づく特定非常災害として指定を受けていない。


【第10章 保険】
Q1〜3 総論
概ね本災害についても当てはまる。
例えば、Q3に関しては、下記のとおり、既に保険会社より延長措置が公表されている。
http://www.seiho.or.jp/info/news/2014/0820.html

Q4〜8 地震保険 本災害にはあてはまらない。

Q9〜12 火災保険 Q&Aは本災害で直接あてはまるものではない。また、火災が発生したとの情報はない。しかし、保険契約の内容にもよるが、火災保険の場合、「水災」に対する損害も填補する条項が付されていることがあり(なお、Q11記載のとおり、住宅総合保険であれば、大抵は「水災」に対する損害も填補する)、本災害に基づく土砂災害については、「水災」に対する損害であるとして、火災保険により損害が填補される可能性がある。

Q14、15 自動車保険  おおむね本災害にあてはまる。

Q16〜19 生命保険  おおむね本災害にあてはまる。


【第11章 税金】
Q1〜2 通則 おおむね本災害にあてはまる。但し、Q1記載の「個別の申請」なしの延長措置は、本災害においては、現時点では認められていない。

Q3〜5 所得税 おおむね本災害にあてはまる。但しQ5記載の災害特例法(東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律(平成二十三年四月二十七日法律第二十九号))6条の適用はない。

Q6〜7 法人税法 おおむね本災害にあてはまる。但しQ6記載の災害特例法(東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律(平成二十三年四月二十七日法律第二十九号))15条の適用はない。

Q8 消費税 本災害にあてはまる。

Q9 相続税贈与税 本災害にあてはまる部分がある。但し、記載の災害特例法(東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律(平成二十三年四月二十七日法律第二十九号))34〜36条の適用はない。

Q10〜14 東日本大震災の被災者に対するその他の特例 残念ながら本災害にはあてはまらない。

Q15〜18 義援金・見舞金等
 本災害に対するこれらのQAの適用については、該当する部分があります。
(Q15について)
 個人の方が義援金等を支出した場合には、その義援金等が国又は地方公共団体に対する寄附金や財務大臣が指定するものなど一定のものであるときは、「特定寄附金」に該当し、寄附金控除の対象となります。(所法78条)。
 広島市が実施している義援金の募集に対し、義援金を支出した場合は、上記のとおり、当然に地方公共団体に対する寄附金ですので「特定寄附金」に該当しますので、QA15の原則に記載したとおりの適用があります。
 
 なお、東日本大震災の際は、「震災関連寄附金」という概念が設けられ(震災特例法81条)、通常は所得控除額が所得の40%を上限とするところ、所得の80%まで控除される制度が設けられていました(QA15参照)が、本災害については、これらの特例の適用はありません。

(Q16について)
 おおむねQA16に記載したとおりです。「国又は地方公共団体に対する寄附金」であれば問題がありませんが、震災の際には特別に一定の民間団体について指定がありました(指定寄附金)。本災害では、まだそのような指定が確認できておりませんので、民間団体に寄附する際については、損金算入の可否について十分ご確認頂きたいです。

(Q17、18 本災害につき適用あり)

Q19〜24 不動産登記に係る登録免許税の免除特例  本災害につき適用はありません。


【第12章 行政】
Q1〜3 罹災証明・被災証明  おおむね本災害に当てはまる。

Q4〜7 がれき おおむね本災害に当てはまる(Q4記載の指針はない)。
なお、広島市など自治体が撤去する「がれき」の処理費用については、既に国が廃棄物処理法に基づく災害等廃棄物処理事業費補助金の適用を決定し、国が9割負担することが決まっている。

Q8〜10 生活保護 おおむね本災害に当てはまる(特別な通達は出ていません)。

Q11〜19 土地区画整理事業  おおむね本災害にあてはまる。


間違い等があれば、随時修正したいと思いますので、コメント等をお願いします。

司法試験ネタ(実話)


 いよいよ水曜日から、日本では司法試験が始まるようです。
 余り偉そうに語っても仕方無いので、僕の司法試験を少し振り返って、役に立つかもしれない話しを書きたいと思います。


【択一】

 今の司法試験と異なり、当時(1999年)の司法試験は、5月に択一試験があり、合格者のみ7月に論文試験を受験することができ、その合格者のみ10月の口述試験を受験することができるという仕組みでした。択一試験は、60問3時間30分で、憲民刑から各20問出題されました。合格点は、だいたい40点台前半で、合格者数は、だいたい論文合格者数の5倍くらいになるように調整されていたと思います。なお、今と異なり、択一は足切りにのみ使われるので、高得点で合格したからといって論文での不足を補うことはできませんでした。

 僕が司法試験の勉強をホンキでやり始めたのがいつのことか、正確には分かりませんが、3回生の終わり位からちゃんと勉強をし始めたと思います。4回生(1998年)の時の5月に初めて択一を受験しましたが、落ちました。まあ勉強不足であることは分かっていましたが、ただ、合格点から1点足りないだけだったので自信がつき、この4回生の年は本当によく勉強したと思います。

 翌年5回生になり(当時の京都大学では、4年で卒業するのは僅か3割でした・・・休学や留年で12回生までなれました・・・。)、択一前の模擬試験とかは、50点台を連発していて、まず間違えなく択一は合格できるという自信を持っていました。その結果、不用意な発言を連発し、模擬試験会場で友人(ふみよ)を泣かせるというデリカシーのなさを発揮。ただ、択一はできるという自信を持ったのが裏目に出たのが本番でした。

 当時60問を、僕は早く解ける順に、民法、刑法、憲法の順番で解いていたのですが、僕にとっての30問目か31問目(つまり全体の50問目か51問目)は、執行猶予のマニアックな問題でした。僕は当時、模擬試験でたまたまケアレスで間違えることはあっても、問題を読んでも択一で答えが分からないということがなかったので、ちゃんと考えれば分かる筈と思って問題を読み直したのですが、それでも答えが分かりません。これが前年の僕であれば、そんな問題飛ばして出来る問題をしよう!となっただろうと思うのですが、この年の僕は「やればできる、必ずできる」と思っていたので、何度も考えてしまいこの1問に10分以上を使ってしまいます。結果、すごく焦ってしまい、この問題までの約30問は1問しか間違っていないのに、残りの約30問は半分を間違うことになりました。結局、合格点ギリギリで合格はしたものの、下手な自信過剰が死を招き兼ねないことを実感したのです。


【論文】

 当時、7月の論文試験は京都で行われていました。僕の受験した年の前々年位までは京都大学で論文試験は行われていたのですが、京大で論文が実施された最終年に、「カエルの歌輪唱事件」が発生します。僕と同年代か少し上の方はご記憶になると思いますが、なんと試験会場の外で試験実施中に、何者かが「カエルの歌」を輪唱して、受験生の頭を悩ますという事件が発生したのです。犯人は不明ですが、この翌年から、司法試験は「クーラーが京大では十分に準備できない」という理由で同志社今出川校舎)に変更されました。同志社で試験が実施された数年間(後に京都での試験はなくなり、大阪に移行しました)、この種の事件は発生しなかったと聞いています。

 さて、僕は論文初受験でしたので、択一と異なり、あまり自信はありませんでした。そもそも予備校にも模擬試験以外行っていなかった僕は、サークルの仲間以外受験生を殆どしらなかったので、どのレベルを書いたら合格するのか、全く分かりませんでした。

 ところで、試験会場の同志社まで、当時の我が家(ひらがな館のあたり)から歩くには遠かったですが、自転車なら10分かからない位の距離でしたので、僕は当日、自転車で試験会場まで行くことにしました。上述のとおり不安だった僕は、カバンに一杯一杯になるまで、各種参考書を詰め込みました。論文初日、外は雨でした。僕は傘を差しながら自転車にまたがります。そのとき、


 ガシャーン


 またがった瞬間にこけました。。。。

 ええ、派手にやりまして、自転車パンク、服とズボンはびしょびしょ。傘も大破でした。


 ただ、緊張は一気に解けまして「あ、もうええわ。受験だけできたらええやん」みたいな気分になりました。

 僕は着替えて、軽くシャワーを浴び、受験票と筆記用具、あとは六法かな、最小限のモノだけを抱えて、気楽にタクシーで試験会場に向かったのでした。


 取りあえず、知識量にも不安があった僕の作戦は、全ページ全行(記憶が正しければ当時は4頁88行)、埋めてやろうと考えて、実際12問のうち11問はそうしたと思います。点数は当時公表されませんから何点だったかは知りませんが、とにかく、自信はなかったし、不安はありましたが、リラックスして、やりきった、書ききった感はありました。


 試験が終わって同志社の試験会場から出ようとしているとき、外で先輩(金さん)から声をかけて貰ったのがすごく印象的でした。

「ぎーち、その顔は受かってるで」

・・・みたいな、まあ、普通にいま書いてしまえば何ともないことなのですが、どきっとしたと同時に、自分の満足感がどこかで証明されたみたいで、嬉しかったのを覚えています。

 実際、試験が終わってから、合格発表までの長い時間を、受かっていることを前提として過ごすか、落ちていることを前提として過ごすかは、色々な意味で変わってくると思います。僕は、自信はそこまでなかったけれども、受かったことを前提として口述ゼミとかを組んだりして、サークル外の人と勉強できたりしたのは、勉強になったし楽しかったし、何より、ただ暑いだけの京都の夏を前向きに生きることができたように思います。


【米国】

 結局1999年の司法試験に合格して、2001年から弁護士をする訳ですが、縁あって米国に留学し、2006年7月にはニューヨーク州司法試験、2007年2月にはカリフォルニア州司法試験を受験するハメになりました。ええ、勿論自分で決めたことですが。

 米国の司法試験は、はっきり言えば日本とは比較にならないほど稚拙で簡単です。択一は問題を使い回すし(故に問題は一部を除き非公開)、論文も、論点(Issue)をちゃんと捉えていれば、自説(Rule)が実際の法律と違っていたり、間違っていても、その後のあてはめ(Application)がしっかりしていれば、十分な部分点を貰うことができます。更に所謂教科の問題(憲法とか、契約法とか)だけではなく、全く架空の法律と事実を前提としたPractical Testという問題もあります(僕はいまある法律事務所のアソシエイトで、ボスがランチに出かけたんだけど、この資料を読んで意見書書いて、みたいな)。カリフォルニアでは、今は分かりませんが当時はこのPTの配点が高く(というのも、PTはカリフォルニアで開発された試験なのです)、全3日間のうち丸々1日6時間を費やします。

 つまり、細かい法的知識は何ら要求されないのです。それでも米国の弁護士は偉そうに世界で君臨しています。僕は、日本の弁護士さんがよく「最近の若いものの質が・・・」と言うのを聞いて違和感を感じる原因の1つが、ここにあると言って良いと思います。そんな細かい知識は、暗記して試験で問わなくても、六法や判例を見ながらでも良いと思うのです。


 閑話休題。僕は当時、カリフォルニア州ロサンゼルス市に住んでいたので、ニューヨーク州司法試験を受験するのは一苦労でした。というのも、試験会場は、当然ながらニューヨーク州(州都オールバニー)にあるのですが、まず、カリフォルニアとは3時間の時差がある。試験は朝9時から始まりますが、それはカリフォルニアの朝6時。時差対策として、僕は試験前3週間くらいから、夜は9時か10時に寝て、朝は4時に起きることに決めました。しかし、試験前3週間といえば、まだ詰め込みの時期。ニューヨーク州司法試験は卒業から勉強を始めて、受験まで2ヶ月程度しか勉強をしないので、まだまだ勉強の中盤です。少しでも勉強量を増やしたい。でも9時か10時に寝たら・・・4時なんかに起きずに、気持ち良く6時位まで眠ってしまい、結局勉強量は十分に確保できず、焦りました。なお、当時の僕の生の感想はこちら(NY州:http://www.fujimotoichiro.com/law/barexam.htm、CA州:http://www.fujimotoichiro.com/law/calbar.htm)で(ちょっと偉そうで恥ずかしいですが・・・受験直後は困難を突破したと思いたいんでしょうね・・・)。今思うと、時差調整なんてできっこなかったなあと思う一方で、しかし良く寝たので、疲れがなかったし、体調を崩さなかったのは良かったなあと思いました。直前に体調を崩したらなんにもならないからね。

 ところで、試験を受けるにはニューヨーク州の州都オールバニーまで行かなければなりませんでした。アメリカに住み始めて1年でしたが、飛行機でアメリカ国内を移動するのは初めて。ロサンゼルス国際空港に行くと、自分が乗ろうとしていた飛行機は、何とキャンセル!機材不良で飛ばないそうです。遅れとかではなくてキャンセルと聞いて焦りました。この時、まだ中国語のできない僕でしたが、一緒に台湾の子と便を合わせて飛行機に乗る筈でしたので、2人でカウンターに行ったところ、1席だけシカゴ経由でアルバニーに行ける席があるというので、僕は焦る気持ちを抑えてその子に席を譲りました。確か、意味もなく、東海岸にいた乙部に、何とかしろ!と電話したのを覚えています。

 もともと、シカゴで乗り換えてオールバニーに行く筈でしたが、色々聞いていると、夜にJFケネディー国際空港(ニューヨーク市)に着く飛行機なら取れるということでしたので、JFKまで飛んで、そこからはアムトラック(鉄道)でオールバニーを目指すことにしたのですが、着いたら午前1時は過ぎていたと思います。


 こんな感じでしたから、ニューヨーク州司法試験も、「受けられただけ幸せ」と思い、またまたリラックスして受けました。試験に落ちても死ぬ訳ちゃうしね。日本の試験とは比べものにならない程簡易な試験(ニューヨーク州は2日間)でしたが、とにかく受かっていました。


【おわりに】

 要するに、僕の限られた経験からして、司法試験というものは、まず受けられること、試験会場でちゃんとした椅子と机に座って、ちゃんとした筆記用具を使って、その舞台で試験を解くという演技を演じられること自体が、素晴らしいことで、1つ間違えば、それすら危うい中で僕らは生活しているということを言いたかったのです。

 下手な文書故に伝わらなかったかもしれませんが、受験される皆さん、無事に試験会場に着いて、受験できるなら、その瞬間、「受験できる幸せ」とかみしめて頂き、焦ったりじたばしたりせずに、あとは精一杯頑張って貰えるなら、幸いです。

 司法試験を受けていた頃は、これが人生最大の難関だと思っていましたが、後から振り返ると、そんなことはありませんでした。余り自分の中で、勝手な強敵にすることなく、自然体で臨んだ方が、ええと思います。

日本の50大法律事務所2014

今年は更新しました。
http://www.fujimotoichiro.com/law/JLawFirm2014.htm

昨年は更新できませんでしたが、今年は比較的早期に更新できました。我が国の法曹の需要はない、ない、と言う人がいますが、この50大事務所での弁護士人数は、2012年の3677名(51事務所合計)から本年3831名へと増えています。単に弁護士の二極化によってうまくいかない弁護士が出ているだけであって、業界全体のパイが小さくなった訳ではないように、少なくともこの数字からは感じるのですが、違うんでしょうか。。。

勿論、いままで弁護士がしていた業務ではない業務まで手を出すことに対する躊躇とか、そういうのがない訳ではないかもしれませんが、需要がないことをやっても仕方がない訳ですから、高い倫理観を持ちつつも、世の中の需要に応えるというあり方も重要な気がします。

京大学長選挙、風前の灯火!


 いま、京大の動揺が最大の局面を迎えている。私も、京大卒かつ現在も京都大学の複数の部署に関与する人間として、いま強い憤りを抱いている。

 京大職組の情報によれば、今年のクリスマス(12月25日)に開催される総長選考会議で、総長選における学内教職員による意向投票を今後廃止し、総長選考会議のみの議決によって京都大学総長を選出すること及び総長の任期を現在の6年からさらに延長するという議題が採決されようとしている、とのことである。


 京都大学の総長は、現在の「国立大学法人京都大学の組織に関する規程」第2条によれば、京都大学を代表し、任期は6年で、原則として再任はない。
 
 また、現行の「国立大学法人京都大学総長選考規程」によれば、総長は、「総長選考会議」により選出されることになっているものの、その第5条では、「学内の意向を調査するため、第一次総長候補者について、投票資格を有する者に単記による投票(以下「学内意向投票」という。)を行わせる。」となっており、そして、同12条では「学内意向投票の投票結果を基礎に、総長候補者を選考する。」と規定されている。


 従って、事実上、学内意向投票の結果を踏まえて、選出されるし、任期6年・再任なしと相俟って、京都大学を恣意的に総長が長期間、継続支配することは、想定されていない。自由の学風の源である京都大学に、そのような事態を想定すること自体あり得ないことであった。実際、過去100年以上にわたり、京都大学では総長選挙が実施され、その結果は尊重されてきた。


 総長選挙が廃止されてしまえば、総長選考会議(12名の委員で構成)のみで総長が選出できることになり、学内の意向を汲む必要がなくなる。

 この総長選考会議のルールは、総長選考会議で規程することができるので、確かに12月25日の会議のみで変更することが可能だ。他方、任期や再任については、上述の「・・組織に関する規程」で定まっており、こちらは、役員会(総長・理事で構成)で改正されることになるため、12月25日の総長選考会議のみで改正することはできない筈であるが、そもそも役員会は総長が支配しているのであるから、総長選考会議さえ通ってしまえば、実現される可能性が十分ある。


 そもそも、現在の松本総長は2008年に選出されており、現行規程に基づけば、来年2014年に総長選挙が行われ、松本総長は勇退することが前提で全てが動いていた筈である。選挙直前のいま、急遽、十分な議論なく、総長選考会議で総長選挙が廃止されるというのは、今までの学内自治の死滅であり、また、松本総長が再任を目指すか否か別として、そのようなきな臭い動きに等しい。

 仮にこのような改正を行うのであれば、総長選挙で松本総長ではない第三者が、かかる政策を堂々と主張して、支持を得てから、6年後に再度登場を目指すか、又は、松本総長が選出された2008年に主張すべきものだった筈だ。


 現在、反対の署名運動がネットでも展開されているが、そこでも述べられているように「もしこのようなことが決定されるならばわたくしたちがその胸に抱いているような京都大学はその後はもはや存在しなくなるだろう。京都大学自治、民主主義のないところに京都大学の自主性すなわち創造力の源泉は存在しなくなるだろう。」

 
 もともと松本総長は、2008年就任時に次の様な抱負を述べていた。
「自由の学風、自学自修など京大の伝統を守りつつ、革新と創造で元気の出せる大学にしたい」(ソース


 この暴挙は、仮に京大職組の情報が事実だとすれば、京都大学の破壊に他ならない。ご自身の胸に手を当てて、これが「自由の学風、自学自修など京大の伝統」を守る、元気の出る施策なのか、ご説明頂きたいものだ。卒業生として、また関係者として非常に恥ずかしい。直ちに辞任するに値する。