藤本大学~徒然なるままに(弁護士ぎーちのブログ)

ぎーち(弁護士藤本一郎:個人としては大阪弁護士会所属)のブログです。弁護士法人創知法律事務所(法人は、第二東京弁護士会所属)の代表社員です。東京・大阪・札幌にオフィスを持っています。また教育にも力を入れています。京都大学客員教授・同志社大学客員教授・神戸大学嘱託講師をやっています。英語・中国語・日本語が使えます。実は上場会社の役員とかもやっていますし、ビジネスロイヤーだと認識していますが、同時に、人権派でもあると思っています。要するに、熱い男のつもりです。

一家4人無理心中


朝日新聞平成19年7月21日付(電子版)
http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200707210077.html

大阪市東淀川区下新庄3丁目のマンションで、電気工事業の弘田信行さん(34)の一家4人が無理心中したとみられる事件で、室内にあった弘田さんの携帯電話に「仕事がない。このままでは子どもも産めない」という内容のメールが残されていたことが大阪府警の調べでわかった。一家が消費者金融以外に親類らからも金を借りていたことがわかり、府警は生活苦が原因の無理心中だったとみて調べている。


朝日新聞平成19年7月20日付(電子版)
http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200707200161.html

 弘田さんのものとみられる携帯電話が和恵さんの枕元に置かれ、「妻と相談して死ぬことにしました」「子どもたちに申し訳ない」などと記した未送信のメールが残されていた。弘田さんは家賃2カ月分を滞納し、自宅からは消費者金融などの複数の明細書が見つかったという。事業資金などで借金が数百万円あったといい、同署は死亡との関連を調べる。


こういうニュースを聞く度に、辛く悲しくなります。
また、自分の未来がいったいどうなるのだろうか?という不安もよぎります。

先に自分のことについて少し言えば、確かに私は、日本とニューヨークの弁護士であり、またカリフォルニアの弁護士にもなれる資格がある訳で、今の時点で生活苦で自殺しなければいけない程将来真っ暗、とは思ってはいません。しかし、どの業界にも栄枯盛衰はあるもの。果たして、急激に人員増される弁護士業界の中で生き残れるのか、不安はあります。弁護士は、「自由業」でして、会社のバックで生活が一定程度保証される、という訳ではないので、尚更です。

しかしまあ、そういう「一抹の不安」があるからこそ、頑張れるというものだと思います。
アメリカや中国を見て、これらの国と日本を含めた3ヶ国のフィールドで一線の弁護士として頑張っていきたいと思い、それに向けていまのうちから努力を惜しまなければ、なんとか、生き残っていけるんじゃないだろうか、不安を抱えながらですが、そう思っています。幸い、この仕事は私にあっているみたいで、仕事が楽しいのも、救いです。


自分のことがちょっと長くなりましたが、この種の事件で問題になるのは、まず、借金の存在だと思います。これは弁護士として、この問題の解決に助力できるだけに、何故この方が、借金で悩む時に、法的な整理で一家を立て直そうとされなかったのか、本当に惜しまれます。


しかし、いくら借金を整理しても、仕事がなければ、食えません。出るもの(借金返済)が減ったりなくなったりしたら楽にはなりますが、入ってくるもの(収入)がなければ、生きていけません。どうすれば、1人残らず、誰もが、働く意思と意欲があれば、ちゃんとした、「健康で文化的な」少なくとも「最低限度の」生活をすることができるようになるのでしょうか。日本は、確かに、中国やアメリカと比べて、中産階級と呼ばれる「普通の人」が豊かだとは思います。しかし、この種の事件を見るにつけて、やはり日本社会全体に、1つの問題点があるように思うのです。


それは、20代前半までで決めた選択肢からの修正が、非常に難しい、難しすぎるという点です。
なお年功序列・終身雇用を一定の前提として組まれている社会だからでしょうか、この方のように、34才になって、自分がやってきた仕事(電気工事業)が息詰まってしまったときに、今から新天地で全く別の仕事を始める、というのが、とてもとても難しいように感じます。


例えば私の世界でも、長く司法試験の勉強をしていて、30前後に、この司法試験という世界から足を洗い、普通に就職をしようとする人もいるのですが、うまく仕事がみつかる人もいるのですが、そうじゃない人もいるようです。特に近時は、法科大学院というものができて、ここに2〜3年間行きながらも新司法試験に通らなかった等のために就職を目指す人がいるようで、同じ試験撤退組でも、ちゃんとロースクールに行っていた人と、学歴としては何も残っていない人とでは、前者がやはり有利なように感じる旨のことを聞きました。


☆☆企業の法務部のみなさん、優秀な奴らなので、司法試験から足洗った奴らも、旧試験挑戦組でも、男女とも、ちゃんと扱ってやってください。ホンマ宜しくお願いします。☆☆


・・・

どうすればいいのかな、30代からの挑戦。人生20代前半に全部決めるなんて、無理です。


私はたまたま日本の司法試験には通りましたが、中国語や中国法なんて、ホント、いままさに30代にて勉強中。20代前半のときに、自分が米国に留学して英語を話し、中国に留学して中国語を話すなんて、とても想像できなかったけど、いまなんとかそんな感じになりつつあります。そんな感じで、30代にまた違うことにチャレンジすることがやりやすいと、いいんじゃないかなと思います。そして、チャレンジするには、どうしても一定期間、仕事をやめなきゃいけなくて、その間収入がなく、辛い。これは、本当に辛い。この辛い間に、多少なり、なんか支えが公的にあれば、本当に再チャレンジできる社会になると思います。いまの雇用保険制度だけでは不完全だし、この雇用保険制度、実態は、払わなくてもいい人に払っている面もある気がして・・・。


選挙ありますが、無意味な再チャレンジじゃなくて、こんな自殺がなくなるような再チャレンジの具体策を実行できるのは、どこなんでしょうねえ。ばらまきじゃなくて、本当に頑張る気概がある人に、頑張ることができるような支えができるような。。。