若き法曹のために、外弁規制をかみ砕いて説明しよう。(2)外弁の要件、できること・できないこと


 さて、我が国における「法律事務」の重要性と、弁護士と外国法事務弁護士と外国弁護士の相違は(1)で説明したので、分かって貰えましたね?まだの方は先に(1)を読んで下さい。

 次に、外国法事務弁護士の要件と、職務について説明したいと思います。


1 外国法事務弁護士となるための資格要件


 細かく言うと色々あるのですが、まず外国法事務弁護士として日弁連の名簿に登録を受ける前に、法務大臣によって、外国法事務弁護士となるだけの資格があるか否かについて承認審査がされます(外弁法7条以下)。名簿の登録で拒絶されることは実務上殆どないので、この審査を通過するかどうかが問題となります。また、日弁連も、登録時の審査を容易にする目的で、法務大臣による承認審査にあらかじめ意見を述べる(外弁法10条4項)で審査に協力しています。日弁連外弁委員会の委員として私が行う弁護士会業務の1つが、この意見を述べる作業です。


(1)外国弁護士となる資格を有すること(外弁法10条1項1号前段)


 つまりは他国で、我が国の弁護士相当資格を有することが要件になります。ここで、例えば、司法試験がなくても弁護士相当職なのか、とか、弁護士事務所に弁護士以外の者が出資できることになっても相当職なのか(現在のイギリスやオーストラリアの規制)が議論の対象になります。


(2)その資格を取得した後三年以上資格取得国において外国弁護士として職務を行った経験を有すること(職務経験。外弁法10条1項1号後段)


 但し,この「3年」には種々の例外があります。

 まず,資格取得国以外の外国において外国弁護士となる資格を基礎として資格取得国の法に関する法律事務を行う業務に従事した経験も含むとされています。つまり、ニューヨーク州弁護士が、香港で、ニューヨーク州の法律事務に従事しても、認めて貰える可能性があります。


 さらに,外国弁護士となる資格を有するものがその資格を取得した後に日本国内において弁護士等に雇用され,そこで資格取得国の法に関する知識に基づいて行った労務提供の経験についても,通算して1年を限度に組み入れることが認められています。つまり、当事務所で私の下で労務提供したという場合、3年中1年については、この職務経験に通算することができます。


(3)誠実に職務を遂行する意思があること(外弁法10条1項3号)

 具体的には、外弁法が認める外弁の提供可能な法律事務の範囲で職務をする意思があるかどうか。言い換えれば、それを超えた法律事務をやる意思がないかどうかをチェックする訳です。


(4)適正かつ確実に職務を遂行するための計画があること(同)

 どんな法律事務所で、どういう形態(パートナー、独立開業、アソシエイト)で外国法事務弁護士としての職務を行うつもりなのかをチェックされます。


(5)住居及び財産的基礎を有すること(同)

 我が国できちんとした外国法事務弁護士としての職務を担当してもらうには、きちんと我が国に住んで、一定の財産を持って貰うことが前提になるので、この点もチェックされます。


(6)依頼者に与えた損害を賠償する能力を有すること(同)

 外国の方ということで、何か問題があったときに逃げ帰るということではクライアントに被害が生じますので、弁護過誤の際にきちんと損害賠償に応じられる能力があるかどうかもチェックされます。


(7)欠格事由に該当しないこと(外弁法10条1項2号)

 
 次の事情があれば、欠格事由があることになり、承認されません。
ア 禁固以上の刑に書せられたこと。
イ 我が国で言う弾劾裁判所の罷免に相当する処分を受けたこと。
ウ 懲戒処分等を受けて3年を経過していないこと。
エ 成年被後見人被保佐人相当と取り扱われていること。
オ 破産者で未復権相当と取り扱われていること。



2.外国法事務弁護士としての義務


 外国法事務弁護士としての資格を法務大臣に承認された場合、外国法事務弁護士としての登録を受けることができます。この時、いくつかの義務を守る必要があります。その1つが、日本滞在義務です。一年のうち180日以上は日本に在留していなければなりません(外弁法48条)。


3.外国法事務弁護士としてできる職務・できない職務


(1)できないことの例(外弁法3条)


 目出度く資格承認を受け、日弁連の名簿登録を受けたら、外国法事務弁護士として法律事務を行うことができます。しかし、弁護士と全く同じ法律事務ができる訳ではありません。


 この点、外弁法3条に詳細に定めがありますが、主なできない法律事務として、次のようなものがあります。


ア 国内の裁判所,検察庁その他の官公署における手続きについての代理及びその手続きについてこれらの機関に提出する文書の作成


イ 原資格国法以外の法の解釈又は適用についての鑑定その他の法的意見の表明(例えば,原資格国が韓国である外国法事務弁護士が,米国ニューヨーク州法の解釈について自ら単独で意見書を作成すること)


 つまり、裁判所に行って代理することは、例えニューヨーク州法や中国法の内容の争いであってもできないということです。また、認められた原・指定国の資格の範囲を超えたサービスもできません。


(2)できることの例


 じゃあ、何ができるようになるのでしょうか?


ア 原資格国法(及び指定法の承認を受けている場合は当該指定法)に関する法律事務の遂行(但し,上記に示すような禁止事項に抵触しない範囲)


イ 国際仲裁手続の代理(外弁法5条の3)。

 国際仲裁手続であれば,日本法が準拠法の場合であっても,日本国内において代理できます(現在は,かかる国際仲裁手続は,外国法事務弁護士のみならず,外国における外国弁護士であっても代理可能である旨が明文化されている。外弁法58条の2)。


ウ 日本の弁護士を雇用すること(但し,届出制。外弁法49条の3)。

 但し,直接雇用する場合は,雇用契約に基づき,その日本の弁護士に,自己の外国法事務弁護士としての業務の範囲を超えて雇用関係に基づく業務上の命令をすることはできない(外弁法49条1項)。


エ 日本の弁護士と共同して事業を行うこと(外国法共同事業。但し,届出制。外弁法2条15号,49条の3)。

 要するに,日本の弁護士と外国法事務弁護士が一緒にパートナーとなる事務所を設立することが認められている。この場合,自らは単独で直接受任することのできない日本の法律事務に関し日本の弁護士が生み出す収益を,日本の弁護士と分け合うことが可能。


 ウとエは、2003年の外弁法改正で完全に認められるようになりました。外国法事務弁護士は、自分では日本法の法律事務ができなくても、アソシエイトとして弁護士を雇用すれば、又は弁護士と一緒に事務所を作れば、日本法の法律事務についてもかなり自由に行うことができるようになっており、ウとエを解放したことで、比較法的に言えば、他国と比較してもかなり開放度の高い制度となっていると言えると思います。


4 GATSとの関係、TPPについて。


 これらの要件や義務の中には、日本の弁護士であれば要求されないものも少なくありません。WTO加盟国として、サービス分野においては、GATS("General Agreement on Trade in Services")の内国民待遇("National Treatment"。17条)や、市場アクセス("Market Access"。16条)等との関係で問題になり得るところかもしれません。


 しかしGATSでは、この内国民待遇や市場アクセスは、約束表("Schedule")に記載されない限りは、義務として履行する必要はない特定の約束("Specific Commitments")という扱いを受けています。


 そして、この約束を見ますと、「専門家サービス」(Professional Service)で、日本は、第1に、リーガルサービスは「弁護士」資格がある者によって提供されなければならないと約束していて、そこには国籍要件はないということが約束されている他、外国法事務弁護士についても一定の約束事項が記載されています(なお、2003年の外弁法改正がGATSの約束としては記載されていないので、2003年の改正については、GATSの約束を超えて任意に履行しているという扱いになるのでしょうか)。


 GATSに言及しましたが、実はいま話題のTPPのもととなっている原加盟4ヶ国(シンガポールブルネイ,チリ,ニュージーランドの4ヶ国)間のTPP("Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement")、これは2006年5月に発効したんですが、この経済連携協定(以下「P4」といいます。)の12章が、サービス貿易について言及していて、GATSの規制と類似の条項を置いているので、比較しながら読めば、TPPでGATSと比較してどのような影響が出るかが分かります。


 つまり、良く聞かれる「TPPに入れば、法曹はどう変わるの?」という質問に答えるには、現在の外弁規制、GATS、P4を比較しながら「予測」することがその答えになり得ます。「予測」というのは、TPP自体は交渉中で、その詳細な内容は公表されていないので、原条約であるP4くらいしか、公表されている資料がないためです。


 これがTPP問題に対する回答の基礎知識でした。
 TPPで何が変わり得ると「予測」するかについては、また改めて。